← Library‹ 灰色の巨人 怪物のゆくえ

ちょうどそのとき、園井そのいさんの広ひろいおうちのへいの外そとでは、またべつの、おそろしいできごとがおこっていました。

小林こばやし団長だんちょうのひきいる八はち人にんの少年しょうねん探偵たんてい団だんは、四よん人にんずつ、ふたくみにわかれて、園井そのい家かのへいのまわりを巡回じゅんかいしていました。

もう夜よるの八はち時じごろでした。空そらがくもって星ほしも見みえない、まっ暗くらなばんでした。そのへんは、さびしいやしきまちで、高こういへいばかりがつづいています。人ひとどおりも、まったくありません。町まちのところどころに立たっている街灯がいとうの光ひかりが、あたりをぼんやりと、てらしているばかりです。

小林こばやし君くんがさきにたって、そのあとから、園井そのい少年しょうねんと、ほかのふたりがつづいています。ほかのふたりも中学ちゅうがくの一いち年ねん生せいです。

「おい、とまれ! なにかいる。あれをごらん。」

小林こばやし君くんが、むこうのコンクリートべいの上うえを、ゆびさしました。それは園井そのい君くんのおうちのへいです。へいの上うえから、大おおきな木きの枝えだが、ニューッと、つきだしています。その枝えだが、ざわざわと動うごいているのです。

風かぜにゆれているのではありません。なにかが、その枝えだにとまっているのです。遠とおくの街灯がいとうの光ひかりで、かすかにそれが見みわけられます。

サルのような動物どうぶつです。いや、サルではありません。人間にんげんの子こどもです。こんな暗くらいばんに、子こどもが木きのぼりをしているのでしょうか。

大おおきな枝えだが、ピーンとはねました。子こどもがとびおりたのです。おやっ、子こどもにしては、なんて大おおきな頭あたまでしょう。頭あたまでっかちの福助ふくすけみたいなやつです。黒くろい四角しかくなふろしきづつみのようなものを、首くびにくくりつけています。そして、その小ちいさなやつは、いきなり、むこうのほうへ、チョコチョコと走はしりだしました。

「あっ、一いち寸すん法師ほうしだっ。」

小林こばやし団長だんちょうと園井そのい君くんとは、すぐそれに気きがつきました。

首くびにさげている黒くろいふろしきづつみは、いったいなんでしょう? ひょっとしたら、あの中なかに、にじの宝冠ほうかんが、つつんであるのではないでしょうか。一いち寸すん法師ほうしが、それをぬすみだしたのでは、ないでしょうか。

「おい、あいつを、追おっかけるんだ。あいてに、きづかれぬように。」

小林こばやし団長だんちょうが、めいれいをくだしました。

やみ夜よのついせきです。にげるのは、頭あたまでっかちの一いち寸すん法師ほうし。ちびのくせに、なんという早はやさでしょう。チョコチョコ、チョコチョコ、みじかい足あしが、まるで、機械きかいのように動うごくのです。

探偵たんてい団だんの少年しょうねんたちは、みんなのっぽですから、足あしの長ながさは一いち寸すん法師ほうしのばいもあります。それでいて、なかなか追おいつけないのです。四よん人にんの少年しょうねんは、いきをきらせて走はしりつづけました。

一いち寸すん法師ほうしは、にぎやかな通とおりをさけて、さびしいほうへ、さびしいほうへと走はしっていきます。おとなの人ひとが通とおったら呼よびかけて、つかまえてもらおうと思おもうのですが、あいにく、だれも通とおりかかりません。

まっ暗くらな大おおきな森もりがありました。神社じんじゃの森もりです。一いち寸すん法師ほうしはその中なかへ、逃にげこみました。

さあ、たいへんです。神社じんじゃの中なかはひろびろしていて、そこに大おおきな木きが、いっぱい茂しげっています。どこにでも、かくれるところがあります。

少年しょうねんたちは、その広ひろい境内けいだいを、あちこちと、さがしまわりました。しかし、一いち寸すん法師ほうしは、どこにもいないのです。あいつは、木きのぼりが、うまいようですから、ひょっとしたら、大おおきな木きにのぼって、かくれているのかもしれません。しかし、何十なんじゅう本ほんとある木きを、一いち本ほんずつのぼって、さがすことなど、とてもできません。もうあきらめるほかはないのでしょう。

「だが、もしかしたら、境内けいだいを通とおりぬけて、神社じんじゃのうらのほうへ逃にげたかもしれない。そっちをさがしてみよう。」

小林こばやし団長だんちょうは、そういって、さきにたって、うらの道みちへ出でていきました。

神社じんじゃのうらは、広ひろい原はらっぱでした。むこうに、大おおきなテントが、はってあります。サーカスのテントです。

四よん人にんはそのほうへ行いってみました。テントの正面しょうめんには、明あかるく電灯でんとうがついて、二にとうのゾウと、たくさんのウマがつないであります。

入いり口ぐちのだいの上うえに、赤あかいしまの服ふくをきた人ひとがすわって、ばんをしていました。

「おじさん。いま、ここへ、一いち寸すん法師ほうしが、こなかった?」

小林こばやし君くんがたずねました。

「なんだって? 一寸ちょっと法師ほうしだって?」

赤あかい服ふくの男おとこが、びっくりしたように、少年しょうねんたちを見みおろしました。

「こびとだよ。頭あたまがでっかくて、子こどもみたいに小ちいさいやつだよ。神社じんじゃのほうから、かけだしてこなかった?」

「ふうん、このへんに、そんなやつがいるのかい。見みなかったよ。もうこんやは、おしまいだから、おもてに立たっているお客きゃくもなかったので、見みのがすはずはない。そんなやつ、ここへはこなかったよ。」

その男おとこは、高たかいだいの上うえにすわっているのですから、もし一いち寸すん法師ほうしが通とおれば、目めにつかぬはずはないのです。それでは、やっぱり、まだ神社じんじゃの境内けいだいに、かくれているのでしょうか。

どうしようかと、まよっているうちに、ちょうどサーカスがおわりになって、入口いりぐちから、見物けんぶつの人ひとたちが、どやどやと出でてきました。

四よん人にんの少年しょうねんは、そこに、つったって、おおぜいの人ひとたちが、通とおりすぎるのを見みていました。もしや、その見物けんぶつ人にんの中なかに、一いち寸すん法師ほうしがいるのではないかと、目めをさらのようにしていましたが、子こどもはいても一いち寸すん法師ほうしはいませんでした。

園井そのい少年しょうねんは、まだ、あきらめきれないで、入口いりぐちにちかよって、見物けんぶつ人にんの出でていったあとの、テントの中なかをのぞいていますと、だいの上うえの男おとこが、大おおきな声こえでどなりつけました。

「なにを、のぞいているんだ。もう、見物けんぶつ人にんは、すっかり出でてしまったよ。そんな一いち寸すん法師ほうしなんか、こんなとこに、いるもんか。さあ、かえった、かえった。」

しかたがないので、四よん人にんの少年しょうねんは、そこをひきあげることにしました。そして、もう一いち度ど、神社じんじゃの中なかをさがしましたが、やっぱり、なにも見みつけることはできませんでした。

「あっ、しまった。」

小林こばやし団長だんちょうが、びっくりするような声こえを、たてました。

「どうしたの? 団長だんちょう」

ひとりの少年しょうねんが、ふりむいて、たずねました。

「ぼく、すっかり、わすれていた。サーカスには、よく一いち寸すん法師ほうしの道化者どうけものがいるね。あのサーカスにも、一いち寸すん法師ほうしがいるんじゃないかしら。だからさ、ぼくらが、おっかけたやつは、あのサーカスの団員だんいんじゃないだろうか。」

小林こばやし君くんは、そういって、考かんがえこんでしまいました。

一いち寸すん法師ほうしは、はたして、このサーカスのなかに、かくれていたのでしょうか。もしそうだとすれば、怪盗かいとう「灰色はいいろの巨人きょじん」と、このサーカスとは、どんなつながりがあるのでしょう。

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