← Library‹ 探偵少年 あぶない、こじき少年

魔法まほう博士はかせは、黒くろシャツ姿すがたのまま、ヘリコプターをおりて、二に階かいだての大おおきな西洋せいよう館かんの玄関げんかんにまわって、そこから、なかへはいっていきます。ここも、博士はかせのかくれがの、ひとつなのでしょう。玄関げんかんのホールへ、黒くろい服ふくをきた若わかい男おとこがとびだしてきて、博士はかせをむかえました。

「あ、おかえりなさい。で、うまくいきましたか?」

その男おとこは、博士はかせの部下ぶかのひとりでした。

「うん、子こどもたちも、なかなかやるよ。ずいぶん、はげしく追おっかけられた。予定よていのとおり隅田すみだ川かわを、例れいのランチで東京とうきょう湾わんに出でて、お台場だいばからヘリコプターだ。子こどもたちは、モーターボートでランチを追おっかけたが、まさか、潜水せんすい服ふくで海うみの底そこをわたり、お台場だいばへあがろうとは気きがつかないからね。ウフフフ……。

それからあとは、あんぜんだったよ。これだけ、のりものをかえて、まわり道みちをすれば、いくら尾行びこうの名人めいじんだって、つけられるものじゃないよ。」

話はなしながら、ふたりは階段かいだんをあがって、二に階かいの大おおきな書斎しょさいへ、はいっていきました。博士はかせはドアをしめて、ポケットから黄金おうごんのトラを取とりだし、

「ほら、これが、とりかえしてきた黄金おうごんのトラだ。これのかくし場所ばしょも、ちゃんと考かんがえてある。」

そのとき、庭にわのヘリコプターのなかに、ふしぎなことが、おこっていました。そうじゅう席せきの、うしろにおいてあったズックのつつみが、モゾモゾと、動うごきだしたのです。そして、なかから、こじきのようなきたない子こどもが、あらわれました。その子こどもは、ヘリコプターをおりると庭にわをよこぎって、西洋せいよう館かんのほうへ歩あるいていきます。

西洋せいよう館かんの裏うらがわから、窓まどを見みあげていますと、二に階かいの大おおきな部屋へやに、パッと電灯でんとうがつきました。博士はかせが、その部屋へやへ、はいったらしいのです。

こじき少年しょうねんは、あたりを見みまわして、考かんがえていましたが、ちょうど、その二に階かいの窓まどの外そとに、大おおきな木きが立たっているのに気きづくと、いきなり、その木きのみきにとびついて、上うえのほうへ登のぼっていきます。

じつに、木きのぼりのうまい子こどもです。まるでサルのようです。そして、二に階かいの窓まどの高たかさまで登のぼると、大おおきな枝えだをつたって、しげった葉はをかきわけ、じっと、窓まどのなかをのぞきました。

その部屋へやは、書斎しょさいらしく、四方しほうの壁かべが、ぜんぶ本ほんだなになっていて、何千なんぜんさつという、りっぱな本ほんがギッシリつまっています。そこで、魔法まほう博士はかせと、若わかい男おとこが、なにか話はなしているのです。

書斎しょさいのなかでは、博士はかせが本ほんだなから、一いちさつの厚あつい本ほんをぬきとって、若わかい男おとこに、話はなしかけました。

「どうだ。うまい考かんがえだろう。この本ほんは日本にっぽん大だい百科ひゃっか辞典じてんのトの部ぶだ。トラのことが書かいてあるトの部ぶだよ。この本ほんのなかへ、黄金おうごんのトラを、かくしておくのさ。」

それは、厚あつさ十じゅうセンチもある、おそろしく大おおきな本ほんでした。

博士はかせが、その本ほんをひらきますと、なかのページが、ちょうど黄金おうごんのトラのかたちに、ナイフで、くりぬいてありました。

博士はかせは、テーブルにのせておいた、黄金おうごんのトラをとって、ページを、くりぬいた穴あなのなかへ、スッポリとはめこんだのです。そして本ほんをとじると、外そとからは、すこしもわかりません。なんという、うまいかくし場所ばしょでしょう。

博士はかせはトラをかくした辞典じてんを、もとの本ほんだなへもどしました。そこには同おなじような表紙ひょうしの辞典じてんが、ズラッとならんでいて、どれがどれだか見みわけがつきません。大だい百科ひゃっか辞典じてんのトの部ぶということを知しらなければ、とても、さがしだせるものではないのです。

そのとき、庭にわのほうから、ただならぬ犬いぬのなき声ごえが聞きこえてきました。

こじき少年しょうねんは、木きの上うえから、二に階かいの書斎しょさいのできごとを、すっかり見みてしまいました。さて、おりようとして枝えだをつたっていますと、とつぜん、木きの根元ねもとで、「ウウウ……。」という、うなり声ごえがしました。見みると、一いちぴきの大おおきな犬いぬが、こちらを見みあげているのです。少年しょうねんは、すばやく、木きのみきをつたいおりて、逃にげだそうとしましたが、すると……待まちかまえていた猛犬もうけんは、おそろしい声こえでほえたてながら、少年しょうねんにとびかかってきました。

少年しょうねんは右みぎに左ひだりに身みをかわして、逃にげようとしましたが、とうとう、ズボンのおしりのところを、かみつかれてしまいました。猛犬もうけんは、そのまま、くいさがって、てこでもはなれないのです。それでも、少年しょうねんは、犬いぬをひきずって逃にげました。

しかし、ああ! だめです。人ひとの足あしおとが聞きこえてきました。犬いぬの声こえをきいて、うちのなかから、人ひとがとび出だしてきたのです。それも、ひとりではありません。二に―三さん人にんの足あしおとです。

「エス! よくつかまえた。……やい、きさまは、いったい、なにものだっ?」

バラバラッと、三さん人にんの人ひとかげが、ゆくてに立たちふさがりました。みんな強つよそうな男おとこです。

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