← Library‹ 探偵少年 厳重なろうや

こじき少年しょうねんは、三さん人にんの男おとこのために、とうとうとらえられて、西洋せいよう館かんの応接おうせつ室しつに待まちかまえていた魔法まほう博士はかせの前まえにひきたてられました。博士はかせはジロリと、少年しょうねんをにらみつけて、

「ウフフ……、うまくばけたな。おい、きみは小林こばやし君くんだろう!」

と、たちまち、見みやぶってしまいました。

「そうです。ぼく、しっぱいしました。あのイヌさえいなければ……。」

小林こばやし少年しょうねんは、ざんねんそうに、くちびるをかみました。

「だが、きみは、いったい、どうして、このうちを、探さがしあてたんだね。」

「ぼくはずっと、おじさんのあとに、くっついていたのです。あのランチにしのびこみ、おじさんが潜水せんすい服ふくをきると、ぼくも、あの箱はこのなかにあった、べつの潜水せんすい服ふくをきて、海うみにとびこんだのです。それから……おじさんが、お台場だいばにあがって、ゆだんをして、タバコをすっているひまに、ぼくはヘリコプターを見みつけ、さきまわりをして、ズックをかぶって、そうじゅう席せきのうしろに、かくれていたんです。」

それをきくと、魔法まほう博士はかせは、びっくりしてしまいました。

「うーん、さすがに小林こばやし君くんだね。そこまで、しゅうねんぶかく、ついてくるとは知しらなかった。

だがね、小林こばやし君くん、こうして、つかまってしまっては、やっぱりきみの負まけだよ。しかし、きみも、それほどの苦労くろうをしたんだから、これで勝負しょうぶをきめてしまうのは、気きのどくだね。どうだ、もうひとつ、腕うでだめしを、やってみるか。」

「腕うでだめしって、どんなことですか?」

「いまに、わかるよ。まあ、こっちへ来きたまえ。」

博士はかせは、小林こばやし君くんの手てを引ひっぱって部屋へやを出でると、廊下ろうかをいくつもまがって、おくまった部屋へやのドアを開ひらきました。

「ここはろうやだよ。わしのうちには、こういうろうやが、ちゃんとできているんだ。ここへは、なんにんも、おとなをとじこめたことがあるが、だれもぬけ出だすことができなかった。それほど、厳重げんじゅうにできているんだ。

きみをこのろうやへ、五いつ日間かかんとじこめておく。その五いつ日かのあいだに、黄金おうごんのトラを盗ぬすみだすことができたら、きみの勝かちだ。それができなかったら、きみの負まけだよ。どうだ、いくらきみでも、この難題なんだいは、とけないだろう。」

博士はかせは、そういって、ニヤリと笑わらいました。

いかにも、難題なんだいです。その部屋へやは、壁かべも床ゆかも、レンガでかためてありました。

てんじょうは、シックイで、ぬりかためてあります。いっぽうの壁かべの高たかいところに、たった一ひとつ小ちいさな窓まどがあるばかりで、その窓まどには、がんじょうな鉄てつごうしがはめてあります。入口いりぐちには、ふつうの倍ばいもある厚あついドアがついていて、とても、やぶることはできません。

「どうだ、やってみるかね。」

「ええ、ぼく、やってみます。五いつ日かのあいだに、黄金おうごんのトラを、盗ぬすみだせばいいのでしょう。」

「うん、そうだよ。だが、このろうやにとじこめられていて、あれが、盗ぬすみだせるかね。いくらきみがりこうでも、こればかりは、むずかしいだろうね。が、まあ、やってみるがいい。」

博士はかせはそのまま、外そとへ出でていきました。

むろん、ドアをしめて、カチンとかぎをかけてしまったのです。

てんじょうのすみに、小ちいさな電灯でんとうがついているので、まっ暗くらではありません。いっぽうの壁かべぎわに、小ちいさなベッドがおいてあります。小林こばやし君くんは、博士はかせがたちさると、いきなり、そのベッドの上うえによこになって、やがて、グッスリ寝ねこんでしまいました。なんという、だいたんな少年しょうねんでしょう。

目めがさめると、もう朝あさでした。小林こばやし君くんはベッドからおり、たったひとつの高たかい窓まどにとびつき、鉄てつのこうしにつかまって、外そとをながめました。窓まどのすぐ外そとに、高たかいコンクリートべいがそびえています。これでは、外そとを通とおる人ひとに、あいずをするために、窓まどから、なにかをなげても、とても、へいをこさせることはできません。

お昼ひるごろになると、そのへいの外そとから、かすかに、大おおぜいの子こどもの声こえが聞きこえてきました。外そとはひろっぱで、そこが、子こどもたちの遊あそび場所ばしょになっているらしいのです。しかし、ここから声こえをかけたところで、とても、とどきませんし、また、そんなことをすれば、たちまち博士はかせにさとられてしまいます。とても、ろうやをぬけ出だすみこみはありません。

三さん度どの食事しょくじは、ドアの下したのほうについている小ちいさな窓まどの戸とをひらいて、そこから、さしいれるようになっていました。博士はかせの部下ぶかが食事しょくじをはこび、ついでに、小林こばやし君くんのようすをうかがって、博士はかせに報告ほうこくするのです。三み日かめの夜よる、その部下ぶかが、博士はかせの前まえにきて、こんなことを、報告ほうこくしました。

「あの子こどもは、ネズミと遊あそんでいますよ。

ろうやの床ゆかのレンガにわれめがあって、そこからネズミが、はいってくるのです。あの子こどもは、そのネズミに、パンのたべのこしなんかをやって、手てなずけたらしいですね。ネズミのほうでもなれてしまって、あの子こどものひざまで、はいあがっているのですよ。」

「ふーん、よほど、たいくつしているらしいな。そのようすでは、牢ろうやぶりなんて、思おもいもよらないね。」

博士はかせは、安心あんしんしたように、つぶやくのでした。一日ついたち、二ふた日かと日ひがたっていきましたが、ろうやのなかの小林こばやし君くんは、なんにもしないで、毎日まいにちネズミと遊あそんでいるようすでした。

そして、とうとう、五ご日間にちかんがすぎさり、六むい日かめの朝あさとなりました。

魔法まほう博士はかせは、朝あさの食事しょくじをおわると、いそいでろうやにはいっていきました。

「おい、小林こばやし君くん、約束やくそくの五いつ日間かかんはすぎたよ。気きのどくだが、きみの負まけときまったね。」

すると、ベッドにこしかけていた小林こばやし君くんが、顔かおをあげて、にこにこしながらいうのです。

「え? ぼくの負まけですって? とんでもない。ぼくが勝かったのですよ。」

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