← Library‹ 怪奇四十面相 金色の骸骨

小林こばやし君くんは、少女しょうじょにだきつかれながら、すばやく頭あたまをはたらかせて考かんがえました。

そのときまでは、少女しょうじょのお化ばけというのは、四十よんじゅう面相めんそうのことかもしれないと、思おもっていたのですが、「三さんびき」だとすると、四十よんじゅう面相めんそうではありません。では、さっき、ここへ、しのびこんだ四十よんじゅう面相めんそうは、いったい、どこにいるのでしょう。

もしかすると、このかわいらしい少女しょうじょが、やっぱり四十よんじゅう面相めんそうのなかまで、小林こばやし君くんを、だまそうとしているのかもしれません。すると、四十よんじゅう面相めんそうも、庭にわの林はやしのなかのどこかに、すがたをかくして、ふたりのようすを、うかがっているのではないでしょうか。

そう考かんがえると、少女しょうじょがかわいい、あどけない顔かおをしているだけに、いっそう、きみが悪わるくなってきました。

「あぶない、あぶない。うっかり、ゆだんはできないぞ。四十よんじゅう面相めんそうのやつは、じつに思おもいもよらないことを考かんがえだす、魔術まじゅつ師しだからな。」

小林こばやし君くんは、じゅうぶん心こころをひきしめて、あらためて、少女しょうじょの顔かおを、しげしげとながめました。むこうの窓まどのひかりで、ボンヤリとしか見みえませんが、見みれば見みるほど、むじゃきなかわいい顔かおです。こんな七ななつかそこいらの、小ちいさな女おんなの子こが、悪人あくにんのまわしものだなんて、どうしても考かんがえられないことです。

「その地下ちか室しつって、どこなの? ふたりで、いっしょに、行いってみよう。」

小林こばやし君くんは、少女しょうじょをためすように、言いいました。

「こわくないの?」

少女しょうじょは小林こばやし君くんの顔かおを、びっくりしたように、見みあげるのです。

「こわいもんか。ぼくは、強つよいんだよ。お化ばけなんか、ひどいめに、あわせてやる。」

「ほんとう? 大おおきなお化ばけが、三さんびきもいるのよ。」

「三さんびきだろうが、五ごひきだろうが、へいきだよ。さあ、行いってみよう。」

小林こばやし君くんは、むろん、お化ばけなんか信しんじません。きっと、その地下ちか室しつには、なにかあやしいやつが、しのびこんでいるのに、ちがいないと考かんがえたのです。

小林こばやし君くんの墨すみをぬった、まっ黒くろな顔かおや、ボロボロの服ふくが、かえって、いかにも強つよそうに見みえたのでしょう。少女しょうじょは小林こばやし君くんといっしょになら、地下ちか室しつへ行いってもよいと、考かんがえたようです。ふたりは、手てをひきあって、洋館ようかんにちかづいていきました。

少女しょうじょのゆびさすドアをひらいて、中なかにはいり、少女しょうじょのみちびくままに、暗くらい廊下ろうかをグルグルまわって、地下ちか室しつの階段かいだんをおりました。

階段かいだんの上うえに、小ちいさな電灯でんとうがついているだけで、地下ちか室しつのせまい廊下ろうかは、まっ暗くらでしたが、少女しょうじょは自分じぶんの家いえですから、手てさぐりでも、わかるのです。

階段かいだんをおりるころから、少女しょうじょはまたブルブルふるえだしました。地下ちか室しつにいる化ばけものが、よっぽどこわいのにちがいありません。しかし、あいてにさとられては、たいへんですから、小林こばやし君くんは少女しょうじょの手てをしっかりにぎり、息いきをころして、ネコのように音おとをたてないで、歩あるいていくのです。

すこし行いくと、少女しょうじょはピッタリ立たちどまりました。すぐ目めの前まえに、たてにスーッと、ほそい、光ひかったすじが見みえます。それはドアの板いたのすきまから、部屋へやの中なかのひかりがもれているのでした。

少女しょうじょは小林こばやし君くんの手てをひっぱって、そのすきまから、のぞいてみよという、身みぶりをしました。小林こばやし君くんは用心ようじんぶかく腰こしをひくめて、そのすきまの、いちばんひろいところへ目めをあてましたが、ちょっと、のぞいたかと思おもうと、ギョッとしたように、目めをはなしました。

あまりへんなものが見みえたので、じぶんの頭あたまがどうかしたのではないかと、うたがったのです。

気きをしずめて、もう一いち度ど、のぞいてみました。やっぱりそうです。そこには、まったく思おもいもよらない、へんてこなものがいたのです。少女しょうじょが言いったとおり、それは三さんびきのお化ばけでした。

部屋へやのまんなかに、まるいテーブルがあって、その上うえに、ふるめかしい西洋せいようのしょくだいに、三さん本ほんのローソクが立たって、赤あかいほのおが、ゆれていました。テーブルをとりまいて三みつのイスがおかれ、そこに三さん人にんの怪物かいぶつが腰こしかけているのです。それは、三みつの骸骨がいこつが、手てまねや身みぶりをしながら、ひくい声こえでなにかしきりと話はなしあっているのでした。

いったい、骸骨がいこつが生いきた人間にんげんのように、動うごいたり、ものを言いったり、するなんて、そんなばかなことが、あるものでしょうか。小林こばやし君くんはいよいよ、自分じぶんの頭あたまを、うたがわないではいられませんでした。おそろしい夢ゆめを見みているのか、それとも気きでもちがったのかと、自分じぶんが、こわくなってきました。

こわいのを、がまんして、じっと見みていますと、もっとふしぎなことが、わかりました。その三みつの骸骨がいこつは、金色きんいろをしていたのです。骸骨がいこつというものは、白しろいのがあたりまえですが、ここにいるのは金色きんいろの骸骨がいこつなのです。身みうごきをするたびに、それがローソクの火ひにてらされて、純金じゅんきんのように、キラキラと光ひかるのです。

ああ、地下ちか室しつに、ひたいをあつめて、なにごとかささやきあう、三みつの黄金おうごんの骸骨がいこつ。これは、いったい、なにを意味いみするのでしょう。そこには、どんなおそろしい秘密ひみつが、かくされていたのでしょう。

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