← Library‹ 魔法博士 怪老人

山下やました邸ていの怪かい事件じけんがあってから、三み日かめの夕ゆうがたのことです。井上いのうえ少年しょうねんとノロちゃんのふたりが、麹町こうじまちの明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょへ、小林こばやし少年しょうねんをさそいだしにきました。小林こばやし君くんが玄関げんかんへ出でますと、井上いのうえ少年しょうねんが、

「小林こばやしさん、ぼくたち、いま、ふしぎなものをみつけたんだよ。へんなじいさんがね、この近ちかくのさびしい町まちで、黄金おうごん怪人かいじんの人形にんぎょうを売うっているんだよ。あいつ、どうも、あやしいやつだ。それで、小林こばやしさんに、一いち度ど見みてもらおうとおもって、さそいにきたんだよ。」

小林こばやし君くんは、井上いのうえ少年しょうねんから、なおくわしく話はなしをきき、やっぱり、あやしいやつだと思おもいましたので、そのまま、ふたりといっしょに、そこへ行いってみることにしました。

そこは事務じむ所しょから五百ごひゃくメートルほどもある、さびしい町まちでした。両側りょうがわは大おおきなやしきのコンクリートべいで、そのコンクリートべいの前まえに、ひとりのみょうなじいさんが、地面じめんに金色きんいろのオモチャをならべて、そのうちの一ひとつを、歩あるかせてみせているのでした。

そのまわりを、七なな―八はち人にんの近所きんじょの子こどもたちが、とりかこんで、歩あるくオモチャを、いっしんにみつめています。小林こばやし君くんたち三さん人にんも、そのそばによって、じいさんの顔かおと、地面じめんのオモチャとを、見みくらべました。

それはたしかに、黄金おうごん怪人かいじんとそっくりのオモチャでした。じいさんのよこに、白しろくぬった木きの箱はこがおいてあって、その中なかからとりだしたらしく、怪人かいじんのオモチャが、十じゅういくつも地面じめんにたてならべてあり、そのうちの一ひとつを、歩あるかせてみせているのです。二十にじゅうセンチぐらいの黄金おうごん怪人かいじんが、ジージーと音おとをたてながら、地面じめんを歩あるいているのです。

「どうだね、うまく歩あるくだろう。これは新しん発明はつめいの魔法まほう人形にんぎょうっていうんだ。ゼンマイじかけじゃないよ。無線むせんそうじゅうでもない。もっとふしぎな秘密ひみつのしかけがあるんだ。どうだ、一ひとつ買かわないかね。やすいよ。一いち個こたった百ひゃく円えんだ。」

じいさんは、そんなことをいって、ジロジロと、少年しょうねんたちの顔かおを見みまわすのです。

小ちいさなしまのハンチングを、チョンとかぶり、太ふとい黒くろぶちのめがねをかけ、鼻はなの下したには、白しろいひげが、口くちをかくして、長ながくたれています。あごひげはありません。二十にじゅう年ねんもまえにはやったような、黒くろの背広せびろをきて、小ちいさな台だいの上うえにこしかけているのです。

金色きんいろの歩あるく人形にんぎょうが百ひゃく円えんなら、やすいものですから、四よん人にんの子こどもが、それを買かいました。

「うん、それっきりか。もうあとの子こは、おこづかいを持もっていないのだね。よしよし、またあした、やってくるからね。それまでに、おかあさんにおこづかいをもらっておくんだよ。」

じいさんは、地面じめんにおいてあった残のこりの人形にんぎょうを白しろい箱はこにいれ、こしかけていた台だいを、小ちいさくおりたたんで、これも箱はこの中なかにいれ、箱はこについている太ふといひもを首くびにかけて、箱はこを胸むねのまえにさげると、よっこらさと、立たちあがりましたが、まだそこの地面じめんに、さっきの人形にんぎょうが一ひとつだけ、ジージーと、歩あるきまわっています。

「よしよし、おまえが、わしの道みちあんないをするんだね。さあ、向むこうへいくんだ。」

じいさんが、まえかがみになって、人形にんぎょうに命令めいれいしますと、人形にんぎょうは、いわれたとおりに、ジージーと、向むこうの方ほうへ歩あるきだしました。

ゼンマイじかけで、こんなにつづくわけがありません。

といって、無線むせんそうじゅうでもなさそうですから、じつにふしぎです。このじいさんは、ほんとうに魔法まほうつかいかもしれません。

二十にじゅうセンチの黄金おうごん怪人かいじんは、じいさんの先さきにたって、ジージーといつまでも歩あるいていきます。じいさんは、そのあとから、人形にんぎょうがころびはしないかと、気きが気きでないようなかっこうで、両手りょうてを人形にんぎょうの上うえにのばして、まがった腰こしで、ヨチヨチと歩あるいていくのです。

いったい、こんなに長ながく歩あるきつづける人形にんぎょうが、百ひゃく円えんだなんて、ウソみたいなねだんです。きっと、インチキにちがいありません。あれを買かった子こどもたちは、うちへ帰かえってやってみると、人形にんぎょうはちっとも動うごかない、というようなことではないでしょうか。

それはともかく、小林こばやし君くんたち三さん少年しょうねんは、あいてに気きづかれないように、このふしぎなじいさんのあとを尾行びこうしました。

百ひゃくメートルいっても、二百にひゃくメートルいっても、黄金おうごん怪人かいじんの人形にんぎょうは、まだ歩あるきつづけています。じいさんが、ねこぜになって、両手りょうてで、それを追おっかけていくのも同おなじです。

「ねえ、あんなに、歩あるきつづける機械きかいじかけなんて、ありっこないよ。あのこびとは、ほんものの黄金おうごん怪人かいじんかもしれないぜ。」

ノロちゃんが、顔かおを青あおくして、ささやきました。

考かんがえてみますと、黄金おうごん怪人かいじんは、いくらでも、じぶんのからだを小ちいさくできるのですから、じいさんの先さきにたって歩あるいている金色きんいろの人形にんぎょうは、じつは怪人かいじんそのひとなのかもしれません。ノロちゃんがうたがうのも、もっともです。

「うん、ひょっとしたら、そうかもしれない。そうだったら、いっそう、あいつのあとをつけるんだ。見みうしなわないように。きみたち、いいかい。」

小林こばやし君くんが、ふたりを元気げんきづけるように、ささやきました。

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