← Library‹ 電人M 木村助手の正体

明智あけち探偵たんていは、話はなしをつづけます。

「電人Mの秘密ひみつが、もう二ふたつ残のこっています。その一ひとつは、いつかの晩ばん、電人Mがおたくの階段かいだんをおりて、研究けんきゅう室しつの方ほうへいったまま、消きえてしまったことです。その廊下ろうかは行いき止どまりになっていて、研究けんきゅう室しつと、この木村きむら君くんの部屋へやがあるばかりですが、両方りょうほうとも、窓まどには鉄てつ格子こうしがはまっているから、ぜったいに、逃にげだすことはできません。それなのに、あの大おおきな図体ずうたいの電人Mが煙けむりのように消きえてしまったのです。

遠藤えんどうさんはピストルを持もって、階段かいだんの下したの廊下ろうかに、待まちかまえていました。すると、廊下ろうかの奥おくの方ほうから、この木村きむら君くんが出でてきたのです。

わかりますか。電人Mは研究けんきゅう室しつではなくて、木村きむら君くんの部屋へやにとびこんだのです。そして、電人Mの変装へんそうをぬいで、それをこのベッドの秘密ひみつの箱はこの中なかにかくし、いそいで廊下ろうかの遠藤えんどうさんの方ほうへ、もどっていったのです。」

それを聞きくと、遠藤えんどう博士はかせは、ふしぎそうな顔かおで、たずねました。

「あのとき、出でてきたのはこの木村きむら君くんでした。それじゃ、木村きむら君くんが電人Mに化ばけていたのですか。」

「そうです。この男おとこが電人Mなのです。こいつは、あなたの発明はつめいを盗ぬすもうとして、助手じょしゅになって住すみこんだのですが、あなたが、どうしても秘密ひみつをうちあけないので、治郎じろう君くんをどこかにかくして、治郎じろう君くんとひきかえに、あなたの発明はつめいの秘密ひみつを、手てに入いれようとしたのです。」

博士はかせはいよいよ、ふしぎそうな顔かおをして、

「しかし、おかしいですね。木村きむら君くんは、いつかの晩ばん、電人Mのために、神社じんじゃの森もりの中なかに連つれこまれて、おどかされたことがあるのです。木村きむら君くんが電人Mだとすると、あの事件じけんの説明せつめいができないじゃありませんか。」

「その事件じけんは、木村きむら君くんが自分じぶんで話はなしたのでしょう。あなたは見みたわけではありません。だれも見みたものはないのです。話はなしだけなら、どんな作つくり話ばなしだってできますよ。」

「ふーん、そうだったのか。あの話はなしはみんなうそだったのか。」

博士はかせは、感心かんしんしたように、そこに立たっている木村きむら助手じょしゅの顔かおを見みつめました。

木村きむら助手じょしゅはまだ二十にじゅう五ご―六ろくの青年せいねんです。それに、あまり利口りこうそうでもありません。こんな青年せいねんが、あの恐おそろしい電でん人にんMだなんて、思おもいもおよばないことでした。

「木村きむら君くんは貧乏びんぼうですよ。電人Mのあの金かねのかかる変装へんそうを、どうして作つくらせることができたのでしょう。」

「貧乏びんぼうではありません。こいつはたいへんな金持かねもちですよ。」

「えっ、この木村きむら君くんがですか。」

「そうです。見みたところ、青年せいねんのような顔かおをしていますが、じつはもっと年としとっているのです。この顔かおは、にせの顔かおです。」

明智あけち探偵たんていが、わけのわからないことを言いいました。そして木村きむら助手じょしゅをにらみつけながら、

「おい、木村きむら君くん、ぼくは、きみが何者なにものだか知しっているんだ。もう正体しょうたいをあらわしたらどうだ。」

と、はげしい声こえで、言いいました。すると、いきなり、

「ワハハハハハ……。」

という、恐おそろしい笑わらい声ごえが、部屋へやじゅうに、ひびきわたりました。みんなが、びっくりして、その方ほうを見みますと、きちがいのように笑わらっているのは、木村きむら助手じょしゅでした。

かれは、笑わらいながら、かべの方ほうを向むいて、両手りょうてで、顔かおをいじくっていましたが、ひょいと、こちらを向むいたのを見みると、みんなは、アッと驚おどろきました。

今いままでの木村きむら助手じょしゅが消きえてしまって、まったく別べつの人間にんげんが、そこに立たっていたからです。

「ワハハハハ……。明智あけち君くん、しばらくだったなあ。きみは、相あい変かわらずすごいうでまえだ。だが、おれは、まだ負まけたんじゃないぞ。」

その男おとこは三十さんじゅう五ご―六ろくに見みえました。おとなしそうな木村きむら助手じょしゅとは、打うって変かわって、ものすごい顔かおをしています。

遠藤えんどう博士はかせは、まるで夢ゆめでも見みているような気きがしました。ちょっと、かべの方ほうを向むいていたかと思おもうと、木村きむら助手じょしゅの顔かおが、恐おそろしい悪人あくにんに変かわってしまったのです。中村なかむら警部けいぶや刑事けいじたちも、びっくりしていました。

「電人Mとは、きばつなものを、考かんがえだしたね。え、二十にじゅう面相めんそう君くん。」

明智あけち探偵たんていは、ニコニコ笑わらっています。

ああ、二十にじゅう面相めんそう! 電人Mに化ばけた木村きむら助手じょしゅの正体しょうたいは、あの恐おそろしい二十にじゅう面相めんそうだったのです。二十にじゅうの顔かおを持もつという変装へんそうの名人めいじんのことですから、二十にじゅう五ご―六ろくの青年せいねんから、三十さんじゅう五ご―六ろくの男おとこに、早変はやがわりするのは、なんでもないことです。かべの方ほうを向むいているうちに、顔かおの化粧けしょうを、落おとしたのでしょう。

「やっぱりそうだったか。きさま、二十にじゅう面相めんそうだなっ。もう、こんどは、逃にがさんぞっ。」

中村なかむら警部けいぶが、どなりつけました。

「中村なかむら君くん、きみともしばらくだったねえ。元気げんきで、けっこうだ。いや、心配しんぱいしなくてもいい。おとなしく、きみに連つれられて行いくよ。さあ、手錠てじょうをかけたまえ。しかし、おれは、まだ、負まけたんじゃないぞ。おれの知恵ちえには、奥底おくそこがないからなあ。ハハハハ……。」

「負まけ惜おしみを言ゆうな。こんどこそは、うんと、あぶらをしぼってやるぞ。」

中村なかむら警部けいぶが、そう言いって、目めくばせしますと、刑事けいじのひとりが、進すすみ出でて、二十にじゅう面相めんそうの両手りょうてに、パチンと手錠てじょうをかけてしまいました。

「ハハハ……、これでもう、おれは逃にげられない。安心あんしんしたまえ。ところで、明智あけち君くん、きみは、まだひとつ、説明せつめいしなかったことがあるね。ほら、あのガレージの秘密ひみつさ。きみは、あのなぞが、解とけたのかね。」

二十にじゅう面相めんそうは、ふてぶてしく、たずねるのです。

「まだ調しらべていない。しかし、ガレージに行いってみれば、すぐわかるだろう。きみとの知恵ちえくらべには、負まけないつもりだよ。」

明智あけち探偵たんていもニコニコして、やりかえしました。

「よろしい。それじゃ、おれもガレージに行いこう。おれの目めの前まえで、あの秘密ひみつを解といてみたまえ。」

いよいよかってなことをいいます。

それを聞きくと、中村なかむら警部けいぶは顔かおをしかめました。

「それよりも、遠藤えんどう治郎じろう君くんを助たすけださなければならない。治郎じろう君くんはどこにいるんだ。」

「それは、あのガレージと関係かんけいがある。だから、おれをガレージに連つれて行いかなければ、治郎じろう君くんを帰かえすことはできないよ。」

「それじゃあ、治郎じろう君くんは、そのガレージのどこかに、かくしてあるのか。」

「それは、どうだかわからない。たぶん明智あけち君くんが、よく知しっているだろうよ。さあ、明智あけち君くん、行いってみよう。」

なんだか、へんなことになってしまいました。二十にじゅう面相めんそうはガレージに行いって、明智あけちと知恵ちえくらべをしようというのです。罪人ざいにんの言いうままになるなんて、ためしのないことです。しかし、そうしなければ、治郎じろう君くんのかくし場所ばしょを、教おしえないと言いうのですから、しかたがありません。中村なかむら警部けいぶは、しぶしぶ、承知しょうちをしました。

明智あけち探偵たんていは、まだそのガレージを見みたこともありません。これから、そこへ行いって、すぐに、秘密ひみつを見破みやぶろうというのです。はたして、そんなことができるのでしょうか。

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