← Library‹ 探偵少年 午後四時

その夕方ゆうがた、小林こばやし団長だんちょうと九きゅう人にんの少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんは、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょに帰かえって、明智あけち先生せんせいに、きょうのできごとを、くわしく報告ほうこくしました。すると、明智あけち探偵たんていは、

「うん、きみたちも、よくやったが、魔法まほう博士はかせも、なかなか、うまくかくしたね。こんどはまた、きみたちの番ばんか。うんと知恵ちえをしぼって、うまいかくしかたを考かんがえるんだね。」

そこで、黄金おうごんのトラは、ひとまず明智あけち先生せんせいにあずけておいて、少年しょうねんたちは、それぞれうちに帰かえり、晩ばんのごはんをたべてから、また探偵たんてい事務じむ所しょに集あつまり、秘密ひみつ会議かいぎをひらきました。

さいしょ集あつまった十じゅう五ご人にんの少年しょうねんのうち、鍾乳しょうにゅう洞どうへ行いかなかった五ご人にんには、電話でんわをかけてよび集あつめ、応接おうせつ室しつの大だいテーブルをかこんで、相談そうだんをはじめました。

厳重げんじゅうな秘密ひみつ会議かいぎです。十じゅう五ご人にんの少年しょうねんのうち、事務じむ所しょの前まえと、裏口うらぐちに、ふたりずつ、応接おうせつ室しつのドアの前まえと、窓まどの外そとの庭にわに、ひとりずつ、つごう六ろく人にんの団員だんいんが見みはりに立たち、のこる九きゅう人にんで、ヒソヒソと相談そうだんをしたのです。

これだけ用心ようじんをすれば、いかな魔法まほう博士はかせも、しのびこむことはできません。さて、少年しょうねんたちは、どんな名案めいあんを考かんがえついたのでしょうか。

九きゅう人にんの少年しょうねんが、長ながいあいだ相談そうだんして、黄金おうごんのトラのかくし場所ばしょをきめました。そして、九きゅう人にんのなかの今井いまい君くんと坂口さかぐち君くんのうちが、かくし場所ばしょにえらばれたのです。今井いまい君くんのうちはセトモノ屋やさん、坂口さかぐち君くんは金庫きんこ屋やさんです。今井いまい君くんのお店みせのたなの上うえには、セトモノの、いろいろな動物どうぶつのオモチャが、たくさんならんでいました。

黄金おうごんのトラを、えのぐでぬりつぶして、セトモノのトラに見みせかけ、そのオモチャの動物どうぶつたちのなかへ、まぜておくのです。魔法まほう博士はかせは、「目めの前まえに、ほうり出だしておくのが、いちばんうまい、かくしかただ。」といいました。少年しょうねんたちは、さっそく、それを、おうようしたのです。まさか、だいじな宝物たからものを店みせさきへならべておくなんて、だれも気きがつかないでしょう。

それから、今井いまい君くんのお店みせの動物どうぶつのオモチャのなかから、黄金おうごんのトラによくにた、セトモノのトラを持もってきて、それを、だいじそうにわたでくるんで、小ちいさい箱はこに入いれ、坂口さかぐち君くんのお店みせの金庫きんこのなかへかくしました。

坂口さかぐち君くんのお店みせには、たくさん金庫きんこがならんでいますが、地下ちか室しつに、いちばん大おおきい金庫きんこがおいてあるので、そのなかへ、かくすことにしたのです。

今井いまい君くんのお店みせの、ほんもののトラのほうは、だれも見みはりをしないで、ほうっておきましたが、坂口さかぐち君くんのお店みせの地下ちか室しつには、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんが、ふたりずつかわりあって、たえず見みはりばんをしました。夜よるも坂口さかぐち君くんと少年しょうねん店員てんいんとが、地下ちか室しつの金庫きんこのまえに長ながいすをならべて、そこで、やすむことにしました。にせもののトラを、なぜそんなにだいじにするのでしょう。

いうまでもなく、敵てきをあざむく計略けいりゃくです。そうして、さもだいじそうに見みはりをして、黄金おうごんのトラが、その金庫きんこにかくしてあると、魔法まほう博士はかせに思おもいこませるためです。

この計略けいりゃくは、まんまと成功せいこうしました。にせもののトラを金庫きんこにかくしてから二ふた日かめに、坂口さかぐち君くんのところへ、みょうな電話でんわがかかってきたのです。

少年しょうねん店員てんいんが、「学校がっこうの先生せんせいから電話でんわです。」といって、よびに来きましたので、坂口さかぐち君くんは、なにげなく電話でんわ口くちに出でますと、ぶきみなしわがれ声こえが聞きこえてきました。

「ずいぶん厳重げんじゅうに、けいかいしているね。ウフフフ、だが、わしはトラをもらいにいくよ。あすの午後ごご四し時じだ。きっと盗ぬすみだしてみせるから、せいぜい用心ようじんするがいい。」

坂口さかぐち少年しょうねんは、すぐにそのことを、電話でんわで小林こばやし団長だんちょうに報告ほうこくしました。そして、あくる日ひの午後ごごには、このまえ鍾乳しょうにゅう洞どうを探検たんけんした少年しょうねんのうちの八はち人にんが、坂口さかぐち君くんのうちの地下ちか室しつに集あつまり、金庫きんこの見みはりをすることになりました。小林こばやし団長だんちょうと、セトモノ屋やの今井いまい君くんだけは、どこへいったのか、姿すがたを見みせません。それには、なにか、わけがあったのでしょう。

八はち人にんの少年しょうねんのうちには、坂口さかぐち君くんはもちろん、力ちからのつよい井上いのうえ君くんや、あいきょうもののノロちゃんも、はいっていました。

地下ちか室しつには、坂口さかぐち君くんのお店みせで、いちばん大おおきな金庫きんこがすえてあります。そのなかに、セトモノのにせの黄金おうごんのトラをいれた箱はこが、おさめてあるのです。少年しょうねんたちは、そのまわりに、いすにかけて、ゆだんなく、あたりに目めをくばっていました。

午後ごご四し時じすこしまえになると、坂口さかぐち君くんのお店みせの支配しはい人にんが、心配しんぱいそうな顔かおで地下ちか室しつへおりてきて、坂口さかぐち君くんに声こえをかけました。

「ぼっちゃん、だいじょうぶですか。もうじき四し時じですよ。」

「うん、だいじょうぶだ。でも、ゆだんはできないよ。このまえは、魔法まほう博士はかせの弟子でしの少年しょうねんが、井上いのうえ君くんにばけて、やってきたんだからね。」

すると、井上いのうえ君くんがいいました。

「あのときは、オモチャの犬いぬのなかにかくして、うちの人ひとがだいていたので、ぼくのにせものに盗ぬすまれたが、こんどは金庫きんこのなかだから、だいいち、暗号あんごうを知しらなければ、とびらを開ひらくことができないよ。こんどこそ、だいじょうぶだよ。」

支配しはい人にんは、それでも、まだあんしんできないのか、

「わたしも、四よん時じすぎるまで、ここで番ばんをしますよ。」

そういって、金庫きんこの前まえのいすに、腰こしをおろしました。支配しはい人にんは金庫きんこのなかにあるのが、セトモノのトラということを知しらないのです。それは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんだけの秘密ひみつでした。

みんな、だまりこんで、ジロジロと、あたりを見みまわしていました。忍術にんじゅつつかいのような博士はかせのことですから、どこから、しのびこんでくるか、わからないからです。

地下ちか室しつは、おおぜいの少年しょうねんがいるのに、まるで、空あき部屋のように、シーンとしずまりかえっていました。いまにも、あやしいやつがはいってくるかと思おもうと、胸むねをドキドキさせているのですが、いつまでたっても、なにごともおこりません。

支配しはい人にんは腕うで時計とけいを見みながら、つぶやきました。

「四よん時じ五ご分ふんまえです。……二に分ふんまえ……、一いち分ふんまえ……、あっ、ちょうど四よん時じです!」

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