← Library‹ 探偵少年 消えた黄金のトラ

「うん、感心かんしん、感心かんしん。ノロちゃんは、おくびょうものかと思おもっていたが、なかなか勇気ゆうきがあるね。小林こばやし君くん、団長だんちょうのきみは、このもうしこみを、うけるかね。」

「明智あけち先生せんせいに相談そうだんしてから、きめます。」

「いや、それなら、心配しんぱいしないでいい。明智あけちさんには、ちゃんと、わしから話はなしておいた。明智あけちさんは知しっているのだ。

もし、きみたちがこまったときには、明智あけちさんに、知恵ちえをかりてもいいという約束やくそくもしてある。」

「そうですか、それなら、もうしこみをうけます。少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんは二十にじゅう三さん人にんおりますが、そのうち、うちで、ゆるしてくださるものだけが、試合しあいにさんかすることにします。じゃあ、この黄金おうごんのトラを、ノロちゃんとふたりで、持もって帰かえりますよ。」

二に少年しょうねんは、黄金おうごんのトラを持もって、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょに帰かえり、明智あけち先生せんせいに、そのことを話はなしますと、

「あれは雲井良太くもいりょうたという、お金持かねもちの変かわりものだ。けっして悪わるい人ひとではないから、知恵ちえくらべをやってみるがいい。」

と、おゆるしが出でましたので、すぐに電話でんわれんらくで団員だんいんたちに知しらせますと、その日ひは、十じゅう五ご人にんの団員だんいんが、集あつまってきました。

小林こばやし少年しょうねんと、ノロちゃんと、十じゅう五ご人にんの少年しょうねんは、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの応接おうせつ間かんに集あつまって、黄金おうごんのトラのかくし場所ばしょについて相談そうだんしました。すると、ひとりの少年しょうねんが、

「井上いのうえ君くんのうちがいいよ。井上いのうえ君くんのおとうさんは、もとボクシングの選手せんしゅだから、安心あんしんだし、それにほかのうちでは、おとうさんか、おかあさんが、ゆるしてくれないだろうからね。」

「うん、井上いのうえ君くんのおとうさんは、冒険ぼうけんずきだからね。それがいいよ。」

みんなが、さんせいしましたので、井上いのうえ君くんが、うちに帰かえって、おとうさんに、相談そうだんしますと、

「魔法まほう博士はかせと知恵ちえくらべとはおもしろい。よし、おとうさんも、てつだってやるぞ。」

と、だいさんせいでした。そこで、黄金おうごんのトラのかくし場所ばしょがきまりました。

小林こばやし団長だんちょうと井上いのうえ一郎いちろう少年しょうねんとが、黄金おうごんのトラを持もって、井上いのうえ君くんのうちへいき、井上いのうえ君くんのおとうさんと三さん人にんで、ヒソヒソと相談そうだんしました。

それから、夜よるになるのをまって、小林こばやし、井上いのうえの二に少年しょうねんはクワをかついで、ソッと井上いのうえ君くんのうちの庭にわに出でると、木きのしげった庭にわのすみを、六十ろくじゅうセンチメートルほどの深ふかさにほって、そこへ、なにかをうずめ、ていねいに土つちをかけました。

小林こばやし君くんと井上いのうえ一郎いちろう少年しょうねんは、庭にわの土つちのなかへ、黒くろいものをうずめてから、二に階かいの一郎いちろう君くんの勉強べんきょう部屋へやにとじこもって、なにかやっていましたが、しばらくすると、一郎いちろう君くんは、白しろい絹糸きぬいとの毛けをはやした大おおきなオモチャの白犬しろいぬを、だいじそうにかかえて、小林こばやし君くんといっしょに、二に階かいからおりてきました。これは、一郎いちろう君くんがまだ小ちいさかったころのオモチャです。

魔法まほう博士はかせのことだから、きっと、どこかで見みはっているだろうと思おもったので、黒くろい箱はこだけを、庭にわにうずめて見みせて、黄金おうごんのトラは、きれでこしらえた白犬しろいぬのなかへ、ぬいこんでしまったのです。

それからは、毎日まいにち、一郎いちろう君くんのおかあさんか、ねえさんなどが、たえまなく、この白犬しろいぬをだいていることにしました。学校がっこうから帰かえれば、むろん一郎いちろう君くんがだくのです。

すると、それから四よん日か目めの日曜にちよう日ひに、一郎いちろう君くんにあてて、みょうな手紙てがみがきました。

あさっての火曜かよう日ひの午後ごご四し時じに、例れいのものを、もらいにいく。かならず手てにいれてみせるから、じゅうぶん用心ようじんするがいい。

魔法まほう博士はかせ

それには、こんな気味きみのわるいもんくが、書かいてあったのです。

一郎いちろう君くんが、その手紙てがみをおとうさんに見みせますと、

「よし、わしがまもってやる。むかしのボクシングの弟子でしを、ふたりよびよせて、魔法まほう博士はかせがきたら、ひっとらえてやる。」

と、ふとい腕うでをさすって笑わらいました。一郎いちろう君くんは小林こばやし団長だんちょうにも、電話でんわでしらせました。すると、

「だいじょうぶだよ。ぼくにも考かんがえがあるから。」

というへんじでした。

さて、いよいよ火曜かよう日ひです。三さん時じになると、一郎いちろう君くんが学校がっこうから帰かえってきました。おとうさんは、応接おうせつ間かんで、オモチャの白犬しろいぬをだいて、がんばっていました。ボクサーの青年せいねんが、ドアの外そとと、庭にわに、ひとりずつ立たち番ばんをしています。井上いのうえさんは、白犬しろいぬを一郎いちろう君くんにわたすとき、ぬいめを、すこし開ひらいて、のぞいて見みましたが、黄金おうごんのトラはたしかに、はいっていました。

「だいじょうぶ、まだ盗ぬすまれてはいない。いまから四よん時じまで、なにごともなければ、一郎いちろう、おまえの勝かちだぞ。これほど、厳重げんじゅうに番ばんをしていれば、いくら魔法まほうつかいでも、どうすることもできないだろうよ。」

おとうさんは、そういってにこにこしていました。一郎いちろう君くんは白犬しろいぬを、グッとだきしめて、ゆだんなくあたりを見みまわします。

四よん時じまでは、なにもあやしいことはなかったのです。一郎いちろう君くんはオモチャの白犬しろいぬをだきしめたまま、すこしも手てからはなしません。おとうさんは、一いち度ど、手洗てあらいに立たちましたが、すぐ帰かえって、大おおきな目めをむいて、白犬しろいぬを見みつめています。ドアの外そとと、庭にわにいる、ふたりのボクサーも、ちゃんと、もちばについています。アリのはい入いるすきまもないのです。

応接おうせつ間かんのたなの上うえには、大おおきな置おけ時計とけいが、チクタクと秒びょうをきざんでいます。四よん時じ一いち分ふんまえです。

「あと一いち分間ふんかんですね。」

「うん、一いち分ふんたてば、こっちの勝かちだ。もうだいじょうぶだよ。」

そういいながらも、おとうさんも一郎いちろう君くんも、青あおい顔かおをしていました。その一いち分間ふんかんが、なんだか、おそろしいからです。

そのとき、チリリリリ……と、けたたましく、たくじょう電話でんわのベルがなりました。おとうさんが、受話じゅわ器きを耳みみにあてますと、気味きみのわるい、しわがれ声こえが聞きこえてきました。

「井上いのうえさんですか。一郎いちろう君くんのおとうさんですね。わしは魔法まほう博士はかせです。もう三十さんじゅう秒びょうで四よん時じですよ。四よん時じかっきりに、あれをもらいますよ。あと二十にじゅう秒びょうです。ウフフフ……そら、もう十じゅう秒びょうしかない……。」

置おけ時計とけいが、チン、チン、チン、チンと、うつくしい音おとで四よん時じをほうじました。おとうさんは、それをきくと、ほっとして、電話でんわのむこうの魔法まほう博士はかせに呼よびかけました。

「いま四し時じをうったのが、聞きこえましたか。どうやら、一郎いちろうのほうが勝かったようですね。あんたは、約束やくそくをまもらなかった。黄金おうごんのトラは、ちゃんとここにありますよ。」

「ワハハ……、こいつはおもしろい。わしが約束やくそくをまもらなかったといわれるのか? ワハハハ……。」

魔法まほう博士はかせの、とほうもない笑わらい声ごえが、ひびいてきました。

「なにがおかしいのです。黄金おうごんのトラは、ここにありますよ。きみは、盗ぬすみだせなかったじゃないか。ハハハ……。」

おとうさんも、負まけないで笑わらいました。

「なんだって? わしが盗ぬすめなかったというのか。あんた、なにか思おもいちがいをしてやしないのかね。もう一いち度ど、黄金おうごんのトラをしらべてごらん。」

そういわれると、なんだか心配しんぱいです。おとうさんは、一郎いちろう少年しょうねんの手てから白犬しろいぬをとって、ぬいめを開ひらいてみました。そして、ひと目めみると、あっと声せいをたてないではいられませんでした。黄金おうごんのトラは、かげもかたちも、なくなっていたのです。

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