← Library‹ 魔法博士 煙のように

ノロちゃんのからだが、ゾウの頭あたまの上うえにくると、背中せなかにのっていた怪かい黒人こくじんが、両手りょうてをだして、ノロちゃんをだきとめ、ゾウの鼻はなからはなして、じぶんの前まえにうまのりにさせました。こうしてノロちゃんは、ゾウの背中せなかにのせられてしまったのです。

ふたりをのせたゾウは、ズシン、ズシンと、歩あるきはじめました。いったい、ノロちゃんを、どこへつれていこうというのでしょう。小林こばやし君くんも、井上いのうえ君くんも、心配しんぱいでたまりませんから、ゾウのうしろからついていきました。

「た、たすけてくれえ……、小林こばやしさん、井上いのうえ君くん、はやく、たすけてえ……。」

ゾウの背中せなかの上うえでは、ノロちゃんが、身みをもがきながら、叫さけびつづけています。しかし、怪かい黒人こくじんが、うしろから、しっかり、だきしめているので、どうすることもできません。

広ひろいコンクリートの廊下ろうかのいっぽうの壁かべに、いくつもドアが並ならんでいる中なかに、ひじょうにでっかい、かんのん開びらきのドアがありました。ゾウは、そのドアの前まえに立たちどまると、鼻はなのさきで、ドアのとってをつかんで、二に枚まいのドアを、両方りょうほうにひらきました。そして、その中なかへ、ノッシ、ノッシと、はいっていくのです。

それは、ゾウの大おおきなからだが、通とおりぬけられるほど広ひろい入口いりぐちでした。

ふたりの少年しょうねんが、ひらいたドアの中なかをのぞいてみますと、そこは、ゾウがはいるといっぱいになってしまうような、あまり広ひろくない洋室ようしつでした。なんのかざりつけもなく、テーブルもいすもおいてない、がらんとした部屋へやです。

ゾウが黒人こくじんとノロちゃんをのせたまま、その部屋へやにはいると、両方りょうほうにひらいていたドアが、ひとりでに、スーッと、しまってしまいました。

すると、ゾウの背中せなかでわめいていたノロちゃんの声こえが、にわかに、ひくくなって、遠とおいところからのように聞きこえてきました。

しばらくのあいだ、そのかすかな叫さけび声ごえが、つづいていましたが、やがて、それもパッタリ、聞きこえなくなってしまいました。

ノロちゃんは、あの怪かい黒人こくじんのために、どうかされたのではないでしょうか。黒人こくじんは、ダンビラは、まえの洞窟どうくつの中なかに、おいてきたままでしたが、ほかに短刀たんとうを持もっているかもしれません。ノロちゃんは、さっきのダンダラぞめの服ふくをきた子こどものように、バラバラに、きり殺ころされてしまうのではないでしょうか。小林こばやし、井上いのうえの二に少年しょうねんは、もう、心配しんぱいでしかたがありません。ドアをおしたり、たたいたりしてみましたが、しぜんに錠じょうがかかったとみえて、びくともしないのです。

「ウフフフ……、きみたちふたりは、あとに残のこされてしまったね。」

とつぜん、うしろから、きみの悪わるい声こえがきこえました。びっくりして振ふりむきますと、そこに、さっきの老ろう黒人こくじんが、立たっていました。洞窟どうくつの中なかで、てんじょうに縄なわを投なげた、あの白しろひげのじいさんです。

「あっ、さっきのおじいさんですね。ここをあけてください。ノロちゃんが、ゾウにのって、この中なかに、とじこめられてしまったのです。」

小林こばやし君くんが、たのむようにいいました。

「ウフフフ……、心配しんぱいかね? だが、あの子こは、べつにひどいめにあうわけではない。ただね、遠とおい、遠とおいところへ、いくばかりなのだ。」

「えっ、遠とおいところですって? いったい、それは、どういうわけです。ノロちゃんは、たしかに、この部屋へやの中なかに、いるんですよ。」

「いや、いまごろは、もう、遠とおいところへ、いってしまったかもしれない。ドアをあけて、見みせてやろうか。あの子こが、どうなったか、わかるだろうからね。」

老ろう黒人こくじんは、なぞのようなことをいいながら、ドアの前まえに近ちかよると、どこかのボタンをおしたらしく、カチッという音おとがして、かんのん開びらきのドアは、両方りょうほうへ、スーッとひらきました。

「あっ、なんにもいない! さっきのゾウは、どこへいったんだろう? そして、ノロちゃんは……。」

小林こばやし君くんが叫さけびました。いかにも、その部屋へやは、からっぽなのです。ゾウも、怪かい黒人こくじんも、ノロちゃんも、かき消けすように、いなくなってしまったのです。

その部屋へやには、入口いりぐちのドアのほかには、ひとつも出入でいり口くちはありません。窓まどもありません。それでいて、あの巨大きょだいなゾウが、煙けむりのように消きえてしまったのです。ああ、かわいそうなノロちゃんは、いったい、どうなったのでしょうか。

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