← Library‹ 宇宙怪人 ふしぎな黒んぼう

このさわぎがあった二ふた日かほどのち、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょへ、虎井とらい工学こうがく博士はかせから、電話でんわが、かかってきました。

虎とら井い博士はかせというのは、有名ゆうめいな民間みんかんの老ろう科学かがく者しゃで、発明はつめいの天才てんさいと言いわれている人ひとでした。まるでエジソンのように、あらゆる方面ほうめんにわたって、人ひとをおどろかすおそろしい発明はつめいをして、何百なんびゃくという特許とっきょを持もっているのです。

その電話でんわがかかってきたとき、明智あけち探偵たんていは、宇宙うちゅう怪人かいじんのことで、総理そうり大臣だいじんに呼よばれて、出でかけていましたので、かわって小林こばやし少年しょうねんが電話でんわ口くちに出でました。

「ウン、おるすかね。大だい至急しきゅうの用件ようけんじゃが、あんた、だれだね、小林こばやし君くんではないのかね。」

虎とら井い博士はかせは、小林こばやし君くんの名なを知しっていました。この少年しょうねん助手じょしゅは、それほど有名ゆうめいなのでした。

「ぼく小林こばやしです。どういうご用件ようけんでしょうか。」

「宇宙うちゅう怪人かいじんの件けんじゃ。どうやら、こんどは、わしがあぶなくなった。警察けいさつには、保護ほごをたのんでおるが、それだけでは安心あんしんがならん。明智あけちさんに来きてほしいのじゃ。だが、おるすなら、あんたでもいい。子こどもながら、先生せんせいにおとらぬ名めい探偵たんていだ。明智あけちさんにも来きてほしいが、あんたにも、来きてもらいたいのだ。どうじゃね。今いますぐ、わしのうちへ来きてくださらんかな。」

小林こばやし君くんは、虎とら井い博士はかせにあったことはないのですが、その屋敷やしきは、よく知しっていました。隅田すみだ川かわの川口かわぐちにちかい、小ちいさな森もりにかこまれた、ふしぎな洋館ようかんでした。

「ハイ、それでは、先生せんせいに電話でんわで、相談そうだんしてから、まいります。」

「そうか。わしのうちは、ごぞんじだろうな。まってますぞ。」

小林こばやし君くんは、すぐに首相しゅしょう官邸かんていに電話でんわをかけて、急用きゅうようがあるからと、明智あけち先生せんせいを電話でんわ口くちに呼よびだしてもらい、虎とら井い博士はかせのことを話はなしますと、「よろしい。行いきたまえ。ぼくもこちらの用件ようけんがすみしだい、かけつける。じゅうぶん、注意ちゅういしてね。」という返事へんじでした。

そこで、小林こばやしさんは、明智あけち先生せんせいのおくさんにも、そのことを話はなしたうえ、自動じどう車しゃにのって、虎とら井い博士はかせ邸ていにいそぎました。

隅田すみだ川かわの川口かわぐちちかくは、工事こうじの多おおいところですが、そのあいだに、まるで、切きりはなされた別べつ世界せかいのように、こんもりした森もりがあって、その中なかに、むかしの西洋せいようのお城しろのまるい塔とうのような感かんじの、奇妙きみょうな建物たてものがたっていました。

その建物たてものの入いり口ぐちに近ちかづいて、大おおきなドアをノックしますと、中なかからドアがひらいて、思おもいもよらずそこに、ひとりの黒くろんぼうが立たっていました。アフリカ土人どじんのように、まっくろな顔かおの大男おおおとこです。

ドアの中なかは、ひろい板いたの間まになっていて、まっかなジュウタンが、しきつめてあり、おくのほうに、まがりくねった階段かいだんの、りっぱな手てすりが、見みえていました。

黒くろんぼうは、はでなしまの背広せびろをきて、まるでサーカスの道化どうけ師しのようなかっこうで、そこに、つったっているばかりです。

「虎とら井い先生せんせいから電話でんわがあったので、うかがいました。小林こばやしというものです。」

小林こばやし君くんが言いいますと、大男おおおとこの黒くろんぼうは、じっと宙ちゅうを見みつめたまま、小林こばやし君くんの顔かおを、見みむきもしないで、両手りょうてをぎごちなく、あげたり、さげたりしながら、へんなガラガラ声こえで答こたえました。

「ドウゾ、コチラヘ。」

そして、クルッと、むこうをむくと、コックリコックリ歩あるきだすのでした。なんだかへんです。これは、生いきた人間にんげんでなくて、機械きかいのような感かんじです。

そのとき、小林こばやし君くんは、ふと、思おもいだしました。虎とら井い博士はかせは、ロボットを発明はつめいして、玄関げんかん番ばんにつかっているといううわさをきいたことがあるのです。そう思おもって、見みると、たしかにロボットです。顔かおは、黒くろんぼうの人形にんぎょうです。客きゃくの顔かおも見みないで、そっぽをむいて、ものを言いったのも、人形にんぎょうなれば、むりはありません。

小林こばやし君くんは、人形にんぎょうにむかって、まじめくさって、あいさつしたのかとおもうと、おかしくなってきました。それにしても、虎とら井い博士はかせは、なんというかわりものでしょう。玄関げんかんへはいっただけで、こんなにびっくりさせられるのですから、まだまだ、どんなふしぎなしかけが、まちかまえていないともかぎりません。小林こばやし君くんは、少々しょうしょうきみが悪わるくなってきました。

黒くろんぼうは、まっすぐむこうをむいたまま、階段かいだんの下したを通とおりすぎて、廊下ろうかに出でると、そこにひらいているドアのまえに立たちどまって、クルッとこちらをむき、また両手りょうてをあげさげして、

「ココデ、オマチクダサイ。」と言いいました。

「ありがとう。きみ、人形にんぎょうなんだね。よくできているね。」

小林こばやし君くんは、そんなことを言いいながら、指ゆびで、黒くろんぼうのほおを、はじいてみました。すると、あんのじょう、コツコツと、かたい音おとがするのでした。

黒くろんぼうは、ニッコリともしないで、つっ立たっていましたが、しばらくすると、「これでわたしの用事ようじはすんだ。」といわぬばかりに、またクルッとむきをかえて、コットン、コットン、どこかへ、立たちさってしまいました。

あとにのこされた小林こばやし君くんは、部屋へやの中なかにはいって、あたりを見みまわしました。応接おうせつ間かんでしょう、りっぱなイスやテーブルのそろった、広ひろい洋室ようしつです。

一方いっぽうのかべに、一いちメートル四方しほうもある大おおきな鏡かがみが、はめこみになって、まわりに、うつくしいがくぶちがついています。小林こばやし君くんは、その鏡かがみのまえに立たって、自分じぶんのすがたをうつしてみました。

そうして、まっていても、博士はかせはなかなか出でてきません。あたりはシーンとしずまりかえって、なんだか、古ふるい洋館ようかんのあきやにいるような感かんじです。小林こばやし君くんは、ますますきみが悪わるくなってきました。

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