← Library‹ 夜光人間 幽霊怪人

そのベレー帽ぼうの男おとこは、近ちかくにすんでいる榎本えのもとという洋画ようが家かでしたが、表通おもてどおりを歩あるいていますと、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの窓まどから、青白あおじろく光ひかるひとだまのようなものが、スウッと飛とびだして、屋根やねのほうへのぼっていくのに気きづいたのです。

その表通おもてどおりには、夜よふけでもちらほらと人通ひとどおりがありましたが、だれも上うえのほうを見みていなかったので、気きがつかなかったのです。ただ、画家がかだけが、それを見みたのです。

はじめは、ほんとうのひとだまかと思おもいましたが、スウッと、空そらへのぼっていくのをよく見みますと、青白あおじろく光ひかったまるいものに、まっ赤かな大おおきな目めが、かがやいていますし、耳みみまでさけた口くちが、火ひのようにもえているのがわかりました。

画家がかの榎本えのもとさんは、夜光やこう人間にんげんのことを新聞しんぶんで読よんでいましたので、この光ひかる首くびは夜光やこう人間にんげんにちがいないと思おもい、いそいで、うちの中なかへかけこんで、そのことを知しらせたのです。

そこで、おまわりさんたちは、すぐに表ひょうに出でて、屋根やねを見みあげましたが、もうそのときには、光ひかる首くびはどこにも見みえませんでした。

夜光やこう人間にんげんは幽霊ゆうれいのように、じゆうじざいに飛とびまわるやつですが、やっぱり人間にんげんにはちがいないのですから、なにか、しかけがなくては、空そらへのぼれるわけがありません。

きっと、なかまのやつが、屋根やねの上うえにかくれていたのです。そして、ほそくて丈夫じょうぶなひもを、屋根やねから明智あけち事務じむ所しょの窓まどのそとへたらしていたのです。

光ひかる首くびばかりを見みせた夜光やこう怪人かいじんは、そのひもにつかまって、窓まどのそとへ出でたのでしょう。それを、なかまのやつが、屋根やねの上うえへ、ずるずると引ひきあげ、そのまま、ふたりは、屋根やねづたいに、どこかへ、逃にげてしまったのにちがいありません。

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