← Library‹ 妖人ゴング 白いライオン

チンピラについていってみますと、さいしょはいってきたときに通かよった、あき地ちのまん中なかにある白しろいライオンのまわりに、三さん人にんのチンピラ隊員たいいんが、集あつまっていました。

「ここだよ。このライオンの中なかに、だれかいるらしいんだよ。ほら、聞きいてごらん。」

チンピラのことばに、耳みみをすましますと、石膏せっこうのライオンの中なかから、コツコツと、みょうな音おとが聞きこえてきます。だれかがくつで、ライオンのからだの内うちがわを、けりつづけているような音おとです。

野上のかみ君くんは懐中かいちゅう電灯でんとうをつけて、四角しかくい石膏せっこうの台だいと、ライオンのからだとのすきまをしらべながら、グルッと、ひとまわりしてみました。

すると、すこし、すきまの広ひろいところがありましたので、そこに口くちをつけるようにして、

「だれだ? この中なかにいるのはだれだ? 俊一しゅんいち君くんじゃないのか?」

と呼よびかけました。

「ううん……。」

中なかから、かすかに人間にんげんのうめき声ごえがもれてきます。俊一しゅんいち君くんは、さるぐつわをはめられていました。ですから、ものがいえないのでしょう。ただ、うなるほかはないのでしょう。

「よしっ、みんなで力ちからをあわせて、このライオンのからだのこちらがわを、持もちあげてみよう。」

チンピラ隊員たいいんが、ぜんぶ野上のかみ君くんのそばに集あつまってきました。そして、台だいとライオンとのすきまに、手てをかけて、一いち、二、三にさんのかけ声ごえで、力ちからまかせに持もちあげました。

すると、うすい石膏せっこうとみえて、どうにか持もちあがるのです。ライオンのからだが横よこにかたむいて、二十にじゅうセンチほどのすきまができました。

そのすきまから、懐中かいちゅう電灯でんとうを照てらしてみますと、中なかにひとりの少年しょうねんがころがっていました。さるぐつわをはめられ、手足てあしをしばられています。たしかに、花崎はなさき俊一しゅんいち君くんです。

チンピラのひとりが、どこからか、てごろな棒ぼうぎれを持もってきて、持もちあげたすきまの、つっかい棒ぼうにしました。しかし、それでは、まだせまくて、俊一しゅんいち君くんを、外そとへひきだすことができません。

「もうすこし、長ながい棒ぼうがいいよ。」

だれかがいいますと、またべつのチンピラが長ながい棒ぼうを拾ひろってきました。じつに、すばしっこいものです。

みんなが力ちからをあわせて、うんとこしょと、高たかく持もちあげておいて、その長ながい棒ぼうをささえにしました。そして、そのすきまから、やっとのことで、俊一しゅんいち君くんをひっぱりだすことができたのです。

みんなで、俊一しゅんいち君くんの手足てあしの縄なわをとき、さるぐつわをはずしました。

「俊一しゅんいち君くん、ぼくだよ。野上のがみだよ。ここにいるのは、少年しょうねん探偵たんてい団だんのチンピラ別働べつどう隊たいの子こどもたちだ。だいじょうぶかい? けがはしなかったかい?」

「うん、だいじょうぶだよ。きみたちみんなで、助たすけてくれたんだね。ありがとう。」

縄なわをとかれた俊一しゅんいち君くんは、起おきあがって、みんなにお礼れいをいうのでした。

「あっ、いいことがある。ちょっと、そのつっかい棒ぼうをとらないで、待まっててくれよ。」

チンピラのひとりが、そういったかと思おもうと、野上のかみ君くんの懐中かいちゅう電灯でんとうをひったくるようにして、どこかへ、かけだしていきました。

野上のかみ君くんは、俊一しゅんいち少年しょうねんに、悪者わるものの自動じどう車しゃを追跡ついせきしたこと、チンピラ隊たいのひとりが白しろいライオンに気きづいて、みんなで助たすけだしたことなどを話はなしてきかせました。

やがてさっきのチンピラが、なにか大おおきなものを、こわきにかかえて帰かえってきました。野上のかみ君くんが懐中かいちゅう電灯でんとうをうけとって、照てらしてみますと、それは学生がくせい服ふくをきた少年しょうねんでした。あの小しょう道具どうぐ部屋へやにあった少年しょうねん人形にんぎょうでした。

「こんなもの持もってきて、どうするつもりだい。」

「わからないのかい? 頭あたまがわるいなあ。俊一しゅんいちさんのかわりに、この人形にんぎょうを、ライオンの中なかにいれておくのさ。やっぱり、手足てあしをしばって、さるぐつわをはめておくほうがいいや。そうすれば、こんど、悪者わるものがのぞきにきたとき、ほんとの俊一しゅんいちさんだと思おもって安心あんしんするよ。でも、よくみると、人形にんぎょうなので、おったまげるというわけさ。ウフフフフ……、なんと、うまいかんがえじゃないか。ねえ!」

このチンピラのとんちに、みんな、ウフ、ウフ、笑わらいだしてしまいました。そして、人形にんぎょうの手足てあしをしばり、さるぐつわをはめて、ライオンのからだの中なかに、おしこむのでした。

「ほらね、そっくりだろう。さるぐつわで口くちがかくれてるから、ちょっと、人形にんぎょうとは気きがつかないよ。悪者わるものが、おったまげる顔かおを見みてやりてえな。」

それから、つっかい棒ぼうをはずして、ライオンをもとのとおりにすると、みんなは、俊一しゅんいち君くんをかこむようにして、撮影さつえい所しょの外そとにでました。もうあたりはまっ暗くらです。そのまっ暗くらな中なかからヌーッと、かげぼうしのようなものが、あらわれました。

「みんな、うまくやったね。子こどもを、とりもどしたのかい?」

「だれだっ?」

野上のかみ君くんが、俊一しゅんいち君くんを、うしろにかばって、どなりつけました。

「おれだよ。おまえたちを自動じどう車しゃに乗のせてやった運転うんてん手しゅだよ。」

「ああ、そうか、だれかと思おもって、びっくりした。俊一しゅんいち君くんは、石膏せっこうのライオンの中なかにいれられていたんだよ。それを、ぼくたちが助たすけだしたのさ。」

「そりゃ、よかったな。さあ、もう一いち度ど、おれの自動じどう車しゃに乗のりな。どこへでも送おくってやるよ。」

こうして、花崎はなさき俊一しゅんいち君くんは、ぶじに家いえにもどることができたのです。しかし、それで、この事件じけんがおしまいになるはずはありません。俊一しゅんいち少年しょうねんのゆくてには、まだまだ、恐おそろしいできごとが待まちかまえているのです。

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