← Library‹ 夜光人間 あらわれた名探偵

そのときあたりが、パッと、まひるのように明あかるくなりました。電灯でんとうがついたのです。

その光ひかりで、もういちど部屋へやの中なかをしらべてみましたが、どこにも、あやしいところはありません。明智あけち探偵たんていと四十よんじゅう面相めんそうと、それから夜光やこう怪人かいじんの三さん人にんは、すこしのすきまもない部屋へやの中なかから、完全かんぜんに消きえうせたことが、はっきりとわかりました。

しばらくすると、廊下ろうかのほうから、

「アッ、明智あけち先生せんせい!」

という声こえが聞きこえ、警官けいかんたちのざわめきがおこりました。

その声こえに、中村なかむら警部けいぶたちが廊下ろうかへとびだしてみますと……。

ごらんなさい、むこうから名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうが、ゆうゆうと歩あるいてくるではありませんか。

警官けいかんたちが、左右さゆうに道みちをひらいたなかを、明智あけち探偵たんていは、にこにこしながら、こちらへやってきました。

「おお、明智あけち君くん、きみは、いったいどこへ行いっていたのだ。どうして、この部屋へやをぬけだすことができたんだ。」

中村なかむら警部けいぶが、明智あけちをでむかえながら、ふしぎそうにたずねました。

「じつに、恐おそろしい奇術きじゅつだ。四十よんじゅう面相めんそうでなければ、できないことだ。」

明智あけち探偵たんていは、感心かんしんしたようにつぶやくのでした。

「エッ、四十よんじゅう面相めんそうだって?」

警部けいぶが、びっくりして聞ききかえします。

「ああ、きみにはまだ、いっていなかったね。ぼくに化ばけて、白玉はくぎょくをぬすみだしたやつは、じつは怪人かいじん四十よんじゅう面相めんそうなのだ。四十よんじゅう面相めんそうでなくては、あんなにうまく化ばけられるはずはない。」

「エッ、それじゃあ、こんども四十よんじゅう面相めんそうのしわざだったのか。ちくしょう、また世間せけんをさわがせる気きだなッ。それで、きみは、あいつをつかまえたのか。」

「いや、残念ざんねんながら逃にげられてしまった。あいつは奥おくの手てがあるといったが、まさか、こんな大おおじかけな奥おくの手てとは、夢ゆめにも思おもわなかったのでね。」

「じゃあ、逃にげたんだな。どこへ逃にげたんだ。すぐに、追おっかけなけりゃあ。」

「いや、もう追おっかけても、まにあわない。それに、ぼくのほうにも、もうひとつ奥おくの手てがあるんだ。そこから知しらせがあるまでは、さわいでもしかたがない。それよりも、ぼくたちが、どうしてこの部屋へやから消きえたのか、その秘密ひみつをお目めにかけよう。」

明智あけちはそういって、ひとりで部屋へやの中なかへはいると、ドアをもとのとおりになおして、入口いりぐちをふさぐようにさしずをしました。

「いいかい、三さん分ふんたったら、このドアをあけるんだよ。それまでは、みんな廊下ろうかで待まっていてくれたまえ。いま四十よんじゅう面相めんそうの大だい秘密ひみつを、といてみせるからね。」

やぶれたドアをなおして、入口いりぐちがふさがれました。

中村なかむら警部けいぶは、なにがなんだかわけがわかりませんが、ともかく腕うで時計とけいとにらめっこをして、三さん分ふんがたつのを待まちました。

やっと三さん分ふんがすぎたので、待まちかねて、ドアをひらかせてみますと、アッ! これはどうでしょう。部屋へやの中なかは、また、からっぽになっていたではありませんか。

「明智あけち君くん、どこへかくれたのだ。おい、明智あけち君くん……。」

警部けいぶは、大おおきな声こえで、どなりました。すると、どこか遠とおくのほうからかすかに、明智あけちの声こえが聞きこえてきました。

「おうい、中村なかむら君くん、もういちど、ドアをしめるんだ。そしてまた、三さん分ぶんしたらあけてみたまえ。」

おなじことばが、二にどくりかえされました。それで、やっといみがわかったのです。それほど、かすかな声こえでした。

中村なかむら警部けいぶは部屋へやの壁かべを、こつこつ、たたきまわってしらべましたが、どこにも、あやしいところはありません。

明智あけち探偵たんていは、壁かべの中なかに、かくれているのではないことがわかりました。

そこで警部けいぶは、また廊下ろうかに出でて、ドアをしめ、腕うで時計とけいをにらみはじめました。

そして、三さん分ふんたったときに、もういちど、ドアをひらきました。

「ハハハハハ……。どうだい、秘密ひみつのたねがわかったかね。」

部屋へやの中なかで、明智あけち探偵たんていが笑わらっていたのです。

中村なかむら警部けいぶは「アッ。」とおどろいて、あいた口くちがふさがりません。

「わからないね。いったい、これはどうしたわけなんだい?」

「四十よんじゅう面相めんそうでなくてはできない大だい奇術きじゅつさ。そのいみはね……。」

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