← Library‹ 探偵少年 怪老人

少年しょうねんたちは、そこに立たちすくんだまま、身みうごきもできなくなりました。ダイヤのようなトラの目めににらみつけられて、からだがすくんでしまったのです。

トラは、まっかな口くちでかみつこうとしています。あの口くちが、もう十じゅうセンチさがったら、井上いのうえ君くんはやられてしまうでしょう。ああ、いまにも、いまにも!

「ワハハハハ……。」

そのとき、どこからか、おそろしい笑わらい声ごえがひびいてきました。それがどうくつにこだまして、いくにんもの人にんが、笑わらっているように聞きこえます。

いったい、だれが笑わらったのでしょう。少年しょうねんたちが笑わらうはずはありません。それに、いまの笑わらい声ごえは、太ふといおとなの声こえでした。

井上いのうえ君くんをおさえつけていた金色きんいろのトラが、パッと、あと足あしで立たちあがりました。

少年しょうねんたちは、いまにも、こちらへとびかかってくるのかと、もう、生いきたここちもありません。

「ワハハハハ……。」

またしても、おそろしい笑わらい声ごえです。そして、その声こえが消きえていったとき、じつに、ふしぎなことがおこりました。

金色きんいろのトラは、あと足あしで立たちあがって、まえ足あしで、じぶんの頭あたまを、かかえたかとおもうと、そのまえ足あしを、グッと上うえにあげました。すると、トラの首くびが胴体どうたいからちぎれて、スーッと空中くうちゅうに浮うきあがったのです。首くびがぬけてしまったのです。そして、その下したから人間にんげんのじいさんの顔かおが、ヌーッと、あらわれてきたではありませんか。

ひげののびた、きたないじいさんの顔かおです。トラのなかに、じいさんがはいっていたのです。

「あっ、さっきの山やま小屋こやのじいさんだっ!」

少年しょうねんのひとりが、さけびました。

「ワハハハハ……、おめえら、たまげただか。日本にっぽんの山やまにトラがいるわけはねえ。おらがトラにばけて、ちょっくら、おめえらを、おどかしてくれただあ。」

やっぱり、あの山やま小屋こやの猟師りょうしのじいさんでした。それにしても、じいさんは、こんなりっぱなトラの皮かわを、どこから手てにいれたのでしょう。また、いったい、なんのために、金かねのトラなんかにばけたのでしょう。

「エヘヘヘヘ……、いまに、びっくらすることが、おこるだぞ。」

じいさんは、うすきみわるく笑わらいました。

山やま小屋こやのじいさんは、かぶっていたトラの皮かわを、すっかり、ぬぎすててしまいました。少年しょうねんたちが、あっとおどろいていると、こんどは、もっとふしぎなことがおこったのです。

じいさんは、むこうをむいて、なにかやっていましたが、クルッと、こちらにむきかえったときには、まるでちがったおそろしい顔かおに、かわっていました。

「あっ、魔法まほう博士はかせだっ!」

少年しょうねん団だんのだれかが、さけびました。

それは、あのぶきみな西洋せいよう悪魔あくまのような、魔法まほう博士はかせの顔かおだったのです。

「アハハハ……、どうだ、おどろいたか。わしじゃよ。わしは山やま小屋こやのじいさんにばけて、きみたちのやってくるのを見みはっていた。道みちしるべのひもを切きったのも、板いたの橋はしをはずしたのも、このわしじゃ。

それから、この金色きんいろのトラの皮かわを、スッポリかぶって、べつの道みちからさきまわりをして、きみたちを待まっていたのじゃ。」

それをきくと、小林こばやし少年しょうねんが、ツカツカと前まえに進すすみました。

「それじゃ、このあいだの晩ばん、ぼくが自動じどう車しゃのトランクにしのびこんで、尾行びこうしたのを、ちゃんと知しっていたのですか。」

魔法まほう博士はかせは、にやにや笑わらってこたえました。

「きみが尾行びこうしたことは、むろん知しっていたよ。はじめから、きみたちを、ここへおびきよせるつもりだったからね。そして、きみたちのどきょうを、ためしてみたのさ。だから、この鍾乳しょうにゅう洞どうのなかを、いくらさがしても、黄金おうごんのトラは、みつからないよ。あれは、もっとべつのところに、かくしてあるのだ。

しかし、まだきみたちが、負まけたわけじゃない。はじめに約束やくそくしたとおり、二にヵ月かげつのあいだに、探さがしだせばよいのだから。まだ、たっぷり、よゆうがあるのだよ。

さあ、いよいよ、むずかしくなってきたね。きみたちは、もう、まったく手てがかりが、なくなってしまったのだ。だが、あんしんしたまえ。きみたちが、こんな冒険ぼうけんをやったほうびに、手てがかりをおしえるよ。

きみたち、黄金おうごんのトラは、どこにかくしてあるとおもうね。もちろん、このどうくつのなかじゃない。ハハハ……それはね、きみたちの目めの前まえにあったのだよ。いまに、見みせてあげるよ。」

魔法まほう博士はかせは、むこうのほら穴あなへはいっていって、長ながい板いたをもちだしてきました。岩いわのさけめにかけてあった、あの板いたです。それを、もとのとおりにかけて、みんなが渡わたりました。

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