← Library‹ 海底の魔術師 だんだら怪人

大洋たいよう丸まるの沈しずんでいる海底かいていには、魚形ぎょけい潜航せんこう艇ていがゆうゆうと泳およぎまわっていました。その背中せなかには、やっぱり、鉄てつの人魚にんぎょがうずくまっています。この怪物かいぶつは、潜航せんこう艇ていの上部じょうぶのガラス窓まどから、中なかの手下てしたたちにさしずをしているのでしょう。まるで将軍しょうぐんが馬うまにまたがるように、潜航せんこう艇ていにまたがっているのです。

そこへ、ふいに水みずがさわいで、上うえの方ほうから、スーッと大おおきな黒くろいものがおりてきました。明智あけちの潜航せんこう艇ていです。この潜航せんこう艇ていは遊覧ゆうらん用ようのものですから、前まえと横よことに、あついガラスの窓まどがついています。その窓まどから艇内ていないの電灯でんとうの光ひかりがもれているのです。それを遠とおくから見みると、へんなところに三みつ目めのある怪物かいぶつのようです。

鉄てつの人魚にんぎょはそれに気きづくとギョッとしたように、身みがまえをして、じっとその方ほうをにらんでいます。

潜航せんこう艇ていは魚形ぎょけい艇ていとおなじ深ふかさまで沈しずむと、そこにとまって、いきなり、艇内ていないの電灯でんとうをパッパッと、つけたり消けしたりしはじめました。そのたびに、三みつのガラス窓まどが、またたきでもするように、暗くらくなったり、明あかるくなったりするのです。

これは、明智あけち探偵たんていにいいつけられたとおり、光ひかりによるモールス信号しんごうを発はっしているのです。トン・トン・ツーという、あの電信でんしんのモールス信号しんごうを、光ひかりによって、やっているのです。怪物かいぶつ団だんの方ほうにも、モールス信号しんごうぐらい、わかるやつがいるだろうと、それをためしているのです。

すると、魚形ぎょけい潜航せんこう艇ていの二ふたつの目めが、パチパチとまたたきはじめました。モールス信号しんごうが、わかるという答こたえです。そこで、こちらは、ほんとうの通信つうしんをおくりました。

「スグニココヲ、タチノケ、タチノカナケレバ、スイライヲ、ハッシャスルゾ」

水雷すいらいなんかもっていないのですが、こちらは海軍かいぐんの潜航せんこう艇ていとおなじかたちですから、そういえば、敵てきはおどろくにちがいないのです。

あんのじょう、魚形ぎょけい潜航せんこう艇ていは動うごきだしました。大洋たいよう丸まるのそばをはなれて、どこかへにげていくのです。

こちらは、すかさず、それを追おっかけます。二にせきの小型こがた潜航せんこう艇ていは海底かいてい競走きょうそうです。二ふたつ目め玉たまの小こクジラを追おう、三みつ目めの怪物かいぶつ、それの通過つうかするみち、海水かいすいはさかまき、さかなどもは、はねとばされ、長ながい海草かいそうは、あらしにふきつけられたように、みだれさわぎ、すさまじい海うみの底そこの追おっかけっこです。

明智あけちの方ほうの潜航せんこう艇ていは、なんといっても遊覧ゆうらん用ようですから、それほどの速力そくりょくはありません。ざんねんながら、魚形ぎょけい艇ていの速力そくりょくには、かなわないのです。だんだん、あいだがへだたっていくばかりでした。

そして、五ご分ふんほど追おっかけているうちに、あいてを見みうしなってしまいました。あいては、二ふたつ目め玉たまのようなヘッドライトを消けしたのです。そして、海うみの底そこの暗くらやみにまぎれて、どこかへ見みえなくなってしまったのです。こちらの操縦そうじゅう士したちは、なんだか敵てきが、パッとかきけすように見みえなくなったような気きがしました。忍術にんじゅつでもつかったようなかんじでした。しかしともかく、敵てきを追おっぱらったのですから、あとは、大洋たいよう丸まるのまわりをぐるぐるまわって、けいかいさえしていればよいのです。そこで、ハヤブサ丸まるの明智あけち探偵たんていに、無電むでんをうちました。

「テキテイモ、テツノニンギョモ、ニゲサッタ、ホンテイハ、フキンノ、ケイカイニアタル、スグ、センスイフヲイレヨ」

その無電むでんをうけたハヤブサ丸まるでは、ちゃんと用意よういをしてまっていた、ひとりの潜水せんすい夫ふを、すぐに大洋たいよう丸まるへと、もぐらせました。いちばん、うでききの潜水せんすい夫ふです。

右手みぎてに鉄棒てつぼう、左手ひだりてに水中すいちゅう電灯でんとうをさげた潜せん水夫すいふは、一いち度どはいったことのある船室せんしつへと、ハッチをくだっていきました。鉄てつの人魚にんぎょはにげさったというのですから、なにもこわいものはありません。金塊きんかいのありかさえ、さがしだせばよいのです。

水中すいちゅう電灯でんとうをふりてらしながら、広ひろい船室せんしつの中なかをあちこち見みまわっていますと、一方いっぽうの壁かべに、大おおきな四角しかくな穴あながあいているのに気きづきました。「おやっ。」と思おもって、よく見みると、貝かいがらがいっぱいついていて、よく見みわけられなかったのですが、そこにドアがあって、それがひらいていたのです。

ひとりでにひらくわけはありません。何者なにものかが、じぶんよりさきにきてドアをひらいたのです。潜せん水夫すいふはそこまで考かんがえると、ギョッとして、たちすくんでしまいました。鉄てつの人魚にんぎょは、もういないはずです。では、何者なにものがひらいたのでしょう。

それとも、もしかしたら、怪物かいぶつ団だんのやつが、ここをひらいて、とっくに金塊きんかいをぬすみだしてしまったのではないでしょうか。いずれにしても一いち大事だいじです。かれはそれをたしかめるために、電灯でんとうをふりかざして、そっと、ドアのむこうを、のぞいて見みました。

すると、その小ちいさい部屋へやの中なかに、ぼんやりと光ひかっているものがあるのです。水中すいちゅう電灯でんとうが、部屋へやの床ゆかにおいてあるのです。ハッとして、なおよくみると、おお、そこには、じつに気味きみのわるいへんなやつが、うごめいていたではありませんか。

そいつは人間にんげんのかたちをしていました。しかし、ふつうの人間にんげんではありません。からだじゅうに、太ふといまっ黒くろなしまがあるのです。白黒しろくろダンダラぞめの怪物かいぶつです。美うつくしいしまのあるタイがいますね。あれとそっくりのダンダラぞめの怪人かいじんです。

顔かおは人間にんげんですが、まるでゴリラみたいな、おそろしいやつです。その顔かおが、ガラスでもかぶせたように、ギラギラ光ひかって、それから、頭あたまのうしろに、まっ黒くろなギザギザのトサカみたいなものがついているのです。足あしの先さきにはアザラシのヒレのような大おおきな水みずかきがついています。

その怪物かいぶつが、ひとつの木きの箱はこを、こわきにかかえて、ひょいとこちらをむきました。そのうしろの、壁かべぎわには、おなじような木箱きばこが、うすだかくつんであります。

「ああ、わかった。金塊きんかいはここにあったのだ。この木きの箱はこにいれて、ここにつんであったのだ。」

潜せん水夫すいふは、とっさに、それをさとりました。ダンダラぞめの怪物かいぶつは、やっぱり金塊きんかいどろぼうだったのです。潜せん水夫すいふは潜水せんすいカブトの中なかの電話でんわ口くちにむかって、どなりました。

「金塊きんかいどろぼうを見みつけました。ダンダラぞめの怪物かいぶつです。ひっとらえてやります。すぐ応援おうえんをよこしてください。」

そうどなっておいて、かれはいきなり、ダンダラ怪人かいじんに、つかみかかっていきました。

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