← Library‹ 仮面の恐怖王 物おき小屋

「なんだと、なんの役やくにもたたなかったと?」

黄金おうごん仮面かめんはびっくりしたように、立たちどまりました。小林こばやし少年しょうねんの知恵ちえのあることを、よく知しっているので、なんだか、きみがわるくなってきたのです。

「ハハハ……、そうだよ。きみの部下ぶかが仏像ぶつぞうをぬすみだして、左右さゆうからだくようにして、門もんの外そとへ出でていった。それをぼくたち少年しょうねん探偵たんてい団だんがまちぶせしていて、追おっかけたんだよ。そして、きみの部下ぶかが仏像ぶつぞうをあき家やのなかに、かくしたのを見みつけ、それを、ちゃんと取とりかえしてしまった。ふたりのおまわりさんが、いまに、ここにはこんでくるんだよ。

きみはせっかく仏像ぶつぞうにばけて、みんなをごまかしていたが、ほんとうの仏像ぶつぞうが取とりかえされてしまったのだから、きみの変装へんそうはなんの役やくにもたたなかったのさ。わかったかい。ハハハ……。」

恐怖きょうふ王おうはそれを聞きくと、ほんとうに、おどろいてしまいました。あの仏像ぶつぞうが、はやくも取とりかえされたとは、ゆめにも知しらなかったのです。仏像ぶつぞうに変装へんそうしたのは、まったく、むだぼねおりになってしまいました。

恐怖きょうふ王おうは、しばらくだまって、つっ立たっていましたが、しかし、このくらいのことで、まけてしまうやつではありません。

やっと、気きをとりなおすと、ひとをばかにしたように笑わらいだしました。

「ワハハハ……、小林こばやしのチンピラは、なかなか、あじなことをやるねえ。だが、おれのほうには、いつも、おくの手てが用意よういしてあることを知しっているだろうな。ハハハ……、チンピラが、いくら、いばったって、おれは、びくともするもんじゃないよ。」

小林こばやし君くんは、このどたんばになって、恐怖きょうふ王おうがピストルでも出だすのではないかと、からだをかたくしました。すると、あいては、はやくもそれをさっして、

「ハハハ……、おれは、とび道具どうぐのような、やばんなものは持もっていないよ。血ちを見みるのは大だいきらいだからな。それより、知恵ちえだよ。おれの武器ぶきはおくそこの知しれない知恵ちえなのだ。」

「フフン、まけおしみをいってらあ。で、どんな知恵ちえがあるんだっ。」

小林こばやし君くんもまけてはいません。

「それはね、こうするんだっ。」

と、さけんだかと思おもうと、仏像ぶつぞうにばけた恐怖きょうふ王おうは、いきなり、小林こばやし君くんめがけて突進とっしんしてきました。

そのいきおいが、あまりはげしくて、つきたおされそうなので、小林こばやし君くんは思おもわず、一方いっぽうへ身みをかわして、かたすかしをくわせました。

そして、いまにも、こちらへつかみかかってくるかと、身みがまえていますと、恐怖きょうふ王おうはかたすかしをくったまま、小林こばやし君くんのそばを通とおりぬけて、玄関げんかんのほうへ矢やのように、かけだしていってしまったではありませんか。逃にげたのです。

「みんな、来きてください。あいつが逃にげたから、つかまえてください……。」

小林こばやし君くんは、家いえじゅうにひびきわたるような声こえで、さけびながら、あとを追おいました。

その声こえを聞ききつけて、片桐かたぎりさんとふたりの書生しょせいもかけだしてきました。

玄関げんかんをでると、まっくらな庭にわです。小林こばやし君くんはキョロキョロとあたりを見みまわしましたが、金色きんいろの仏像ぶつぞうはどこへかくれたのか、姿すがたが見みえません。

すると、そのとき、表門おもてもんのほうから、ふたりの警官けいかんがほんものの仏像ぶつぞうをかかえて、はいってきました。そのあとから少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんやチンピラ隊たいの少年しょうねんたちがぞろぞろとついてくるのです。

「仏像ぶつぞうにばけた恐怖きょうふ王おうが逃にげたのです。あいつの姿すがたを見みかけませんでしたか。」

そこへ出でて来きた片桐かたぎりさんが、警官けいかんに声こえをかけました。

「いや、あやしいやつには、であいません。あいつが逃にげたのは、いつごろのことですか。」

「たったいまです。門もんから出でたとすれば、あなたがたと、すれちがったはずです。」

「それなら、門もんから逃にげたのではありません。ぼくたちは、だれにもであわなかったのです。」

「それじゃあ、まだ庭にわの木この間まに、かくれているのかな。」

「さがしてみましょう。みんなで、てわけをして、さがしてみましょう。」

片桐かたぎりさん、書生しょせいふたり、警官けいかんふたり、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんとチンピラ隊たい十じゅう七しち人にんのうちの七なな―八はち人にん(あとの八はち―九きゅう人にんはへいのまわりをとりかこんで、見みはりをしているのです)。これだけの人数にんずうがあれば、どこにかくれていても、さがしだせないはずはありません。それに少年しょうねんたちも警官けいかんも、みんな懐中かいちゅう電灯でんとうを持もっているのです。

それから、まっくらな、ひろい庭にわに懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりが大おおきなホタルのように、あちこちと、木この間まをとびちがい、どんなすみずみまでも、さがしまわるのでした。

ひとりの警官けいかんは、五ご人にんの少年しょうねんをひきつれて、建物たてもののよこを、うら口ぐちのほうへ、すすんでいきましたが、むこうのほうから、ひとりのおとなが歩あるいて来くるので、もしや恐怖きょうふ王おうではないかと、サッと懐中かいちゅう電灯でんとうをむけました。しかし、それは、あやしいやつではなくて、いままで、うら口ぐちの番ばんをしていた、もうひとりの警官けいかんでした。警官けいかんは三さん人にん来きていて、そのひとりは、ずっと、うら口ぐちにがんばっていたのです。

そこで、こちらの警官けいかんは仏像ぶつぞうにばけた恐怖きょうふ王おうが逃にげたことをはなし、あやしいやつを見みなかったかと、たずねましたが、なにも見みなかったという答こたえでした。

さあ、わからなくなってきました。いったい、あいつは、どこへ、すがたをくらましたのでしょう。

そのとき、小林こばやし君くんが懐中かいちゅう電灯でんとうをふりながら、かけつけてきました。

「へいをのりこして、逃にげたものも、ないそうです。少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんとチンピラ隊たいの残のこりのものがへいをとりかこんで、見みはりをしていましたから、見みのがすはずはありません。あいつは、きっと、まだ庭にわの中なかにいるのです。」

小林こばやし君くんは、そこで、いきなり、声こえをひそめて、ひとりのおまわりさんの耳みみに、なにごとか、ささやきました。

「うん、そうかもしれないね。いってみよう。」

おまわりさんはそういって、もうひとりのおまわりさんにも、なにか、ささやきました。

ここにいるのは、ふたりのおまわりさんと、五ご人にんの少年しょうねんと小林こばやし君くんです。

小林こばやし君くんは、みんなのさきにたって、庭にわのむこうのほうへ歩あるいていきました。

おもやから、すこしはなれて、木きのあいだに物ものおき小屋こやが立たっています。そのそばまで来くると、小林こばやし君くんは、足音あしおとをしのばせながら、入口いりぐちの戸とに近寄ちかよって、耳みみをすまして中なかのようすを、うかがいました。

ひょっとしたら、恐怖きょうふ王おうはこの物ものおき小屋こやのなかに、かくれているのではないかと、思おもったのです。

すると、そのときです。

いきなり、物ものおき小屋こやの戸とが、なかからガラッとひらきました。そして、ひとりのへんな男おとこが、ヌーッと出でてきたではありませんか。

少年しょうねんたちは思おもわず逃にげ腰ごしになりましたが、よく見みると、それは、まったくべつの人間にんげんでした。

カーキ色いろのズボンにジャンパーをきた、顔かおじゅうに、ごましおひげのはえた、きたない男おとこです。

「き、きみは、だれだっ。」

小林こばやし君くんがつよい声こえで、たずねました。

「ここのうちの庭番にわばんのじじいですよ。べつにあやしいものじゃありません。」

そういえば、片桐かたぎり家かには庭番にわばんのじいさんがいたはずです。

「いまごろ、物ものおき小屋こやなんかで、なにをしていたんだっ。」

警官けいかんのひとりが、たずねます。

「なあにね、昼間ひるま、ここへタバコをおきわすれたので、取とりにきたのですよ。ほら、これですよ。」

じいさんは、そういって、手てに持もっていたタバコの「しんせい」を見みせました。

そして、そのまま、ふりむきもしないで、どこかへ立たちさってしまいました。

じいさんが、なかへはいったからには、物ものおき小屋こやに、あやしいやつがかくれているはずはありません。

そこで、みんなは、もっとべつのところを、さがそうと、歩あるきかけましたが、そのとき小林こばやし君くんは、なにを考かんがえたのか、「あっ。」といって立たちどまりました。

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