← Library‹ サーカスの怪人 少年探偵団

骸骨がいこつ男おとこがなんのためにサーカスにあらわれるのか、その目的もくてきはすこしもわかりませんが、こんなことが知しれわたったら、見物けんぶつがこなくなってしまうので、笠原かさはら団長だんちょうは警察けいさつにうったえて、どうかして、このお化ばけみたいな怪物かいぶつを、とらえようとしました。

警察けいさつでも大おおぜいの制服せいふく、私服しふくの警官けいかんを、サーカスにはいりこませて、手てをつくして怪物かいぶつの捜索そうさくをしましたが、なんの手てがかりを、つかむこともできないのでした。

笠原かさはら正一しょういち君くんは、なんだか、じぶんたちきょうだいが怪物かいぶつにねらわれているような気きがして、こわくてしかたがありませんので、学校がっこうで、友ともだちのノロちゃんにそのことを話はなしますと、ノロちゃんは、それを少年しょうねん探偵たんてい団だん長ちょうの小林こばやし君くんにしらせました。そこで、いよいよ、少年しょうねん探偵たんてい団だんがこの怪かい事件じけんにのりだすことになったのです。

この事件じけんの主任しゅにんは、警視けいし庁ちょうの中村なかむら捜査そうさ係かかり長ちょうでしたが、小林こばやし少年しょうねんは中村なかむら警部けいぶとは、したしいあいだがらなので、警部けいぶにあって、少年しょうねん探偵たんてい団だんに、正一しょういち君くんとミヨ子こちゃんの見みはりをやらせてくれとたのみました。

「そうか。野呂のろ君くんと団長だんちょうの子こどもと仲なかよしなのか。それなら、昼間ひるまとよいのうちだけ、きみたちに見みはりをたのもう。警察けいさつでも見みはっているけれども、おとなでは目めにつくからね。きみたちのような少年しょうねん諸君しょくんのほうが、あいてにさとられなくていい。それに、きみの腕うでまえは、わたしもよく知しっているからね。

しかし、夜よなかはだめだよ。まあせいぜい、夜よるの八はち時じごろまでだね。そのあとは、わたしの部下ぶかにかわらせる。きみの団員だんいんは小学しょうがく五ご、六ろく年ねんから、中学ちゅうがく一いち、二に年ねんの子こどもだ。そんな子こどもに、夜よふかしをさせちゃ、おとうさんたちにしかられるよ。

それから、わたしの部下ぶかたちが、いつも近ちかくにいるからね。もし、あやしいやつをみつけたら、よびこの笛ふえをふくんだよ。子こどものくせに、怪物かいぶつに手てむかったりしたら、ひどいめにあうかもしれないからね。いいかい? わかったね。」

中村なかむら警部けいぶは小林こばやし少年しょうねんに、くどくどと、いいきかせるのでした。

小林こばやし君くんも、ひごろ明智あけち先生せんせいから、いわれているので、そのことは、よくこころえていました。大おおぜいの団員だんいんの中なかから、からだが大おおきくて力ちからの強つよい少年しょうねんで、おとうさんや、おかあさんが、ゆるしてくださるものだけを、六ろく人にんえらび出だし、小林こばやし君くんが隊長たいちょうになって見みはりをやることにしました。

骸骨がいこつの顔かおが、窓まどからのぞいた日ひのよくじつです。小林こばやし少年しょうねんと六ろく人にんの団員だんいんは、学校がっこうから帰かえると、せいぞろいをして、正一しょういち君くんとミヨ子こちゃんのバスのまわりに集あつまりました。

みんな変装へんそうをしています。浮浪ふろう少年しょうねんのようなきたない服ふくを着きて、顔かおも黒くろくよごしています。明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょには、そういう変装へんそう用ようのきたない服ふくが、たくさんそなえてあるので、小林こばやし君くんが、それを持もちだして、みんなに着きかえさせたのです。

バスのおいてある原はらっぱには、いちめんに草くさがはえ、小ちいさな木きもありますし、バスがたくさんならんでいるのですから、かくれるところは、いくらでもあります。

少年しょうねん団だん員いんのあるものは、小ちいさな木きのかげに、あるものは、バスの車体しゃたいの下したに、あるものは、長ながくのびた草くさの中なかに、腹はらばいになり、また、あるものは、バスの後部こうぶの出入でいり口くちの木きの階段かいだんのかげに身みをかくすというふうに、はなればなれになって、四方しほうから正一しょういち君くんのバスを見みはっていました。

昼間ひるまはなにごともなく、やがて、夜よるになりました。少年しょうねんたちは、べんとうのかわりにポケットに入いれてきた、パンをかじって、じっと、かくればにがまんをしています。

あたりが、まっ暗くらになってきました。見みあげると、空そらに星ほしがキラキラかがやいています。むこうの大だいテントの中なかには、あかあかと電灯でんとうがついて、バンドの音おとが、はなやかに聞きこえてきます。まだサーカスはおわらないのです。やがて、最後さいごのよびものの空中くうちゅう曲芸きょくげいが、はじまるところでしょう。

浮浪ふろう児じに変装へんそうした小林こばやし少年しょうねんは、正一しょういち君くんのバスの出入でいり口くちの木きの階段かいだんのかげに、身みをかくして、ゆだんなく、あたりを見みまわしていました。バスの中なかには、正一しょういち君くんとミヨ子こちゃんが、机つくえがわりのだいで、本ほんを読よんでいるのです。

しばらくすると、むこうの大だいテントの中なかの電灯でんとうが、だんだん暗くらくなっていきました。サーカスがおわったのです。見物けんぶつたちの帰かえっていく足音あしおとや、話はなし声ごえが、ざわざわと聞きこえてきます。

それからまた、しばらくすると、サーカス団だんの人ひとたちが、それぞれのバスへ帰かえってくるのが、うす明あかりにながめられました。正一しょういち君くんたちのバスへも、おとうさんの笠原かさはらさんが帰かえってきました。笠原かさはらさんはむろん、少年しょうねん探偵たんてい団だんが、見みはりをしていることをよく知しっているので、バスの階段かいだんをのぼるとき、そこにかくれている小林こばやし少年しょうねんをみつけて声こえをかけました。

「ごくろうですね。うちの正一しょういちたちのために、きみたちがこんなにしてくれるのは、なんとお礼れいをいっていいか、わかりませんよ。しかし、もう夜よるもふけたから、こんやは帰かえってください。あとは警察けいさつのほうで、見みはりをしてくれますから。」

と、やさしくいうのです。小林こばやし君くんは、

「はい、もうじき帰かえります。」

と答こたえましたが、笠原かさはらさんが、バスの中なかにはいってドアをしめても、持もちばを動うごくようすがありません。中村なかむら警部けいぶは八はち時じごろに帰かえれといいましたが、少年しょうねんたちは八はち時じ半はんまでがんばろうと、もうしあわせていたのです。いまはまだ八はち時じですから、もう三十さんじゅう分ふん見みはりをつづけるつもりなのです。

あたりは、しいんと、しずまってきました。大だいテントの電灯でんとうが消きえたので、空そらの星ほしが、いっそうはっきり見みえます。そのへんは、にぎやかな商店しょうてん街がいから遠とおいので、八はち時じでも深夜しんやのようにしずかなのです。

じっとかくれていると、時ときのたつのがじつに長ながく感かんじられます。八はち時じ半はんまでのわずか三十さんじゅう分ふんが、二に、三さん時間じかんに思おもわれるのです。

しかし、やっと、腕うでの夜光やこう時計とけいが八はち時じ半はんになりました。そこで、小林こばやし君くんは、みんなを集あつめて帰かえろうかと、考かんがえていますと、そのとき……、バスの中なかから、キャーッというひめいが聞きこえて、いきなりバスのドアがあき、二ふたつの小ちいさいかげが、木きの階段かいだんをころがり落おちてきました。正一しょういち君くんとミヨ子こちゃんです。

小林こばやし君くんは、とっさに立たちあがり、ふたりをだきとめるようにして、どうしたのだと、たずねますと、正一しょういち君くんは、

「あいつがバスの中なかにいる。骸骨がいこつが、ぼくらにつかみかかってきた。早はやく逃にげなけりゃあ……。」

と、声こえもたえだえにいうのでした。ああ、これはいったい、どうしたことでしょう。だれもバスの中なかへ、はいったものはありません。それなのに骸骨がいこつ男おとこがあらわれたという正一しょういち君くんたちは、夢ゆめでも見みたのでしょうか。

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