← Library‹ 魔法博士 黒い穴

じいさんは、さびしい町まちから、さびしい町まちへと、どこまでも歩あるいていきます。もう、一いちキロ以上いじょうも歩あるきました。いくらさびしい町まちでも、たまには人ひとが通とおります。じいさんは、向むこうからくる人ひとの姿すがたを見みると、金色きんいろの人形にんぎょうに、おおいかぶさるようにして、それをかくしてしまうのです。三さん少年しょうねんは、じぶんたちも、気きづかれやしないかと、ビクビクしながら、ずうっとうしろの方ほうから尾行びこうしていましたが、じいさんは、ときどき、うしろをふりむくのに、なぜか少年しょうねんたちに、すこしも気きがつかないようです。あとになって、じいさんは、知しっていて知しらぬふりをしていたことがわかりましたが、そのときは、さすがの小林こばやし君くんも、そこまではさっしがつきませんでした。

もう一いちキロ半はんも歩あるいたころです。じいさんが、一ひとつの町まちかどをヒョイとまがって、見みえなくなりました。そういうことは、いままでにも、たびたびあったのですが、こんどは、なんだか、ようすがへんでした。三さん少年しょうねんは、驚おどろいてかけだしました。そして、そのまがり角かどから、そっとのぞいてみますと、すぐ目めの前まえに、赤あかいポストが立たっていて、その向むこうを、あのじいさんが歩あるいていくのが見みえました。しかし、じいさんだけではありません。もうひとりのやつが、じいさんに手てをひかれて歩あるいているのです。少年しょうねんたちは、それを見みると、ゾーッと、せなかに水みずをかけられたような気きがしました。

そのもうひとりのやつは、小しょう学校がっこう一いち年ねん生せいぐらいの大おおきさの黄金おうごん怪人かいじんだったのです。

あの二十にじゅうセンチのこびとが、角かどをまがったとたんに、たちまち、からだがのびて、子こどもの大おおきさになってしまったのです。

いよいよ、この老人ろうじんはくせものです。老人ろうじんに手てをひかれているやつは、ほんものの黄金おうごん怪人かいじんにちがいないのです。

町まちかどをまがってすこしいくと、草くさのぼうぼうとはえた原はらっぱにでました。そのころは、まったく日ひがくれて、もうあたりはまっ暗くらです。老人ろうじんと子こどもの黄金おうごん怪人かいじんとは、その暗くらい原はらっぱの草くさの中なかへぐんぐんはいっていきます。草くさが高たかくのびているので、それにかくれて、ふたりの姿すがたが見みえなくなるほどです。

少年しょうねんたちは、なんだか、こわくなってきました。ぼうぼうと草くさのはえた中なかへ、姿すがたをかくしていく子こどもの黄金おうごん怪人かいじん、それはおばけのこわさでした。ノロちゃんは、もうガタガタふるえています。

「ねえ、もう帰かえろうよ。ぼく、きみが悪わるくなってきた。」

しかし、ここで見みのがしてしまっては、せっかく苦心くしんして尾行びこうしてきたのが、なんにもならなくなります。小林こばやし君くんは、こわい顔かおをして、ノロちゃんをにらみつけました。

「また、きみのおくびょうが、はじまった。そんなことをいえば、よけいきみは帰かえさないよ。さあ、いくんだ。どこまでも尾行びこうをつづけるんだ。」

小林こばやし君くんはそういって、音おとをたてないように注意ちゅういしながら、くさむらの中なかへはいっていきました。井上いのうえ君くんも勇気ゆうきのある少年しょうねんですから、こわくても、逃にげる気きにはなりません。ノロちゃんの手てをひっぱって、小林こばやし君くんのあとにつづきました。

「音おとをさせちゃいけないよ。」

小林こばやし君くんがうしろをむいて、ささやきました。三さん人にんは、草くさの中なかにかがみこんで、はうようにして、ソロソロと進すすんでいきます。

二十にじゅうメートルも歩あるいたでしょうか。ふと向むこうをみると、ちょっと草くさのなくなった地面じめんがあって、そこに防空ぼうくう壕ごうの入口いりぐちのようなまっ暗くらな穴あなが、ひらいていました。広ひろい東京とうきょうには二十にじゅう年ねんまえの防空ぼうくう壕ごうが、そのまま残のこっているところもないではありません。

「あのふたりは、この穴あなの中なかへ、はいっていったのだろうか。」

井上いのうえ君くんが、ささやきました。あたりをみまわしても、じいさんと黄金おうごん怪人かいじんの姿すがたは、どこにもありません。防空ぼうくう壕ごうにはいったとしか考かんがえられないのです。

すると、そのとき、まっ暗くらな穴あなの中なかに、チラッと白しろい光ひかりが見みえました。だれかが、マッチをすったのでしょうか、それとも、懐中かいちゅう電灯でんとうをてらしているのでしょうか。しかし、その光ひかりはチラッと見みえたばかりで、すぐ消きえてしまいました。

これで、穴あなの中なかに、何者なにものかがいることがたしかになりました。小林こばやし君くんはそこへはっていって、そっと中なかをのぞいてみましたが、まっ暗くらでなにもわかりません。穴あなの中なかの遠とおくの方ほうから、なにか人ひとのうごめくような、かすかな音おとが聞きこえてくるばかりです。

「はいってみよう。ぼくは七ななつ道具どうぐを、ちゃんと持もっているから、懐中かいちゅう電灯でんとうもあるよ。」

小林こばやし君くんが、もとの場所ばしょにはってきて、ふたりにささやきました。すると、井上いのうえ君くんが、ささやきかえすのです。

「ぼくたちも、七ななつ道具どうぐは持もっているよ。ノロちゃんも、ぼくも。」

「よし、それじゃ、いこう。」

そして、三さん人にんは、まっ暗くらな穴あなの中なかへはいっていきました。足あしでさぐってみると中なかには、土つちでだんだんができています。十じゅうだん以上いじょうもある深ふかい穴あなです。三さん人にんはころばないように用心ようじんしながら、その底そこまで、たどりつきました。なんの音おともなく、なんの光ひかりもありません。すみをながしたような、真しんのやみです。

ああ、心配しんぱいになってきました。少年しょうねんたちは、怪人かいじんが待まちかまえているわなの中なかへ、おちこんでいくのではないでしょうか。

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