← Library‹ 怪奇四十面相 三つの黄金どくろ

それから三十さんじゅう分ふんほどのち、地下ちか室しつでは、三さん人にんの骸骨がいこつが、テーブルをかこんで、秘密ひみつの話はなしをつづけていました。

「わしはどうも、読よみかたが、ちがっていたんじゃないかと思おもいますがね、ひとつみんなが、どくろをテーブルの上うえにだして、べつの読よみかたをしてみようじゃありませんか。」

金色きんいろの骸骨がいこつのひとりが、そう言いって、そばにまるめてある黒くろマントの中なかから、キラキラ光ひかる黄金おうごんのかたまりをとりだして、テーブルにのせました。

それは、実物じつぶつの半分はんぶんぐらいの大おおきさの、金製きんせいのどくろでした。どくろのかざりものというのは、なんだかへんですが、やっぱりかざりものとして、つくったとしか考かんがえられません。ものずきな美術びじゅつ家かが、きまぐれにこしらえたものでしょう。ほんものそっくりに、じつによくできているのです。

あとのふたりの骸骨がいこつもそれにならって、同おなじような黄金おうごんどくろをテーブルの上うえにだしました。ものずきな美術びじゅつ家かは、ひとつだけではたりないで、まったく同おなじ黄金おうごんどくろを、三みつもつくったのでしょうか。それとも、これには、もっと、ふかいわけがあるのでしょうか。

骸骨がいこつのひとりが、その黄金おうごんどくろを、さかさまにして、後頭こうとう部ぶの首くびにちかい部分ぶぶんを上うえにし、グッと目めを近ちかづけて、そこをみつめました。

その後ご頭部とうぶのすみに、ちょっと見みたのではわからないような、小ちいさな小ちいさな字じで、三さん行ぎょうのひらがなが、ほりつけてあるのです。

「ゆなどき、んがくの、でるろも。これじゃあ、いくら考かんがえてもわからない。それで、わしは、横よこに読よんでみたのですよ。すると、ゆんで、ながる、どくろ、きのも、となる。これでも、やっぱりわからないが、どくろという三さん字じには、意味いみがある。なんだか見みこみがあるように思おもうのです。あんたがたのふたつのどくろの字じも、そういうふうに横よこに読よんで、そして、三みつのどくろの字じをつなぎあわせたら、なにか意味いみができてくるのじゃないかと、気きがついたのですよ。ひとつならべてみてください。」

三みつの黄金おうごんどくろが、テーブルのまんなかに、後頭こうとう部ぶを上うえにして、あつめられました。

三さん人にんは上じょう半身はんしんをまげて、その上うえにおおいかぶさるようにして、黄金おうごんの表面ひょうめんのかすかなひらがなを読よむのでした。

三さん人にんはしばらくのあいだ、三みつのどくろを、いろいろにくみあわせて、読よみくらべていましたが、けっきょく、つぎのように、ならべるのが、いちばん意味いみがありそうだということになりました。

「ね、これで、いくらか、意味いみのわかるところがある。まず、いちばん右みぎがわから、読よんでみると、きのもきどくろじま、となるが、きのもきというのは、わからないけれども、どくろじまは髑髏島どくろじまの意味いみじゃないでしょうかね。」

ひとりが言いいますと、べつの骸骨がいこつが、うなずきながら、

「ウンそうだ、そうだ。右みぎから二に行ぎょうめは、どくろんをさぐれよ、となる。どくろにも意味いみがあるし、さぐれよは、さがしてみよというわけでしょうね。だが、そのあいだのんをというのがわからない。」

すると、いまひとりの骸骨がいこつが、三さん行ぎょうめを読よみました。

「ながるだのおくへと、これはむずかしい。ながるは流ながるという意味いみでしょうね。そのつぎのだのはわからないが、おくへとは、奥おくへと、奥おくのほうへと、という意味いみじゃないでしょうかね。」

「さいごの第だい四よん行ぎょうめにも、意味いみがありますよ。ゆんでとすすむべし。このゆんでとはわからないが、すすむべしは進すすむべしで、進すすみなさいというわけでしょう。」

「ウン、だんだん、わかってくるようですね。ひとつ、いま読よんだとおり、紙かみに書かいてみましょう。」

ひとりの骸骨がいこつが、それはたぶん、主人しゅじんの博士はかせなのですが、テーブルの上うえに紙かみをひろげて、鉛筆えんぴつで、つぎのように書かきしるしました。

きのもきどくろじま

どくろんをさぐれよ

ながるだのおくへと

ゆんでとすすむべし

三さん人にんは、このふしぎな文句もんくを、なんども、口くちの中なかでとなえながら、ながいあいだ考かんがえていましたが、やがて、ひとりが、ポンとひざをたたいて、口くちをひらきました。

「わかった、三みつでなくて、四よんつなんですよ。われわれは、いままで、この黄金おうごんどくろを、三みつしかないものと、思おもいこんでいた。しかし、この文句もんくがうまくつづかないのは、黄金おうごんどくろがもう一ひとつあるしょうこです。ごらんなさい。きのもき、どくろん、ながるだ、つづきぐあいがわるいのは、このもき、ろん、るだのところですよ。だから、もとき、ろとん、るとだのあいだに、三さん字じずつひらがながぬけているとしか考かんがえられない。つまり、われわれの知しらない黄金おうごんどくろが、もうひとつ、どこかにあるのですよ。」

「ウン、そうだ。そのほかに、考かんがえようがありませんね。」

「だが、その、もうひとつの黄金おうごんどくろが、どこにかくれているか、こいつをさがすのは、たいへんなしごとですよ。われわれ三さん人にんが、どくろクラブをつくって、こんな骸骨がいこつの着物きものをきて、ここに、あつまるようになるまででも、なみたいていの苦心くしんではなかったのですからね。わしはもう、ウンザリしましたよ。」

「いや、われわれの大だい目的もくてきを、たっするまでには、まだまだ、いろいろな、苦労くろうをしなければなりません。いまから、よわねを、はいちゃいけませんね……。では、これからは、三さん人にんが力ちからをあわせて、そのもうひとつの黄金おうごんどくろを、さがすのです。どんなことがあっても、さがしださなければなりません。なにしろ、何百なんびゃく億おく、何千なんぜん億おくともしれない、大だい宝庫ほうこを発見はっけんするためですからね。」

それから、三さん人にんは、しばらくのあいだ、相談そうだんをつづけましたが、夜よるもふけたので、またつぎの金曜きんよう日ひに、あつまることとして、そとから来きたふたりの客きゃくは、黒くろマントで身みをつつみ、博士はかせ邸ていを立たちさることになりました。

博士はかせはふたりを、玄関げんかんまで見みおくっておいて、ふたたび地下ちか室しつにひきかえし、テーブルのまえに腰こしかけて、そこにおいたままになっていた、ふしぎな、かな文字もじをしるした紙かみを、じっとみつめながら、しきりと考かんがえにふけるのでした。

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