← Library‹ 探偵少年 あっ、ひもが切れた

ノロちゃんをおどろかせた怪物かいぶつは、バタバタと、てんじょうを飛とびまわってから、サーッと、どこかへ、いってしまいました。

「なあんだ、あれ、コウモリだよ。怪物かいぶつじゃないよ。」

井上いのうえ君くんは、おかしそうに、いいました。

「ハハハ……、ノロちゃんの声こえのほうが、よっぽど、こわかったよ。コウモリは、なんにもしやしないよ。」

それから、また、おくへ、おくへと進すすんでいきますと、岩穴いわあなが、だんだんせまくなり、いきどまりになってしまいました。

「あらっ、これで、おしまいかしら。せまいんだなあ。」

「そうじゃないよ。ごらん、あそこに、岩いわのわれめの小ちいさい穴あながあるだろう。あそこから、はってはいるんだよ。

ぼくのにいさんが、そういってたよ。にいさんは、まえに、ここへ来きたことがあるんだ。」

水野みずのという少年しょうねんが、岩いわのわれめをゆびさして、いうのです。そこで、小林こばやし団長だんちょうが、さきにたって、みんな、よつんばいになって、その小ちいさな穴あなにはいっていきました。

「ワーッ、なんだか、ぼくの首くびへ落おちてきたよ。ヘビだよ。はやく、はやくとって……。」

さけんだのは、やっぱりノロちゃんでした。うしろにいた少年しょうねんが、いそいで、ノロちゃんの首くびをなでてみました。

「なあんだ、水みずじゃないか。上うえから水みずがしたたり落おちたんだよ。ノロちゃんの弱虫よわむし!」

「そうかあ。いやにつめたいと思おもったよ。」

ノロちゃんは、やみのなかで、ペロッとしたを出だしました。

よつんばいになって、七なな―八はちメートルも進すすむと、パッと、あたりが広ひろくなりました。もう、立たって歩あるけるのです。みんなが、広ひろい穴あなへ出でると、三みつの懐中かいちゅう電灯でんとうで、グルッと、てらしてみました。

「あっ、枝道えだみちだよ。ふたつにわかれている。どっちへ、いったらいいのだろう。」

「さきに、広ひろいほうへ、いってみよう。」

小林こばやし団長だんちょうが、進すすむ道みちをきめました。

その広ひろいほうの穴あなを、すこしいきますと、どこからか、ゴーッ、ゴーッという、ぶきみな音おとが聞きこえてくるではありませんか。みんな立たちどまって、「なんだろう?」「なんだろう?」と、ささやきかわしました。

「あっ、わかった。地底ちていの川かわだよ。ほら、そこに大おおきな岩いわのさけめがある。その下したのほうに、水みずがながれているんだよ。その水みずの音おとだよ。」

はば一いちメートル半はんもある、大おおきな岩いわのさけめが、どうくつをよこぎっていました。懐中かいちゅう電灯でんとうで、そのなかをてらしても、あまり深ふかいのでなにも見みえませんが、その底そこに水みずがながれているらしく、ゴーッ、ゴーッという音おとが聞きこえ、つめたい風かぜが吹ふきあがってきます。

みんなが、その深ふかい穴あなを、のぞいていますと、岩いわのさけめの下したのほうから、懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりのなかへ、なにか大おおきな鳥とりのようなものが、フワフワと浮うきあがってきました。あっとおもうまに、それが、どうくつのやみのなかへ消きえていくと、また、底そこのほうから、ネズミ色いろの大おおきなやつが、いくつも、いくつも、浮うきあがってくるのです。

「おどろくことはないよ。コウモリだよ。」

岩いわのさけめのなかに、たくさんのコウモリがすんでいたのです。それが、懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりにおどろいて、飛とびだしてきたのです。

「さあ、みんな、こんなものに、かまっていないで、もっとおくへ、進すすむんだ。」

小林こばやし団長だんちょうが、命令めいれいしました。

「だって、この岩いわのさけめは、とても、とびこせないよ。底そこが見みえないほど、深ふかいんだもの。」

「とびこさなくてもいいよ。よくごらん。ここに橋はしがかけてあるじゃないか。」

見みると、一いちまいの長ながい板いたが、岩いわのさけめに渡わたしてありました。少年しょうねんたちは、ひとりずつ、それを渡わたって、おくへ進すすみます。しばらくいくと、また、道みちがふたつにわかれていました。小林こばやし団長だんちょうは、右みぎがわの穴あなへ進すすむことにしました。

十じゅう人にんの少年しょうねんたちは、懐中かいちゅう電灯でんとうであたりをてらし、どこかに、黄金おうごんのトラがかくしてないかと、二十にじゅうの目めを光ひからせていましたが、まだなにも発見はっけんできません。

それから、たびたび、枝道えだみちにぶつかりました。小林こばやし団長だんちょうは、いつも、右みぎへ右みぎへと進すすんでいきます。おそろしい迷路めいろです。道みちしるべのひもがなかったら、とても、入口いりぐちへもどることはできません。

そのとき、うしろのほうで、「あっ。」という声こえがしたので、みんな、びっくりして、懐中かいちゅう電灯でんとうを、そのほうにむけました。すると、そこに井上いのうえ一郎いちろう君くんが、たおれていたではありませんか。

「だいじょうぶかい? けがはしなかった?」

「うん、だいじょうぶ。岩いわにつまずいたんだよ。」

感心かんしんなことに、井上いのうえ君くんはころんでも、あのひもの玉たまを、しっかりだきしめていました。

しばらく進すすみますと、また、うしろのほうから、

「あっ、しまったっ。」

という声こえが、聞きこえました。やっぱり井上いのうえ君くんです。

「どうしたの? また、ころんだのかい?」

「そうじゃないよ。たいへんなことを、しちゃった!」

「えっ、たいへんなことって?」

「さっき、ころんだとき、道みちしるべのひもが、切きれちゃったんだよ。」

「えっ、きみの持もってるひもが?」

「うん、ひっぱると、てごたえがなくて、ズルズルたぐりよせられるんだ。とちゅうで切きれたんだよ。ほら、こんなにみじかくなってるよ。」

ひもは、その切きれたところまで、すっかり、たぐりよせられていました。

みんなは、おどろいて、井上いのうえ君くんのまわりに集あつまりました。

「それじゃ、道みちしるべが、なくなってしまったんだね。」

「ぼくらは、もう帰かえれなくなったんだね。」

ノロちゃんは、ベソをかいています。ノロちゃんばかりではありません。みんな心配しんぱいで、胸むねがドキドキしてきました。

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%