← Library‹ 魔法人形 黄金のトラ

「ワハハハハ……。ここまでおいて、ほら、ここだよ。ワハハハハハ……。だが、用心ようじんするがいいぜ。この家いえには、いろんなしかけがあるんだからね。恐おそろしい番人ばんにんがかってあるんだからね。ワハハハ……。ほら、ここだよ、ここだよ。」

西洋せいよう悪魔あくまは、じぶんのいるところをおしえるように、パンパンと、手てをたたきました。そして、その音おとが、だんだんむこうのほうへ遠とおざかっていくのです。

あいつはいま、「番人ばんにんがかってある。」といいました。「かってある。」というからには、それは人間にんげんでなく、なにか恐おそろしい動物どうぶつなのかもしれません。この地底ちていの暗くらやみには、ゴリラや大おおトカゲや大おおワシのほかに、まだ動物どうぶつがかくれているのでしょうか。

警官けいかんたちは、てんでに、懐中かいちゅう電灯でんとうを照てらしながら、手ての音おとのするほうへと、つきすすんでいきました。

ジャングルの大おおきな木きのみきのあいだをとおりすぎると、むこうに、まっ黒くろなほら穴あなの入口いりぐちがあります。そこへ西洋せいよう悪魔あくまがかけこんでいくのが、懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりで、チラッと見みえました。

「あっ、あすこにほら穴あながある。いま、あいつが逃にげこんだぞ。みんなあの穴あなへとびこむんだ!」

中村なかむら警部けいぶが、大おおきな声こえで命令めいれいしました。ふたりの勇敢ゆうかんな警官けいかんが、その穴あなへかけこんでいきます。

ふたつ角かくをまがると、懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりのなかに、西洋せいよう悪魔あくまがこちらをむいて、たちはだかっているのが見みえました。そして、にやにや笑わらいながら、手てまねきをしているではありませんか。

西洋せいよう悪魔あくまの部下ぶかたちは、まだジャングルの中なかで、あとにのこった四よん人にんの警官けいかんや少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんたちと、とっ組くみあいをしていました。もう、手錠てじょうをはめられてしまったかもしれません。

ですから、ほら穴あなの中なかの西洋せいよう悪魔あくまは、ひとりぼっちです。それなのに、どうしてあんなにおちつきはらっているのでしょう。こちらはふたりの警官けいかんと、中村なかむら警部けいぶと、あとからかけこんできた小林こばやし少年しょうねんとポケット小僧こぞうの五ご人にんです。いくらなんでも、ひとりぼっちの西洋せいよう悪魔あくまが、かなうはずはありません。

あんまりあいてがおちついているので、うすきみわるくなってきました。警官けいかんたちも、そこに立たちどまったまま進すすもうとしないのです。

そのときです。どこからか、「ウオーッ……。」という恐おそろしいうなり声ごえが、ひびいてきました。人間にんげんではありません。動物どうぶつの声こえです。猛獣もうじゅうのうなり声ごえです。

みんなはギョッとして、声こえのするほうを見みました。懐中かいちゅう電灯でんとうを、そのほうにむけました。

右手みぎてにべつのほら穴あなの口くちがひらいています。そこが枝道えだみちになっていたのです。あのうなり声ごえは、どうやら、その枝道えだみちの奥おくからひびいてきたようです。

「あっ!」

まっさきに立たっていた警官けいかんが、思おもわず声こえをたてました。なにを見みたのでしょう? その枝道えだみちの穴あなの中なかに、なにかいるのでしょうか。

ピカッと光ひかりました。金色きんいろのものです。そして、それが、だんだん大おおきくなってきます。なにものかが、穴あなの中なかから、こちらへ出でてくるのです。

「ワハハハハ……。おい、用心ようじんしろ。番人ばんにんが出でてきたぞっ。いまに、きさまたち、くわれてしまうぞ。」

西洋せいよう悪魔あくまは、そんなおどかしをいって、おもしろそうに笑わらっています。

「あっ、トラだっ!」

小林こばやし君くんが、それに気きづいて叫さけびました。みんなは、たじたじとあとじさりをしました。

穴あなの中なかから、ヌーッとあらわれたのは、一いちぴきの大おおきなトラでした。しかも、そいつは金色きんいろに光ひかっているのです。黄金おうごんのトラです。

「ガア……ウオーッ……。」

黄金おうごんの巨大きょだいなトラは、穴あなの外そとへ全身ぜんしんをあらわして、まっかな口くちをガッと開ひらくと、また一声ひとこえうなりました。

「ほら、あのおまわりさんをやっつけろ。あっちがわにいるのは、みんな、おれの敵てきだ。わかったか。」

西洋せいよう悪魔あくまは、大声おおごえでトラをけしかけました。トラはそれにしたがって、ヌーッとこちらをむきました。二ふたつの目めが、らんらんとかがやいています。

「ウオーッ……。」

するどい牙きばをむきだして、もう一いち度どうなりました。そして、のそり、のそりと、こちらへ近ちかづいてきます。

警官けいかんたちも、小林こばやし君くんも、逃にげごしになっていました。ところが、ポケット小僧こぞうだけは、へいきです。にやにや笑わらいながら、もとの場所ばしょにつっ立たっているではありませんか。

「おい、ポケット小僧こぞう、あぶないよ。はやく逃にげろ!」

小林こばやし君くんが、心配しんぱいして声こえをかけますと、小僧こぞうは、こちらをふりむいて、いみありげに、また、にやりと笑わらいました。いったい、これはどうしたわけでしょう?

ところが、そのとき、みょうなことが起おこりました。

こちらに近ちかづいていたトラが、ふっと立たちどまったのです。そして、ゆっくりと、まわれ右みぎをしました。西洋せいよう悪魔あくまのほうに、むきなおったのです。

「おい、なにをしている。こっちじゃない。そこのおまわりを、やっつけるんだ。」

西洋せいよう悪魔あくまはびっくりして、トラをどなりつけました。

しかしトラは、ゆうゆうと西洋せいよう悪魔あくまのほうへ近ちかづいていきます。そして、一いちメートルほどに近ちかよったかと思おもうと、「ウオーッ……。」とひと声こえ、パッとおどりあがって、いきなり、西洋せいよう悪魔あくまにとびかかったではありませんか。

「ギャーッ……。」

西洋せいよう悪魔あくまが、恐おそろしい叫さけび声ごえをたててたおれました。

トラは、その上うえにのしかかって、いまにも、相手あいてののどへくいつきそうにしています。

「ワハハハハ……。」

どこからか、西洋せいよう悪魔あくまのとはちがった、ほがらかな笑わらい声ごえがひびいてきました。

みんながびっくりして、そのほうをながめます。

トラの出でてきたあのほら穴あなから、だれかの姿すがたがあらわれました。

「あっ、明智あけち先生せんせいっ!」

小林こばやし君くんが、うれしいおどろきの叫さけび声ごえをたてました。

それは名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうでした。いつのまに、こんなところへきていたのでしょう。いつもの黒くろい背広せびろをきた、すらっとした姿すがたが、そこに立たちはだかっていました。

「ワハハハハ……、赤堀あかほりさん、もういいから、皮かわをぬぎたまえ。」

明智あけち探偵たんていが、わけのわからないことをいいました。赤堀あかほりさんとは、いったいだれでしょう。どこにいるのでしょう。

すると、へんなことが起おこりました。西洋せいよう悪魔あくまの上うえにのしかかっていたトラが、あと足あしで立たちあがって、なにかもがもがやっていたかと思おもうと、おなかが、たてにスーッとさけて、中なかから、人間にんげんのしらが頭あたまが、ニュッと出でてきたではありませんか。

ああ、これはいったい、どうしたというのでしょう。

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%