← Library‹ 灰色の巨人 おばけ玉

そこで、小林こばやし団長だんちょうは二十にじゅう人にんの団員だんいんを十じゅう人にんずつふたくみにわけ、ひとくみの十じゅう人にんには、八幡やわた神社じんじゃの森もりの中なかを見みはらせることにしました。宝冠ほうかんの少女しょうじょが、森もりのどこかにかくれていて、こっそり逃にげだすといけないからです。のこる十じゅう人にんを、また五ご人にんずつ、ふたくみにわけました。そして、ひとくみの五ご人にんには、サーカスの大だいテントの前まえに、いろいろな動物どうぶつがならべてある中なかの、クマのおりの見みはりを命めいじました。その鉄棒てつぼうのはまったおりの中なかには、曲芸きょくげいをする大おおきなクマがはいっているのです。なぜ、クマのおりを見みはらせたか、そのわけは、やがてわかります。

小林こばやし団長だんちょうと園井そのい少年しょうねんは、さいごの五ご人にんのひとくみの中なかにのこりました。そして、大だいテントの曲芸きょくげい場じょうから、がくやへ出入でいりするカーテンのところへ集あつまりました。

小林こばやし君くんはさきに立たって、大おおきなカーテンをまくり、がくやの通路つうろへはいっていきました。通路つうろの両りょうがわには、曲芸きょくげいに使つかういろいろな道具どうぐがおいてあります。

その中なかに、「玉たまのり」の大おおきな玉たまが五いつつころがっていました。土つちでできた重おもい玉たまで、白しろと赤あかのだんだらぞめになっています。その上うえに曲芸きょくげい師しの少女しょうじょがのって、足あしでクルクルまわしながら歩あるきまわる、あの玉たまです。

「おや、ひとつだけ、でっかい玉たまがあるね。巨人きょじんの玉たまだね。」

ひとりの少年しょうねんが、五いつつの玉たまの中なかの、ひとつをゆびさしていいました。それだけが、直径ちょっけい八十はちじゅうセンチもある、大おおきな玉たまなのです。

「これは、きっと、女おんなの子こじゃなくて、おとながのるんだよ。あの大男おおおとこの道化どうけ師しが、のるのかもしれないね。」

べつの少年しょうねんがいいました。みんなが「灰色はいいろの巨人きょじん」のことを、考かんがえているものですから、「巨人きょじん」とか「大男おおおとこ」とかいうことばが、つい口くちにでるのです。

小林こばやし団長だんちょうは、そのとき、くちびるにゆびをあてて、みんなにだまるように、あいずをしました。そして、その大おおきな玉たまのそばへ近ちかよると、両手りょうてで玉たまを動うごかしながら、なにかしらべようとしました。

すると、ふしぎなことがおこったのです。小林こばやし君くんが、ちょっと動うごかした玉たまが、そのまま止とまらないでゴロゴロころがりはじめました。まるで、いきもののように、ひとりで、むこうのほうへ、ころがっていくのです。

少年しょうねんたちは、それを見みると、びっくりして、立たちすくんでしまいました。

そこは、べつに、坂さかになっているわけではありません。ひとりでころがるどうりがないのです。しかも、玉たまのころがる速度そくどが、だんだん早はやくなっていくではありませんか。

おばけ玉たまです。

少年しょうねんたちは、「ワーッ。」といって、逃にげだしそうになりました。

しかし、小林こばやし団長だんちょうだけは逃にげるどころか、そのおばけ玉たまを、追おっかけて走はしりだしました。

「おい、みんな、追おっかけるんだ。あの玉たまを、追おっかけるんだ。」

団長だんちょうの命令めいれいとあっては、逃にげるわけにもいきません。少年しょうねんたちは、団長だんちょうのあとについて、おばけ玉たまのあとを追おいました。

玉たまは、カーテンの外そとの、曲芸きょくげい場じょうの砂場すなばへ出でて、そのまん中なかにある、大おおきなまるい板いたばりのぶたいへ、ころがっていきました。この板いたばりの上うえで、いつも「玉たまのり」が、えんじられるのです。

白しろと赤あかのだんだらぞめの大おおきな土つちの玉たまは、まるで、目めに見みえぬ人間にんげんがその上うえにのってでもいるように、右みぎに左ひだりに、ゴロゴロ、ゴロゴロ、板いたばりの上うえをころげまわりました。

少年しょうねんたちは、このふしぎなおにごっこに、だんだん元気げんきづいて、いまは、「ワーッ。ワーッ。」と、ときの声こえをあげながら、おばけ玉たまを追おっかけまわすのです。

ほんとうに、おにごっこでした。玉たまは、逃にげよう、逃にげようとする。少年しょうねんたちは、逃にがすまいと、さきまわりをして、とおせんぼうをする。そして、とうとう、おばけ玉たまは、少年しょうねんたちに、四方しほうから取とりかこまれ、おさえつけられて、もう動うごけなくなってしまいました。

すると、そのとき、じつに、とほうもないことが、おこったのです。少年しょうねんたちは、「ワーッ。」とさけんで、玉たまのそばから、とびのきました。

ごらんなさい! 土つちの玉たまが、まっぷたつに、われたのです。そして、モモの中なかから桃太郎ももたろうがとびだすように、その玉たまの中なかから、へんなやつがとびだしてきたのです。

でっかい頭あたまに赤白あかしろの運動うんどう帽ぼうをかぶり、赤あかいジャンパーに、はでなしまズボン、顔かおはおとなで、からだは子こどもみたいなやつです。

「あっ、一いち寸すん法師ほうしだっ。」

それは、宝冠ほうかんをぬすみ出だした一いち寸すん法師ほうしでした。土つちの玉たまの中なかが、くりぬいてあって、そこが一寸ちょっと法師ほうしのかくればになっていたのです。玉たまが、ひとりでころがったわけも、これでわかりました。小林こばやし団長だんちょうが、ポケットから、よびこの笛ふえを出だして、ピリピリリッ……と、ふきならしました。

すると、ライトのむこうの方ほうから、明智あけち探偵たんていと、中村なかむら警部けいぶと、数すう名めいの警官けいかんが、かけつけてきました。そして、一いち寸すん法師ほうしは、なんなく、つかまってしまったのです。

「おてがら! おてがら! さすがは少年しょうねん探偵たんてい団だんだね。よく一いち寸すん法師ほうしを、さがしてくれた。」

中村なかむら警部けいぶが、ニコニコして、少年しょうねんたちのてがらをほめました。

「これで、ひとりはつかまったが、あとにまだ、ふたりいる。小林こばやし君くん、しっかりやるんだよ。」

明智あけち探偵たんていが、小林こばやし団長だんちょうのかたをたたいて、はげますのでした。明智あけちは、じぶんがやれば、なんでもないのですが、こういうときに、小林こばやし君くんや少年しょうねん団員だんいんたちに、じゅうぶん、てがらをたてさせてやろうと考かんがえていたのです。

そのとき、ひとりの警官けいかんが走はしってきて、中村なかむら警部けいぶに、ほうこくしました。

「あちらのオートバイ曲芸きょくげいのおけの中なかに、クマがおちこんでいます。くさりをきって、逃にげたらしいのです。」

それをきくと、「よしっ。」といって、明智あけち探偵たんていは、そのほうへ、かけだしました。小林こばやし君くんや少年しょうねん団員だんいんたちも、そのあとにつづきます。中村なかむら警部けいぶと数すう名めいの警官けいかんは、一いち寸すん法師ほうしをとりかこんで、もとの場所ばしょに、のこっていました。

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