← Library‹ 宇宙怪人 小型潜航艇

宇宙うちゅう怪人かいじんは、ガラスに顔かおをくっつけて、しばらく、部屋へやの中なかをのぞいていましたが、中なかの三さん人にんは、すがたをかくしているので、だれもいないと思おもったのか、そのままスーッと、むこうのほうへ、遠とおざかっていきました。海うみの底そこは暗くらいので、コンクリートの部屋へやのそとがわにも、電灯でんとうがついているのですが、そのひかりは、遠とおくまでとどかないので、怪人かいじんのすがたは、むこうのやみの中なかに、たちまち、見みえなくなってしまいました。

「とうとうやってきたね。わしは、あいつが、ここへやってくるだろうと、じつは、まちかまえていたんだよ。小林こばやし君くん、きみに、おもしろいものを見みせてあげようか。」

虎とら井い博士はかせは、助手じょしゅの美び少年しょうねんと顔かおをみあわせて、ニヤリと笑わらいました。

「おもしろいものって、なんですか。」

「海うみの底そこのとり物ものだよ。みんなで、宇宙うちゅう怪人かいじんを追おっかけるのさ。」

「海うみの中なかをですか。」

小林こばやし君くんはびっくりして、思おもわず、高たかい声こえを出だしました。人間にんげんは、両生りょうせい動物どうぶつでないから、海うみの底そこに長ながくは、いられないと思おもったからです。

「ウン、わしは、特殊とくしゅの潜航せんこう艇ていを発明はつめいして、持もっているのだ。三さん人にんが、それにのりこんで、あいつを、おっかけるのだよ。」

「潜航せんこう艇ていですって?」

小林こばやし君くんは、信しんじられないような、顔かおをしました。

「乗のってみれば、わかるよ。なかなか、よくできているつもりだ。グズグズしていると、宇宙うちゅう怪人かいじんが逃にげてしまう。サア、ふたりとも、わしのあとに、ついてきたまえ。」

博士はかせが、一方いっぽうのかべに近ちかづいて、そこにある小ちいさなボタンを押おしますと、大だい金庫きんこの扉とびらのような、丸まるいかくし戸とが、音おともなくひらきました。さっき、博士はかせがとびだしてきた、あのかくし戸とです。

博士はかせは、そのまっくらな丸まるい穴あなの中なかへ、はうようにして、はいっていきました。小林こばやし君くんは、なんだかきみが悪わるいので、ためらっていますと、助手じょしゅの少年しょうねんが、

「だいじょうぶだよ。この穴あなのそとに、潜航せんこう艇ていがとまっているんだよ。」

と、うしろから、押おすようにしました。しかたがないので、小林こばやし少年しょうねんも、穴あなの中なかに、もぐりこみましたが、すると、たちまち、なにかで、ゴツンと頭あたまをうちました。

「これが潜航せんこう艇ていの中なかだよ。いま電気でんきをつけるからね。」

博士はかせの声こえがして、パッと、あたりが、明あかるくなりました。立たって歩あるけないような、せまい、トンネルのような部屋へやでした。おまけに、身みうごきもできないほど、いろいろな機械きかいが、両りょうがわにとりつけてあります。

「立たっては、頭あたまをうつからね。ここにすわっているんだよ。」

ふたりの少年しょうねんを、すわらせておいて、博士はかせは、まずコンクリートの部屋へやの、かくし戸とをしめてから、潜航せんこう艇ていの横よこっぱらにひらいている、丸まるい穴あなの鉄てつのふたを、ピッタリ、しめて、大おおきなネジをまわし、水みずがはいらないように、しめつけました。それから、一方いっぽうの機械きかいのところへいって、なにかやっていたかと思おもうと、とつぜん、エンジンの音おとがひびきだし、フワッと、ブランコにでも乗のっているような、気持きもちになりました。潜航せんこう艇ていがうごきだしたのです。

エンジンのひびきは、だんだん、たかくなってきました。速力そくりょくがくわわっているのです。

「ここへきてごらん。ここが運転うんてん席せきで、運転うんてん士しには、目めの前まえの海うみのけしきが、よく見みえるようになっているんだよ。」

博士はかせによばれて、そのほうへ、いざりよってみますと、博士はかせの前まえに、大おおきな丸まるいレンズがあって、それに、潜航せんこう艇ていの前まえの、水みずの底そこのありさまが、小ちいさくうつっているのでした。

「この潜航せんこう艇ていには、二ふたつの大おおきなヘッド・ライトがついていて、前まえのほうをてらしている。自動じどう車しゃのヘッド・ライトの、何なん倍ばいも強つよいひかりだよ。そのひかりで、前まえのけしきが見みえるのだ。だが、これは写真しゃしんのようにレンズにうつっているのだから、小ちいさくしか見みえないが、もっとよく見みえる展望てんぼう台だいがある。ホラ、あすこだよ。あの台だいの上うえに立たって、天井てんじょうから、頭あたまを出だしてごらん、あたりがよく見みえるから。」

台だいといっても、ひくい箱はこのようなものでした。小林こばやし君くんは、言いわれるままに、その箱はこの上うえに立たって、こわごわ、天井てんじょうの丸まるい大おおきな穴あなの中なかへ、頭あたまを出だしてみました。

それは、直径ちょっけい一いちメートルほどの、大おおきな穴あなで、その穴あなの上うえには、丸屋根まるやねのように、厚あついガラスのふたがあることがわかりました。ここからは、上うえと四方しほうが、自由じゆうに、ながめられるのでした。

しかし、ヘッド・ライトのてらしている前まえのほうだけは、明あかるいけれども、横よこや、うしろは、ひどくうすぐらくて、ハッキリは見みえません。

そこから見みていると、潜航せんこう艇ていが全ぜん速力そくりょくですすんでいることが、よくわかります。水みずが、丸まるいガラスの上うえを、サーッ、サーッと、うしろへ、ながれていくのです。ときどき、さかなが、銀色ぎんいろのはらを見みせてはねとばされるように、うしろへとんでいくのも見みえます。

「きみ、すばらしいだろう。これ、ぼくの先生せんせいが発明はつめいしたんだよ。」

いつのまにか、美び少年しょうねんが、台だいにのって、小林こばやし君くんと顔かおをならべていました。

「ウン、ぼく、潜航せんこう艇ていに乗のるなんて、生うまれてから、はじめてだよ。虎とら井い博士はかせはえらいねえ。」

小林こばやし君くんは、しんから感心かんしんしたように、つぶやくのでした。

サーチライトのようなヘッド・ライトにてらされた、前まえのほうのけしきはすてきでした。列れつをつくっておよいでくる、大おおきなさかな、小ちいさなさかな、それが潜航せんこう艇ていのひびきにおどろいて、右みぎに、左ひだりに、逃にげまどうありさまは、メダカのむらがっている池いけの中なかを、大おおきなコイが、かきわけていくような感かんじです。

「アッ、わかった。ぼく、やっとわかったよ。」

小林こばやし少年しょうねんが、とんきょうな声こえをだしました。

「ああ、びっくりした。なにがわかったの?」

「さっき、ガラス窓まどから見みた、クジラの子こどものような、大おおきなさかなの正体しょうたいが、わかったよ。あのお化ばけさかなは、この潜航せんこう艇ていだったのさ。そうだろう。二ふたつのヘッド・ライトが、光ひかった目めに見みえたんだ。それから、せなかの、すきとおったコブは、この展望てんぼうガラスだったのさ。だから、ガラスのコブの中なかに人間にんげんの顔かおが見みえた。あれは、虎とら井い先生せんせいの顔かおにきまっている。だって、先生せんせいはあのとき、まだ部屋へやの中なかに来きていなかったものね。あとで潜航せんこう艇ていをおりて、あの丸まるい、かくし戸とから、部屋へやにはいってきたんだよ。」

小林こばやし君くんは、息いきもつかずに言いって、少年しょうねん助手じょしゅのうつくしい顔かおを見みつめました。

「そのとおりだよ。きみにしては、気きづくのがおそかったね。」

少年しょうねんは、あたりまえだと言いわぬばかりに、ニヤニヤ笑わらっています。

そのとき、博士はかせが、ふたりを呼よぶ声こえが、聞きこえました。

「おい、きみたち、いたぞ、いたぞ。宇宙うちゅう怪人かいじんが、みつかったぞ。」

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%