← Library‹ 妖人ゴング 二挺のピストル

そして、老人ろうじんは、にこにこ笑わらいながら、こんなことをいいました。

「わしは、きみが、いまくるか、いまくるかと、まい日にち、待まちかまえていたのですよ。奥おくのかやの中なかに寝ねているきょうだいを、きみが、つれ出だしにくることが、ちゃんと、わかっていたのでね……。」

すると、ごましお頭あたまのいなかじいさんが、みょうな声こえをたてて笑わらいました。

「それじゃ、あんたは、わしがだれだか、知しっているのかね……。」

「むろん、知しっているよ。……きみは、ゴングという怪物かいぶつだっ!」

ふたりは、縁えんがわから、すっくと立たちあがって、にらみあいました。

「うん、そのとおり。さすがは、名めい探偵たんていの明智あけち君くんだ。よろしい。それで、どうしようというんだね。」

いなかじいさんが、とつぜん、わかわかしい声こえにかわりました。

しらひげの老人ろうじんは、明智あけち小五郎こごろうの変装へんそう姿すがただったのです。こちらも、にわかに、わかわかしい声こえになって、

「こうするのだっ!」

と叫さけびながら、相手あいてにとびかかっていきました。そして、

「マユミさん、俊一しゅんいち君くん、そこにあるほそびきを、持もってきなさい。こいつを、しばりあげてしまうのだっ。」

ああ、かやの中なかに寝ねていたきょうだいは、花崎はなさき検事けんじのむすめのマユミさんと、その弟おとうとの俊一しゅんいち君くんだったのです。

ふたりとも、いなかものに変装へんそうして、こんな山やまの中なかにかくれていたのです。

明智あけち探偵たんていの変装へんそうしたしらひげの老人ろうじんの声こえを聞きくと、ふたりとも寝ねまきのまま、かやの中なかから、とび出だしてきました。マユミさんは、長ながいほそびきを持もっています。

「ワハハハハハ……。」

ゴングの変装へんそうしたいなかじいさんが、恐おそろしい笑わらい声ごえをたてながら、パッと、明智あけちの手てをすりぬけて、庭にわのまん中なかに立たちはだかりました。

「やっぱりそうだったな。そのふたりは、マユミと俊一しゅんいちだな。こんなところへかくしたつもりでも、おれのほうでは、なにもかも見みとおしだ。明智あけち先生せんせい、きみも、ぞんがい知恵ちえのない男おとこだねえ。」

「ウフフフフ……、知恵ちえがあるかないか、いまにわかるよ。きみは、たったひとりで乗のりこんできた。こっちは三さん人にんだよ。三さん対たい一いちでは、まず、きみの負まけだねえ。」

明智あけちの老人ろうじんは、そういって、ゴングのじいさんに、とびかかろうとしました。

するとゴングは、右手みぎてを内うちぶところにいれて、なにか、もぞもぞやっていましたが、その手てをパッと出だしたときには、黒くろい小型こがたピストルが、にぎられていたではありませんか。

「ハハハハハ……、これがおれの奥おくの手てだよ。ピストルはかならず二に挺ちょう用意よういしているのだ。ひとつがだめになっても、もうひとつというわけだよ。」

たじたじとなった明智あけちの顔かおを見みて、ゴングは、とくいらしく笑わらいつづけていましたが、やがて、ピストルをマユミさんと俊一しゅんいち君くんのほうにふりむけました。

「きみたちふたりは、そのほそびきで、明智あけち先生せんせいをしばるんだ。……明智あけち君くん、縁えんがわに腰こしかけて、両手りょうてをうしろにまわしなさい。そう、そう、そうすれば、しばりやすくなる。さあ、子こどもたち、明智あけち先生せんせいのからだを、ほそびきで、ぐるぐる巻まきにするんだ。はやくしろっ! でないと、このピストルを、ぶっぱなすぞっ。」

ああ、明智あけちともあろうものが、どうして、もう一ひとつのピストルに気きがつかなかったのでしょう。名めい探偵たんていにしては、たいへんな手てぬかりではありませんか。いったい、マユミさんと俊一しゅんいち君くんの運命うんめいは、どうなることでしょうか。

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