← Library‹ 探偵少年 意外なトリック

「あっ、四よん時じだ!」

坂口さかぐち君くんと、井上いのうえ君くんとが、じぶんの腕うで時計とけいを見みてさけびました。約束やくそくの四よん時じが来きたのです。しかし、ふしぎなことに、べつに、かわったこともおこりません。

「なあんだ、とうとう、魔法まほう博士はかせは、こなかったじゃないか。」

井上いのうえ君くんがいいますと、支配しはい人にんが、にやにやっと笑わらいました。

「魔法まほう博士はかせは、ほんとうに、こなかったのでしょうかね?」

「だって、だれも来きていないじゃないか。」

坂口さかぐち君くんが、にやにやしている支配しはい人にんの顔かおを見みて、おこったようにいいました。

「来きていますよ。」

支配しはい人にんが、みょうなことをいうのです。

「えっ、来きているって、どこに?」

「ここに来きていますよ。」

それをきくと、少年しょうねんたちは、ギョッとして支配しはい人にんの顔かおを見みつめました。

支配しはい人にんは、やっぱり、ニヤリニヤリ笑わらっています。なんだかその顔かおが、いつもの支配しはい人にんとはちがっているようで、うすきみのわるい気持きもちになってくるのです。

「きみは……きみは、いったい、だれだっ?」

坂口さかぐち君くんが、おびえた声こえをたてました。

「ハハハ……、魔法まほう博士はかせが変装へんそうの名人めいじんだということを、わすれたのかね?」

支配しはい人にんの顔かおが、みるみる別べつの人ひとにかわってくるように、思おもわれました。

「あっ、それじゃ、きみは……。」

「そうだよ。わしは魔法まほう博士はかせだよ。どうだ、おどろいたか。」

それをきくと、八はち人にんの少年しょうねんたちは、サッと、金庫きんこの前まえにかけよって、そこに立たちふさがりました。魔法まほう博士はかせにとびらを開ひらかせないためです。

「ワハハハ……、いまさら、金庫きんこをまもったって手ておくれだよ。黄金おうごんのトラは、とっくに魔法まほうの力ちからで、わしが盗ぬすみだした。うそだとおもうなら、きみたち、金庫きんこを開ひらいて、あらためてみるがいい。」

「だって、金庫きんこのとびらは、一いち度ども、あかなかったよ。ぼくたちが、ちゃんと見みていた。とびらを開ひらかないで、なかのものが取とりだせるはずはないっ。」

「ハハハ……、そこが魔法まほうだよ。ともかく、金庫きんこを開ひらいてみるがいい。」

そういわれると、しらべてみないわけにはいきません。坂口さかぐち君くんは暗号あんごうの文字もじばんを、まわしました。

坂口さかぐち少年しょうねんは、重おもい金庫きんこのとびらを力ちからまかせに開ひらきました。そして、なかから小箱こばこを取とりだして、あらためてみますと、わたでくるんだセトモノのトラは、もとのままにはいっているではありませんか。

「なあんだ、ちゃんと、ここにあるじゃないか。」

「ウフフフ……、それが黄金おうごんのトラかね。見みせてごらん。」

支配しはい人にんはそういったかとおもうと、いきなり、坂口さかぐち君くんの手てから、小箱こばこをひったくって、にせもののトラを取とりだし、パッと、床ゆかになげつけました。

ガチャンと音おとがして、セトモノのトラは、こなごなに、われてしまいました。

「ワハハハ……、これでも黄金おうごんのトラかね。まっかなにせものじゃないか。」

支配しはい人にんは、カラカラと笑わらいました。

「そうだよ。それは、にせものだよ。ほんものは、ちゃんと、べつのところにかくしてあるのさ。ハハハ……、魔法まほう博士はかせのくせに、なんにも知しらないんだね。」

坂口さかぐち少年しょうねんが、勝かちほこっていいますと、支配しはい人にんは、

「ウフフフ……、ところがね、じつをいうと、わしは魔法まほう博士はかせの弟子でしでね、ほんとうの博士はかせが、とっくに黄金おうごんのトラを、盗ぬすみだしているのさ。

うそだとおもうなら、セトモノ屋やの今井いまい君くんのうちへ、電話でんわをかけて聞きいてみるがいい。そこに、どんなことが、おこっているか。」

ああ、魔法まほう博士はかせは、なにもかも知しりぬいていたのです。少年しょうねんたちをゆだんさせるために、博士はかせの弟子でしが坂口さかぐち君くんの店みせの支配しはい人にんにばけて、こんなおしばいを、やって見みせたのです。

「きのう電話でんわをかけたのはね、魔法まほう博士はかせが、ここの金庫きんこをねらっているとおもわせて、きみたちをみんな、ここへ、ひきつけておくためだったのさ。そして、そのすきに、ほんとうの魔法まほう博士はかせが、今井いまい君くんの店みせから、黄金おうごんのトラを盗ぬすみだしてしまったのさ。ハハハハ……、きみたちが、いくら知恵ちえをしぼっても、博士はかせには、かないっこないのだよ。」

支配しはい人にんにばけた博士はかせの弟子でしは、カラカラと笑わらいながら、ゆうゆうと階段かいだんをのぼって、地下ちか室しつから出でていきました。

八はち人にんの少年しょうねんは、あまりのことに、そこに立たちすくんだまま、ぼんやりしていましたが、やがて、坂口さかぐち少年しょうねんが気きをとりなおして、一いち階かいにかけあがり、今井いまい君くんのお店みせへ電話でんわをかけますと、やっぱり黄金おうごんのトラは、盗ぬすまれてしまったことがわかりました。

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