← Library‹ 鉄塔の怪人 魔法のつえ

お話はなしは、すこしあとにもどりまして、時間じかんでいえば、にせ明智あけち探偵たんていが高橋たかはしさんのおうちへ、たずねて来くるよりも、まえのことです。

そのころ、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの地下ちか室しつでは、にせ探偵たんていのために、そこへとじこめられた小林こばやし少年しょうねんと高橋たかはしさんの書生しょせいの広田ひろたとが、地下ちか室しつをぬけだす相談そうだんをしていました。

まっ暗くらな地下ちか室しつの床ゆかが、まるくポッと光ひかっています。小林こばやし少年しょうねんの懐中かいちゅう電灯でんとうを、広田ひろたが手てにもって、床ゆかにならんでいる探偵たんてい七ななつ道具どうぐを、てらしているのです。

小林こばやし少年しょうねんは、その七ななつ道具どうぐの中なかから、銀色ぎんいろに光ひかった三十さんじゅうセンチほどの長ながさの筒つつを、とりあげて、説明せつめいするのでした。

「これは魔法まほうのつえですよ。たった三十さんじゅうセンチの筒つつが、たちまち、三さんメートルにのびるのですよ。」

「へー、ほんとうかい?」

広田ひろたはびっくりしています。

「ほら、ごらんなさい。のびるでしょう。手品てじな師しのもっているつえと同おなじしかけです。」

銀ぎんの筒つつを、サッとふると、倍ばいの長ながさになり、もう一いち度ど、ふると、三さん倍ばいの長ながさになり、四よん倍ばい、五ご倍ばい、六ろく倍ばいと、いくらでものびていくのです。それは写真しゃしん機きをのせる三脚さんきゃくと同おなじしかけで、銀色ぎんいろの筒つつの中なかに、すこしほそい第だい二にの筒つつがあり、その中なかにまた、もっとほそい第だい三さんの筒つつがあるというように、十じゅう本ほんの筒つつがかさなりあっていて、それを、つぎつぎと、ひっぱりだせば、おしまいには、十じゅう倍ばいの長ながさにのびるしかけなのです。

「ね、わかったでしょう。この長ながい棒ぼうがあれば、地下ちか室しつをぬけだすことなんか、わけもありませんよ。」

小林こばやし少年しょうねんは、たちあがって、その銀色ぎんいろの長ながい棒ぼうをてんじょうの落おとしぶたのほうへ、のばしました。

「懐中かいちゅう電灯でんとうで、てんじょうをてらしてください。」

広田ひろたがいわれたとおり、てんじょうをてらします。そのまるい光ひかりのなかに、落おとし穴あなのふたを、とめている金具かなぐが見みえます。小林こばやし君くんは、せのびをして、長ながい棒ぼうのさきで、その金具かなぐを、よこから、たたくようにして、とうとう、はずしてしまいました。すると、バタンと音おとがして落おとし穴あなのふたが、下したにさがり、そこに、四角しかくな口くちがひらきました。

小林こばやし君くんは、七ななつ道具どうぐの中なかの、絹糸けんしの縄なわばしごを、てばやく、ほぐして、かぎになった金具かなぐのついている、一方いっぽうのはしを、てんじょうの四角しかくな穴あなに、なげ上あげ、うまくそこへ、ひっかけました。金具かなぐは、なにかにひっかかったら、けっして、はずれないように、できているのです。

縄なわばしごといっても、はしごのかたちをしているわけではありません。じょうぶな黒くろい絹糸きぬいとを、何十なんじゅう本ほんもないあわせて、四十よんじゅうセンチぐらいのかんかくで、大おおきなむすび玉たまが、いくつもついているわけなのです。

「ぼくらを、ここに落おとしたわるものは、もうでかけたにきまっています。上うえには、だれもいません。ぼくが、さきにのぼりますから、広田ひろたさんも、すぐあとから、きてください。」

小林こばやし君くんは、なれたもので、まるでサルのように、ほそい縄なわばしごを、スルスルとのぼっていきました。広田ひろたは、小林こばやし君くんのように、うまくはのぼれませんが、それでも、やっと上うえの部屋へやに、たどりつきました。

「あいつは、どこへでかけたんだろう?」

「きまってますよ。明智あけち先生せんせいになりすまして、高橋たかはしさんのうちへのりこんだのです。そして、なんとかうまくごまかして、賢二けんじ君くんをつれだすつもりです。さあ、いきましょう。グズグズしていると、賢二けんじ君くんが、どんなめにあうかもしれませんよ。」

小林こばやし君くんは、そういいながら、もう、おもての方ほうへ、かけだしていました。

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