← Library‹ 奇面城の秘密 暗号の光

「ワハハハハ……。」

四十よんじゅう面相めんそうも明智あけちに負まけないで笑わらいだしました。こういう悪人あくにんになると、そのくらいのことでは、なかなかへこたれないのです。

「ワハハハハハ……、明智あけち君くん、さすがは名めい探偵たんていだねえ。うまくやられたよ。

だが、レンブラントの絵えが、いつのまに、こんなつまらない風景ふうけい画がにかわったのか、おれはすこしも気きがつかなかった。わくからはがしたときには、たしかにあの名画めいがだったんだがなあ。明智あけち君くん、ひとつこの手品てじなの種たねあかしをしてくれないかね。」

それを聞きくと、明智あけちも笑わらいだして、

「きみは魔法まほうつかいのくせに、あれがわからなかったのかい? きみの背中せなかにピストルをあてているのは、おとなのオーバーを着きているけれども、じつは、ぼくの少年しょうねん助手じょしゅの小林こばやしなんだよ。この小林こばやしがその風景ふうけい画がのカンバスのまるめたのを持もって、神山かみやまさんの美術びじゅつ室しつにかくれていたのさ。本ほんだなのうしろにね。そして、きみが石膏せっこう像ぞうをやぶってあらわれ、レンブラントの絵えをわくからはがして、棒ぼうのようにまるめて、ちょっと床ゆかにおいたときに、本ほんだなのかげから、手てをのばしてすりかえてしまったのだよ。小林こばやし君くんも、なかなか手品てじなはうまいからね。ハハハハハ……。」

「ふうん、そうだったのか。これはいちばん、やられたね。きみのちんぴら助手じょしゅも、すみにおけないよ……。ところできみは、これから、おれをどうしようというのだね。」

「わかっているじゃないか。さっき警視けいし庁ちょうと無電むでんで話はなしたとおりだよ。日比谷ひびや公園こうえんの広ひろっぱに、大おおぜいの警官けいかんが待まちかまえている。そのなかへ、このヘリコプターを着陸ちゃくりくさせて、きみをひきわたすのさ。」

そんな話はなしをしているとき、四十よんじゅう面相めんそうは左ひだりの手てで、みょうなことをやっていました。

そっと、ポケットから小型こがたの懐中かいちゅう電灯でんとうをとりだし、それを、プラスチックの操縦そうじゅう席せきのよこにむけて、明智あけち探偵たんていたちに気きづかれないように、ピカッ、ピカッ、ピカッと、つけたり消けしたりしていたのです。

そのむこうには、四十よんじゅう面相めんそうの部下ぶかのヘリコプターが、こちらのヘリコプターとならんで飛とんでいます。もしかしたら、四十よんじゅう面相めんそうは、そうしてみかたのヘリコプターへ、懐中かいちゅう電灯でんとうの暗号あんごう通信つうしんをしていたのではないでしょうか。

「ワハハハ……、こうなると、四十よんじゅう面相めんそうも、あわれなもんだね。また刑務けいむ所しょへくらいこむのか。だが、明智あけち君くん、おれはやっぱり魔法まほうつかいなんだぜ。きみのほうが手品てじなをつかえば、おれのほうは魔術まじゅつをつかうのさ。こうして、つかまったように見みえていても、ほんとうは、つかまってやしないんだぜ。ウフフフフ、まあ、いまにわかるよ。」

四十よんじゅう面相めんそうは負まけおしみのようなことを、くどくどとしゃべっています。懐中かいちゅう電灯でんとうの通信つうしんをごまかすためかもしれません。

まもなく、いままでならんで飛とんでいた、むこうのヘリコプターが、だんだん遠とおざかっていき、やがて、うしろのほうへ飛とびさってしまいました。

それからしばらくすると、こちらのヘリコプターは、日比谷ひびや公園こうえんの上うえに近ちかづいていました。

広ひろっぱには、高たかいはしらの上うえに照明しょうめい灯とうがつけられ、その光ひかりのなかに、十じゅう数すう名めいの制服せいふくのおまわりさんが、大おおきな円えんをえがいて立たちならんでいました。

そのうしろに、むらがっているせびろ服ふくの人ひとたちは、きっと新聞しんぶん記者きしゃなのでしょう。写真しゃしん機きをさげている人ひともまじっています。警視けいし庁ちょうづめの記者きしゃたちが、四十よんじゅう面相めんそうがつかまったときいて、おまわりさんのあとから、かけつけてきたのでしょう。

明智あけちの操縦そうじゅうするヘリコプターは、その広ひろっぱのま上うえまでくると、しずかに下したへおりはじめました。地面じめんに近ちかづくにしたがって、広ひろっぱのようすがはっきり見みえてきました。

むらがっているのは新聞しんぶん記者きしゃばかりではないようです。もう十じゅう二に時じをすぎた夜よふけですが、どこからともなく、やじうまが集あつまってきて、そのかずが、だんだんふえてくるのでした。

おまわりさんは、ヘリコプター着陸ちゃくりくのための、広ひろい場所ばしょをあけておかなければなりませんので、まんなかへ出でてこようとする人ひとたちを、とめるのにやっきとなっているようです。なかなかヘリコプターを着陸ちゃくりくさせることができません。広ひろっぱの上空じょうくうで五ご分ふんほどもてまどってしまいました。

やがて、明智あけち探偵たんていは、ヘリコプターを、ゆっくりと下降かこうさせました。地面じめんに近ちかづくと、あらしのようなプロペラの風かぜが吹ふきまくり、おそろしい砂すなぼこりがたちます。むらがっている人々ひとびとは、目めをおさえて、広ひろっぱのすみのほうへ逃にげだしました。

それで、やっと地面じめんがひろくなったので、明智あけちはヘリコプターを着陸ちゃくりくさせることができましたが、すると、逃にげだしていたやじうまが、新聞しんぶん記者きしゃたちといっしょに、ドッとおしよせてきて、たちまち操縦そうじゅう席せきのまわりは、黒山くろやまの人ひとだかりになってしまいました。

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%