← Library‹ 魔法博士 人造人間

井上いのうえ君くんとノロちゃんは、三さん人にんの黒くろ覆面ふくめんに、とうとう、つかまえられてしまいました。そして、たちまち手足てあしをしばられ、さるぐつわをはめられ、黒くろいきれで目めかくしまでされて、森もりの外そとに待まっていた大おおきな自動じどう車しゃの中なかへはこばれました。

目めかくしされているので、なにもわかりませんが、もう自動じどう車しゃは走はしりだしていました。二に少年しょうねんがこしかけているとなりには、さっきの悪者わるもののひとりが、がんばっているようすです。

おくびょうもののノロちゃんは、これからどうなることかと、恐おそろしさに、ただもうブルブルふるえていました。となりにいる井上いのうえ君くんには、それがよくわかるので、元気げんきづけようとするのですが、さるぐつわで、ものがいえません。しかたがないので肩かたをグングンおしつけて、

「ぼくも、ここにいるんだから、だいじょうぶだよ。」

という、あいずをするのでした。

自動じどう車しゃは、ひじょうなはやさで走はしっていましたが、三十さんじゅう分ふんもたったころ、ピタリととまり、ふたりはまた、あらくれ男おとこにだきあげられて、どこかの家いえの中なかへつれこまれ、階段かいだんをあがったり、廊下ろうかのようなところを、グルグルまがったりして、ひとつの部屋へやの中なかへいれられました。

そのとき、男おとこたちは、手てばやく二に少年しょうねんの縄なわをとき、目めかくしとさるぐつわをはずして、つきとばすように、その部屋へやの中なかへいれると、ピシャンと、ドアをしめて、そとからかぎをかけてしまいました。部屋へやの中なかは、なぜかまっ暗くらです。

「ああ、井上いのうえ君くん!」

ノロちゃんは、口くちがきけるようになったので、井上いのうえ君くんの名なをよんで、手てさぐりで、そのからだに、しがみついていきました。

「ノロちゃん。しっかりするんだ。ぼくたちは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんなんだからね。きっと、小林こばやしさんや、明智あけち先生せんせいが、助たすけに来きてくれるよ。」

「だって、せっかく、道みちにすてたB・Dバッジが、なんにもならなかったじゃないか。こんな遠とおくへ自動じどう車しゃでつれてこられたんだから。ぼくたちのいくさきは、だれにもわからないよ。」

「ぼくは、黒くろ覆面ふくめんにつかまったとき、バッジののこりを、みんな、あの森もりの中なかへすててしまった。あそこには、バッジが、たくさん落おちているはずだ。それを、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんのだれかが見みつけてくれたら、あそこで、何なんかあったということがわかるよ。そして、バッジのうらには、ぼくたちの名なまえが、ほりつけてあるんだから、井上いのうえと野呂のろのふたりが、森もりの中なかで、ひどいめにあったということが、わかるはずだ。それだけでも、あのバッジを落おとしたことは、むだじゃないよ。」

井上いのうえ君くんのいうとおり、B・Dバッジのうらには、団員だんいんがじぶんの名なを、クギのさきでほりつけておく規則きそくでした。ですから、バッジのうらを見みれば、だれが落おとしていったかということが、すぐに、わかるのです。

そのとき部屋へやが、とつぜん、パッとあかるくなりました。だれかが、外そとのスイッチをおして、電灯でんとうをつけたのです。

その光ひかりで、部屋へやの中なかを一目ひとめみると、ノロちゃんは、また「あっ!」とさけんで、井上いのうえ君くんにしがみつきました。そこは、じつになんともいえない、異様いような部屋へやだったからです。

たたみなら二十にじゅう畳じょうもしけるほどの広ひろさで、窓まどというものが一ひとつもない、てんじょうの高たかい洋室ようしつです。その四方しほうの壁かべに、ぶきみな人造じんぞう人間にんげんが、ウジャウジャといるのです。じっさいにいるわけではなく、よく見みると、壁画へきがなのですが、それらが、四方しほうからこちらへ歩あるいてくるように見みえるのです。

人間にんげんの三さん倍ばいほどの巨大きょだいな人造じんぞう人間にんげん、全身ぜんしんが黒くろい鉄てつでできていて、まっ四角しかくな顔かおには、まんまるな、まっかな目玉めだまが光ひかっています。かくばった口くちは耳みみまでさけて、のこぎりのような歯はが、ならんでいます。その巨人きょじんが、まっすぐに、こちらへ歩あるいてくるように感かんじられるのです。

人間にんげんの二に倍ばいぐらいの大おおきさのやつもいます。人間にんげんと同おなじくらいのやつもいます。それが、四方しほうの壁かべをあわせると、百ひゃく人にん以上いじょうも、ビッシリならんで、みんな、こちらをむいて歩あるいてくるところが、油絵あぶらえでかいてあるのです。

その人造じんぞう人間にんげんの形かたちもいろいろで、鉄てつでできた四よん角かくばったやつばかりではありません。青銅せいどうの魔人まじんみたいなのもいれば、黄金おうごん仮面かめんみたいなやつもいます。また、火星かせい人にんみたいな、グニャグニャしたタコのおばけみたいなのも、まじっているのです。

「ノロちゃん、こわがることはないよ。あれはみんな絵えだよ。油絵あぶらえだよ。でも、なんて、ふしぎな部屋へやだろう。壁かべじゅう人造じんぞう人間にんげんで、うずめてしまうなんて。」

勇気ゆうきのある井上いのうえ少年しょうねんも、四方しほうからおしよせてくる人造じんぞう人間にんげんの絵えを見みると、なんだか、へんな気持きもちになるのでした。その部屋へやのまんなかには、一いち度ども見みたことのない、奇妙きみょうな形かたちのテーブルと、いすが、おいてありました。

テーブルは三角さんかくで、三さん本ほんのあしが、みんな形がたがちがっていて、へんなふうに、まがっているのです。いすも、ちょっと口くちではいえないような異様いような形かたちで、どこか、遠とおい星ほしの世界せかいのいすとでもいった感かんじです。また、ふしぎな形かたちの長ながいすも、おいてあります。まるで、巨大きょだいなカマキリが、うずくまっているような、へんてこな長ながいすです。

井上いのうえ君くんとノロちゃんは、おそるおそる、その長ながいすに並ならんでこしかけました。そして、キョロキョロと、四方しほうの壁かべを見みまわしています。あまりのことに、ものをいうことも忘わすれてしまったらしいのです。

すると、いつのまにか、ドアが音おともなくひらいて、そこから、ひとりの人間にんげんがはいってきました。

たしかに、三十さんじゅう歳さいぐらいの人間にんげんの顔かおです。しかし、なんという、きみの悪わるい顔かおでしょう。青あおざめて、すきとおったロウ細工さいくのような顔かおです。そして、その顔かおは、お能のうの面めんのように、すこしも動うごかないのです。目めは正面しょうめんを見みつめたまま、まばたきもしません。

その男おとこは、荒あらいこうしじまの背広せびろをきていましたが、その肩かたなどは、まるでカカシみたいにまっすぐで、機械きかいに服ふくをきせたようです。それに歩あるきかたが、じつにへんてこでした。これも機械きかいじかけらしく足あしを動うごかすたびに、ギリギリと、歯車はぐるまの音おとが聞きこえるように思おもわれました。

二に少年しょうねんは、からだをくっつけあって、おそろしそうに、このふしぎな人間にんげんを見みつめています。

すると、その男おとこは、機械きかいのような歩あるきかたで、こちらに近ちかづき、二に少年しょうねんの前まえに立たちどまると、ロウのような顔かおの口くちだけを、パクパク動うごかして、なにか、しゃべりはじめました。その声こえが、また、歯車はぐるまのきしるような、じつに、いやあな声こえなのです。

「魔法まほう博士はかせが、きみたちを呼よんでいる。ぼくが、案内あんないするから、いっしょに来きなさい。」

それをきくと井上いのうえ少年しょうねんは、思おもいきってたずねてみました。

「魔法まほう博士はかせって、何者なにものです? どうしてぼくたちを、こんなうちへつれてきたんです。」

すると、男おとこはまた、口くちだけを動うごかして答こたえました。口くちのほかは、すこしも動うごかず、目めは、まっすぐ前まえを見みつめたまま、一いち度ども、少年しょうねんたちの方ほうを見みないのです。

「それは、魔法まほう博士はかせにききなさい。魔法まほう博士はかせにあえば、すっかりわかるのだ。」

少年しょうねん探偵たんてい団だんは、いつか、魔法まほう博士はかせというふしぎな人物じんぶつと、黄金おうごんのトラを盗ぬすみだす知恵ちえくらべをしたことがあります。あの魔法まほう博士はかせなら、悪人あくにんではありません。このうちにいる魔法まほう博士はかせは、あの人ひとと同おなじなのでしょうか。いや、どうも、そうではなさそうです。名なまえは同おなじでも、まったくべつの魔法まほう博士はかせにちがいありません。

ノロちゃんは、ただふるえているばかりですが、井上いのうえ君くんはしっかりした少年しょうねんですから、その魔法まほう博士はかせにあってみようと思おもいました。いやだといっても、どうせまた、さっきの男おとこたちがとびだしてきて、むりに、つれていくのでしょう。それよりは、こちらからすすんで、魔法まほう博士はかせにあいにいったほうがよいと考かんがえたのです。

「ノロちゃん、もう、こうなったら逃にげることはできないんだから、いってみよう。そして、魔法まほう博士はかせに、わけをきいてみよう。」

井上いのうえ君くんは、そういって、ふるえているノロちゃんの手てをひっぱって立たちあがらせ、ロウの顔かおをもった男おとこのあとについて部屋へやを出でました。

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