← Library‹ 天空の魔人 三人の客

幸みゆきちゃんの事件じけんがあったお昼ひるすぎ、トキワ館かんの洋室ようしつの応接おうせつ間かんに、三さん人にんのおとなと、三さん人にんの少年しょうねんが集あつまって、事件じけんのうわさをしていました。幸みゆきちゃんが、巨人きょじんにさらわれた話はなしは、またたくまに、村そんじゅうにひろがって、トキワ館かんのお客きゃくさんも、みんな、それを知しっていたのです。

応接おうせつ間かんに集あつまっていたのは、小林こばやし、井上いのうえ、野呂のろの三さん少年しょうねんと、白犬しろいぬの事件じけんがあった夜よる、野天のてんぶろで知しりあいになった東京とうきょうからの客きゃくと、その友ともだちふたりです。

野天のてんぶろで知しりあった人ひとは、東京とうきょうの自転じてん車しゃ製造せいぞう会社かいしゃの重役じゅうやくで、三谷みたにさんというのでした。ふたりの友ともだちも、同おなじ会社かいしゃの人ひとでした。三さん人にんの少年しょうねんは、この人ひとたちと、おふろなどでよく出であうので、だんだん、したしくなり、じょうだんをいったり、ふざけたりするほどになっていました。

「ぼくたち三さん人にんは、あす東京とうきょうへ帰かえるよ。べつに、巨人きょじんがこわくて、逃にげだすわけじゃないがね。」

三谷みたにさんが、小林こばやし君くんの顔かおをみて、笑わらいながらいいました。三さん人にんのおとなは、みんな、宿やどのゆかたにどてらをかさねて、長ながいいすに、ぐったりと腰こしかけているのです。

「これは、ここへきたときからの予定よていなんだ。あさって、東京とうきょうに、どうしても出でなければならない会かいがあるのでね。」

三谷みたにさんの友ともだちのひとりが、弁解べんかいするようにつけくわえました。すると、もうひとりの友ともだちが、

「きみたち少年しょうねん探偵たんてい団だんの三さん人にんは、まだ、滞在たいざいしているんだね、だが、なるべく早はやく帰かえるほうがいいよ。いくら探偵たんてい団だんでも、巨人きょじんの腕うでには、かないっこないからね。ハハハ……。」

と、からかうのでした。しかし少年しょうねんたちも負まけてはいません。井上いのうえ君くんは、肩かたをいからせて、

「おじさんたち、少年しょうねん探偵たんてい団だんの歴史れきしを知しらないから、そんなことをいうんだよ。ぼくたちは今いままでに、ずいぶん怪物かいぶつをたいじしてきたからね。青銅せいどうの魔人まじん、透明とうめい怪人かいじん、宇宙うちゅう怪人かいじん、みんな、おそろしい怪物かいぶつなんだよ。」

と、じまんしました。小林こばやし団長だんちょうも、それにつづけて、

「ぼくたちだけで、たいじしたんじゃない。ほんとうは明智あけち先生せんせいなんです。おじさんたち、明智あけち先生せんせいを知しっているでしょう。」

「うん、新聞しんぶんでね。きみたちは、あの名めい探偵たんていの弟子でしなんだね。それで、こんどの巨人きょじんの腕うでの秘密ひみつを、とこうというわけか。」

「ええ、そうなんです。もし、ここに明智あけち先生せんせいがおられたら、きっと、巨人きょじんの秘密ひみつを、とかれると思おもいます。けっして、逃にげだしたりなんかしないと思おもいます。ですから、ぼくたち、もうすこしここにいて、やってみるんです。」

さすがに小林こばやし団長だんちょうは、けなげなことをいいます。

「ふうん、感心かんしん、感心かんしん。まあ、せいぜいやってみるがいいだろう。だが用心ようじんするんだぜ。相手あいては、おっそろしく、でっかい巨人きょじんだからね。つかみころされないようにね。」

三谷みたにさんが、またからかいました。

おくびょうもののノロちゃんは、部屋へやのすみの方ほうで、青あおい顔かおをして、この話はなしを聞きいていましたが、そのとき、やっと、ふるえ声ごえで口くちをはさみました。

「ぼく、どうしても、わからないな。そんなでっかい巨人きょじんなんて、この世界せかいにいるんだろうか。キングコングやゴジラなんて、みんな、つくり話ばなしでしょう。動物どうぶつでさえ、そんな大おおきなのはいないんだから、人間にんげんの巨人きょじんなんて、いるはずがないんだがなあ。」

「ハハハ……、ノロちゃんは、おくびょうもののくせに、いいことをいうね。それじゃきみは、おばけがこわくないのかい。」

三谷みたにさんの友ともだちが、いじわるをいいました。

「うん、おばけはこわいよ。おばけなんて、いないことは、よく知しってるんだけど……やっぱり、こわいから、しかたがないや。」

それを聞きくと、みんなが大笑おおわらいをしました。しかし、ノロちゃんは、まじめな顔かおで、

「まだわからないことがあるんだよ。腕うでだけで、からだのないやつってないでしょう。だから巨人きょじんには顔かおも、腹はらも、足あしもあるはずでしょう。ね、だから、そのでっかい足あしで、いろんなものを、ふんづけるはずじゃないかい。そういう、ふんづけたあとが、一ひとつもないのがおかしいんだよ。」

と、もっともなことをいうのです。

「ハハハ……、そこがばけものだよ。巨人きょじんは、腕うでばっかりで、からだがないのかもしれない。それにノロちゃんは、おとといの晩ばん、犬いぬがつかみあげられるのを、その目めで見みたんだろう。こんなたしかなことは、ないじゃないか。」

「うん。でも、巨人きょじんの腕うでは、よく見みえなかったよ。まっ黒くろな腕うでだから、見みえなかったのかもしれないけど。」

それから、またしばらく、巨人きょじんのうわさをしたあとで、みんなは明あかるいうちに、野天のてんぶろへはいろうといって、ぞろぞろと出でかけました。

そのあくる日ひの午後ごご、三谷みたにさんたち三さん人にんは、東京とうきょうへ出発しゅっぱつしました。そして、その晩ばんのことです。前代未聞ぜんだいみもんの大だい事件じけんがおこったのは……。

十じゅう時じ半はんごろでした。そのとき、小林こばやし君くんたち三さん人にんは、トキワ館かんの二に階かいの八はち畳じょうの部屋へやに、床とこをならべて、もう寝ねていたのです。うとうととして、ふと気きがつくと、下したの旅館りょかんの事務じむ室しつの方ほうから、がやがやと、さわがしい声こえが聞きこえてきました。どうもただごとではありません。

「おい、井上いのうえ君くん、ノロちゃん、なんだろう。ばかにやかましいね。」

「うん、へんだね。また、巨人きょじんの腕うでがあらわれたんじゃないかしら。」

井上いのうえ君くんが、ねむそうな声こえでこたえました。

「えっ、巨人きょじんの腕うでだって?」

ノロちゃんが、とんきょうな声こえをたてて、ピョコンと、ふとんの中なかからとびおきました。もう、がたがたふるえているのです。

「下したへいってみよう。」

「うん、そうしよう。」

小林こばやし君くんと井上いのうえ君くんとは、ねまきのまま、部屋へやを出でていきます。

「ぼくひとり、おいていっちゃあ、いやだよ。ぼく、こわいよう。」

ノロちゃんは、あわてて、ふたりのあとを追おうのでした。

下したの事務じむ室しつには、大おおぜいの人ひとが集あつまっていました。まん中なかに駅員えきいんの服ふくをきた人ひとが立たっています。そのまわりに、トキワ館かんの主人しゅじん夫婦ふうふ、番頭ばんとう、女中じょちゅうさんなどがむらがり、とまり客きゃくも、四よん―五ご人にんまじっていました。

駅員えきいんが、なにかおそろしいニュースを、持もってきたらしいのです。

よく聞きいてみますと、それはつぎのような、おどろくべき事件じけんでした。

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