← Library‹ サーカスの怪人 名探偵明智小五郎

明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの書斎しょさいで、明智あけち小五郎こごろうと小林こばやし少年しょうねんが話はなしていました。

小林こばやし君くんは、笠原かさはら正一しょういち少年しょうねんがゆくえ不明ふめいになったことを、報告ほうこくしているのです。

みんなが、ねむり薬やくでねむらされたのです。正一しょういち君くんはそのあいだに、つれだされたらしいのですが、何者なにものが、どこから、つれだしたのか、まったくわかりません。家いえじゅうの戸とにはみんなかぎがかかっていて、どこにも出入でいり口くちはなかったのです。正一しょういち君くんは、煙けむりのように、戸とのすきまからでも出でていったとしか考かんがえられません。犯人はんにんはむろん、あの骸骨がいこつ男おとこです。あいつがまた魔法まほうをつかったのです。

明智あけち探偵たんていなら、このなぞがとけるにちがいないというように、小林こばやし君くんは先生せんせいの顔かおを、じっと見みつめるのでした。

「あいつは、笠原かさはらさんが自分じぶんの手てで、正一しょういち君くんを殺ころすのだと、いったのだね。」

「そうです。それが恐おそろしいのです。」

明智あけち探偵たんていは、しばらく考かんがえていましたが、ふと思おもいついたようにたずねました。

「きのうは、ひっこしで、まだいろいろな荷物にもつがはこびこまれていたわけだね。なにか大おおきな荷物にもつが、いちど持もちこまれて、またそのまま、持もちだされたというようなことは、なかっただろうか。」

小林こばやし君くんは、それをきくと、ハッとしたように目めをみはりました。

「そういえば、へんなことがありました。正一しょういち君くんたちの見みはりばんをするために、あそこにとまっているサーカス団だん員いんが、こんなことを話はなしていたのです。きのう、運送うんそう屋やが、じゅうたんの巻まいたのを持もってきたのだそうです。こちらは、注文ちゅうもんしたおぼえがないといっても、代金だいきんをいただいているからといって、むりにおいていったのだそうです。ところが、けさになって、その運送うんそう屋やが、またやってきて、きのうのじゅうたんは、あて名なをまちがえたのだといって、とりかえしていった、というのです。」

「それじゃ、きみは、そのじゅうたんを見みたわけではないね。」

「ええ、ぼくがあそこへいったときには、もう、運送うんそう屋やが、取とりもどしていったあとでした。」

明智あけち探偵たんていはそれを聞きくと、すぐにデスクの上うえの電話でんわの受話じゅわ器きをとって、笠原かさはらさんのうちを呼よびだしました。

「こちらは明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょですが、笠原かさはらさんはおいでですか……。え、お出でかけになった? ……あなたは? ああサーカス団だんのかたですね。いま小林こばやし君くんに聞きいたのですが、きのう、じゅうたんが持もちこまれたそうですね。あなたはそれを、ごらんになりましたか。ああ、あなたが受うけとったのですか。じゅうたんは巻まいてあったのですね。その大おおきさが知しりたいのですが、長ながさは? ……二にメートルぐらいですね。太ふとさは? ……五十ごじゅうセンチ? そんなに太ふとかったのですか。ああ、三さん部屋へやぶんですね。わかりました。……ところで笠原かさはらさんは、いつごろ出でかけられたのですか……いましがた? サーカスへいかれたのですか。え? そうじゃない? どこです? 射撃しゃげき場じょうですって? 銃じゅうの射撃しゃげきを練習れんしゅうしておられるのですか。その射撃しゃげき場じょうはどこにあるのです? 世田谷せたがや区くの烏山からすやま町まち。芦花公園ろかこうえんのむこうですね。烏山からすやま射撃しゃげき場じょうというのですね。その射撃しゃげき場じょうの電話でんわ番号ばんごうはわかりませんか。え? 三さん二に一いちの五ご四よん九きゅう〇れいですね。いや、ありがとう。」

明智あけち探偵たんていはいちど受話じゅわ器きをかけると、すぐにまたはずして、いま聞きいたばかりの番号ばんごうを呼よびだしました。

「烏山からすやま射撃しゃげき場じょうですか? あなたは? ……ああ、射撃しゃげき場じょうの主任しゅにんさんですね。射撃しゃげきの練習れんしゅうはもうはじまっていますか。え、まだですって。そこへ、グランド=サーカスの笠原かさはらさんがいっておられますか。え? まだきておられない? きょうは何なん人にんほど、練習れんしゅうにこられるのですか。……三さん人にんですか。笠原かさはらさんもそのひとりですね。わかりました。ぼくは私立しりつ探偵たんていの明智あけち小五郎こごろうです。いますぐに自動じどう車しゃでそちらへいきます。三十さんじゅう分ふんはかかるでしょう。ぼくがいくまで、射撃しゃげきの練習れんしゅうをはじめないでください。ぜったいに射撃しゃげきをやってはいけません。わかりましたか。人ひとの命いのちにかかわることです。殺人さつじん事件じけんが起おこるかもしれないのです。かならず、ぼくがいくまで待まってください。わかりましたね。」

明智あけち探偵たんていは、くどいほど念ねんをおして電話でんわをきりました。

「先生せんせい、お出でかけになるのですか。」

小林こばやし君くんが、めんくらったように、たずねました。小林こばやし君くんには、明智あけち先生せんせいが、なにを考かんがえているのか、すこしもわからないのです。

「うん、大おおいそぎで、自動じどう車しゃを呼よんでくれたまえ。そして、きみもいっしょにいくのだ。ぼくの考かんがえちがいかもしれない。しかし、いって、たしかめてみるまでは、安心あんしんができない。ひょっとしたら、正一しょういち君くんがおとうさんの笠原かさはらさんに、殺ころされるかもしれないのだ。」

「エッ? 正一しょういち君くんが? それじゃあ、骸骨がいこつ男おとこのいったとおりになるかもしれないのですね。」

「そうだよ。だから大おおいそぎだ。すぐに車くるまを呼よびたまえ。」

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