← Library‹ 魔法博士 悪魔の国

移動いどう映画えいが館かんの小型こがた自動じどう車しゃは、ふたりの少年しょうねんをしたがえて、ノロノロと走はしっていきます。あたりは、だんだん日ひがくれて、さびしくなり、まっ暗くらになっていました。

「ノロちゃん、きみ、バッジもってるかい?」

井上いのうえ君くんが、ノロちゃんの耳みみに口くちをつけるようにして、ささやきました。

「うん、ポケットにあるよ。少年しょうねん探偵たんてい団だんの規則きそくだもん。いつでも、バッジを三十さんじゅう個こずつ、ポケットへいれておけって。」

「そうだよ。ぼくも、三十さんじゅう個こもってるよ。」

それをささやきあうと、ふたりは、いくらか安心あんしんしたような顔かおつきになりました。

バッジというのは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんが、胸むねにつけているB・Dバッジのことです。このバッジは、団員だんいんの目めじるしのほかに、いろいろな、つかいみちがあるのでした。

それは直径ちょっけい一いちセンチ半はんほどの、銀色ぎんいろをしたバッジですが、悪人あくにんを尾行びこうして、ぎゃくに悪人あくにんのためにとらえられたときなど、このバッジを、つぎつぎと道みちに落おとしておけば、それを目めじるしにして、悪人あくにんのすみかがわかるという便利べんりなものです。

また、悪人あくにんとたたかうとき、遠とおくからバッジをなげつけて、相手あいてを、こまらせることもできますし、どこかの家いえにとじこめられたとき、窓まどからこのバッジをへいの外そとへなげれば、じぶんのいるところを、団員だんいんにしらせることもできます。もし、紙かみと鉛筆えんぴつを持もっていたら、手紙てがみを書かいて、その紙かみにバッジをつつんで、へいの外そとへなげるという、つかいみちもあります。

それから、団員だんいんが、どこかにかんきんされているとき、その部屋へやの窓まどをめがけて、バッジをなげこめば、なかまが助たすけにきたことを、しらせるてだてにもなるのです。

井上いのうえ君くんとノロちゃんは、そのB・Dバッジを三十さんじゅう個こずつ、ポケットにいれていました。手てでさわってみると、ジャラジャラと音おとがするのです。

「あいつ、なんだか、あやしいやつだから、もしものときの用意よういに、このへんから、バッジを落おとしておくことにしよう。二十にじゅう歩ほに一ひとつずつだよ。いまから、二十にじゅう歩ほあるいたら、ぼくが一ひとつ落おとす。そのつぎの二十にじゅう歩ほめに、きみが一ひとつ落おとす。そういうふうにして、かわりばんこに、道みちへ落おとしていくことにしよう。」

井上いのうえ君くんが、ささやきますと、ノロちゃんもうなずいて、

「うん、それがいい。二十にじゅう歩ほに一ひとつずつなら、ずいぶん長ながくつづくからね。」

このバッジを二十にじゅう歩ほごとに落おとしておくというのも、少年しょうねん探偵たんてい団だんの規則きそくでした。だれかが、ゆくえ不明ふめいになったときは、まずバッジをさがし、それがみつかったら、そこからどちらの方角ほうがくへも、二十にじゅう歩ほずつ歩あるいてみて、つぎのバッジをさがし、それをくりかえして、ゆくえをつきとめるという申もうしあわせなのです。

さて、怪かい人物じんぶつのノロノロ自動じどう車しゃは、さびしい方ほうへ、さびしい方ほうへと進すすんで、しばらくすると、大おおきな神社じんじゃの森もりの中なかへはいっていきました。

もう、あたりはまっ暗くらです。森もりの中なかには、街灯がいとうがごくわずかしかないので、足あしもとも見みわけられないほどです。

「よそうよ。もう帰かえろうよ。ぼく、こわいよ。」

ノロちゃんが、井上いのうえ君くんの手てをひっぱって、だだっ子このように立たちどまってしまいました。

「だめじゃないか。せっかく、ここまできたのに。ここは山やまの奥おくじゃないよ。この森もりの向むこうには、にぎやかな東京とうきょうの町まちがつづいているんだよ。それに、バッジがぼくらを、まもってくれるから、だいじょうぶだよ。」

井上いのうえ君くんは、ノロちゃんの耳みみに口くちをつけて、しかるようにささやきました。そのときです。森もりのやみの中なかに、やみよりも黒くろいものが、モヤモヤと動うごきだすのが見みえました。

さすがの井上いのうえ君くんも、それを見みると、はっとして、ノロちゃんといっしょに、逃にげだそうとしましたが、もうおそかったのです。まっ黒くろな人ひとかげが、ふたりのうしろにまわって、とおせんぼうをしていました。

うしろだけでなく、前まえからも、横よこからも、おなじようなまっ黒くろな怪物かいぶつが、せまってくるではありませんか。

立たって歩あるいているから、人間にんげんにちがいありません。ばけものでも、動物どうぶつでもないのです。

「だれだっ。きみたちは、だれだっ?」

井上いのうえ君くんが、ノロちゃんをかばうようにして、どなりました。

「だれでもない。おれたちは、魔法まほう博士はかせの弟子でしだ。きみたちふたりを、これから悪魔あくまの国くにへつれていくのだ。」

黒くろいやつのひとりが、ぶきみな声こえでこたえました。

遠とおくの街灯がいとうの光ひかりで、三さん人にんの黒くろんぼうの姿すがたが、かすかに見みえます。三さん人にんとも、ぴったり身みについた、まっ黒くろなシャツとズボン下かをはき、頭あたまから三角さんかくの黒くろ覆面ふくめんをかぶっています。その目めと口くちのところだけが、くりぬいてあって、そこから、にぶく光ひかる目めがのぞいています。

「たすけてくれえ……、映画えいがのおじさん! 自動じどう車しゃのおじさん! はやく、はやく、たすけてえ……。」

ノロちゃんが、死しにものぐるいの声こえをだしました。

すると、向むこうの自動じどう車しゃの中なかから、まっ黒くろなやつがあらわれてきました。こちらの三さん人にんと同おなじ姿すがたです。

「ウフフフ、わしが映画えいがのおじさんだよ。だが、きみたちのみかたじゃない。わしこそ、悪魔あくまの国くにのあるじの魔法まほう博士はかせというものじゃ。」

ああ、映画えいがのおじさんと思おもっていた男おとこが、じつは、悪魔あくまの国くにの首領しゅりょうだったのです。二に少年しょうねんの運命うんめいは、これからいったい、どうなるのでしょうか。

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