← Library‹ 仮面の恐怖王 きみは二十面相だ!

「アハハハ……、どうだね、まさか木きのてっぺんに、ぼくがかくれていようとは思おもいもかけなかったろう。そして、きみのさいごの切札きりふだ、空中くうちゅう飛行ひこうのプロペラを、こわしてしまったとはね。ハハハハ……、おい、恐怖きょうふ王おう君くん、なんとかいわないかね。」

明智あけちの声こえが上うえのほうから、木この葉はをとおして聞きこえてきました。

「まいったよ。ここまでさきまわりしているとは知しらなかった。で、どうしようっていうんだ。」

「きみを、びっくりさせようというのさ。」

「びっくりさせる? まだ、このうえにか。」

「うん、このうえにだよ。」

「いったい、なんだ?」

「きみの正体しょうたいさ。」

「えっ、正体しょうたい?」

「きみの正体しょうたいは、怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうだっ!」

明智あけちの声こえが木この葉はのしげったやみの中なかから、かみなりのようにひびきました。

恐怖きょうふ王おうはだまりこんでいます。明智あけちの声こえが、つづきました。

「れいによって、きみは、かえだまをつかって、うまく脱獄だつごくした。それから二月ふたつきほどたつと、仮面かめんの恐怖きょうふ王おうがあらわれたのだ。変装へんそうのしかたで、きみが二十にじゅう面相めんそうだということは、だいたいわかっていた。だが、はっきり、それとわかったのは、きみが空そらをとんでからだ。

小型こがたのヘリコプターのような機械きかいを背中せなかにくっつけて、空そらをとぶやつはきみのほかにはいない。いつか、きみが宇宙うちゅう怪人かいじんにばけたときに、フランスの発明はつめい家やから買かいいれたプロペラだ。そんな機械きかいをもっているのは、日本にっぽんでは二十にじゅう面相めんそうひとりだからね。」

ところが、こうして明智あけちがしゃべりつづけているあいだに、恐怖きょうふ王おうの二十にじゅう面相めんそうは、みょうなことをやっていたのです。

庭番にわばんのじいさんにばけた二十にじゅう面相めんそうは、木きの枝えだの上うえにこしかけて、左手ひだりてで上うえの枝えだをつかみ、右手みぎてでふところから懐中かいちゅう電灯でんとうをとりだすと、その手てをぐっとのばして、へいの外そとのほうにむかって、パッ、パッと、なんども、光ひかりを出だしたり、とめたりしたのです。

「おい、二十にじゅう面相めんそう、だまっていないで、もう、かぶとをぬいだらどうだ。」

明智あけちが、とどめをさすように、いいますと、いきなり笑わらい声ごえがかえってきました。

「ワハハハハハ……、明智あけち君くん、おれは、おとなしく下したにおりるよ。だがね、おれは、いつでも、おくの手ての、そのまたおくの手てを用意よういしているんだぜ。

黄金おうごん仮面かめんにばけ、仏像ぶつぞうにばけ、庭番にわばんのじいさんにばけ、さいごは、プロペラでとぼうとしたが、きみにじゃまされてしまった。だが、おくの手ては、これでおしまいというわけじゃない。まだまだ、おくのおくのおくの手てが、かくしてあるかもしれないぜ。ハハハハ……。」

二十にじゅう面相めんそうの声こえが、だんだん小ちいさくなっていきました。しゃべりながら、木きの幹みきをつたって下したへおりていくらしいのです。

「オーイ、あいつが、いまおりていくぞうっ。逃にがさないように用心ようじんしてくれっ。」

明智あけちは、そうさけんでおいて、じぶんも、おりはじめました。

下したには、十じゅう数すう人にんの人ひとたちが、てぐすねひいて待まちかまえています。

二十にじゅう面相めんそうは、なにか考かんがえがあるらしく、すなおに木きの幹みきをつたいおりると、みんなの前まえに両手りょうてをさしだしました。三さん人にんの警官けいかんがすすみでて、そのうちのひとりが二十にじゅう面相めんそうの両手りょうてにパチンと手錠てじょうをかけてしまいました。

それからパトロールカーをよんで警視けいし庁ちょうへつれていくことになり、十じゅう数すう人にんの人ひとたちは二十にじゅう面相めんそうをとりかこんで、門もんのそとの大通おおどおりへ出でていきました。すると、そのときです。

ブルルルルン……という爆音ばくおんが聞きこえたかと思おもうと、なにか大おおきなものが、みんなのあいだに、おそろしいいきおいで、つっこんできたのです。

スクーターです。

みんなは「あっ。」といって、道みちをあけました。すると、おそろしい早はやさで走はしっているスクーターへ、まるでかるわざ師しのように、ぱっと、とびついたやつがあります。

「あっ、あいつだ。あいつが逃にげたぞっ。」

おまわりさんが口々くちぐちにさけびました。

スクーターのうしろにとびのったのは、二十にじゅう面相めんそうでした。かれは、いつのまにか、手錠てじょうをはずしてしまっていたのです。手錠てじょうぬけなんて、奇術きじゅつ師しの二十にじゅう面相めんそうにはわけもないことでした。

そして魔物まもののような怪かいスクーターは、みんなのさけび声ごえをあとにして、まっくらな大通おおどおりを矢やのように走はしりさってしまいました。

ひとりの警官けいかんは、片桐かたぎりさんのうちの中なかへとびこんでいって、警察けいさつ署しょに電話でんわをかけ、非常ひじょう線せんをはるようにたのみました。

残のこるふたりの警官けいかんは、むこうに待まっているパトロールカーにとびのって、怪かいスクーターのあとを追おいかけました。

それから二十にじゅう分ふんほどのち、パトカーは、はるかはなれた町まちのさびしい原はらっぱの草くさむらの中なかに、怪かいスクーターが横よこだおしになって、すてられているのを発見はっけんしたのです。

しかし、スクーターにのっていたやつも、二十にじゅう面相めんそうも、どこへいったのか、いくらさがしても、みつけることはできませんでした。

そのあくる日ひの新聞しんぶんには、この事件じけんがデカデカとのったものですから、世間せけんは、二十にじゅう面相めんそうのうわさで持もちきりです。電車でんしゃの中なかでも、バスの中なかでも、とこやさんでも、喫茶きっさ店てんでも、人間にんげんがふたり以上いじょうあつまれば、かならず二十にじゅう面相めんそうの話はなしがでるのでした。

ああ、二十にじゅう面相めんそうが、またやってきたのです。あいつは、いくど、つかまったことでしょう。しかし、つかまっても、つかまっても、まるで不死鳥ふしちょうのように脱獄だつごくをして、世間せけんにあらわれてくるのです。そして、東京とうきょうはもちろん、日本にっぽんじゅうの人ひとびとをふるえあがらせてしまうのです。

二十にじゅう面相めんそうは、いったい、どこにかくれてしまったのでしょう。なにしろ、変装へんそうの大名だいみょう人にんです。どんな姿すがたになって、どんなところに、かくれているか、警察けいさつの大おおきな力ちからでもなかなか発見はっけんすることはできないのでした。

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