← Library‹ 電人M 黒い怪鳥

二十にじゅう面相めんそうは明智あけち探偵たんていがたじろぐのを見みて、ニヤリと笑わらいながら、言いいはなちました。

「二十にじゅう面相めんそうの、奥おくの手てを知しらないのか。おれにはどんなときだって、奥おくの手てが用意よういしてあるんだ。おれはまだ、きみたちに、つかまったわけじゃないぞ。」

総勢そうぜい十じゅう二に人にんにかこまれて、手錠てじょうをはめられて、まだつかまらないとは、一体いったい、どうしたわけでしょう。

「みたまえ、あれだっ。」

二十にじゅう面相めんそうは、はるか遠とおくの空そらを見みあげました。

その空そらに、黒くろい点てんのようなものが見みえました。それが恐おそろしい速はやさでこちらに近ちかづいてくるのです。

黒くろい鳥とりです。カラスや、トンビではありません。もっと恐おそろしいすがたの鳥とりです。

タカでしょうか。ワシでしょうか。しかし、東京とうきょうの空そらに、タカやワシがとんでいるはずはありません。

みんなは、その怪鳥かいちょうを、じっと見みあげていました。みるみる大おおきくなってきます。タカやワシよりも、もっと、ずっと大おおきな鳥とりです。なにか恐おそろしいことの、まえぶれのような、黒くろい、でっかい、お化ばけ鳥とりです。

もう、みんなの頭あたまの上うえまで、迫せまってきました。

ブルルン、ブルルン、ブルン、ブルン……と、つんぼになるような、はげしい音おと。大おおきな羽はねで、地面じめんが暗くらいかげになり、つむじ風かぜが巻まき起おこりました。

「あっ。」とさけんで、みんなは思おもわず、地面じめんにしゃがみ、からだを丸まるくして、これを防ふせぎました。

そのときです。怪鳥かいちょうの二に本ほんの黒くろい足あしがスーッとのびて、そこにつっ立たっていた二十にじゅう面相めんそうのからだを抱だき上あげると、ワシが子こどもをさらうように、そのまま、空そらたかく、舞まい上あがっていくのです。

「ワハハハハ……、どうだ、おれの奥おくの手てがわかったか。ワハハハハ……。」

はげしい怪鳥かいちょうの羽音はおとに消けされながら、二十にじゅう面相めんそうの笑わらい声ごえが、かすかに、ひびいてきました。

怪鳥かいちょうの姿すがたは、だんだん小ちいさくなり、しばらくの間あいだ、黒くろい点てんのように見みえていました。やがて、それも消きえて、どこともしれず、とびさってしまったのです。

みんなは、ぼんやりと、空そらを見みあげて、つっ立たっていました。あまりのことに、ものを言いう力ちからもなくなっていたのです。

「明智あけち君くん、あれは、いったい、なんだね。あんなおそろしい鳥とりがいるはずはないが。」

中村なかむら警部けいぶが、まだ空そらをみつめている明智あけち探偵たんていにたずねました。

「ヘリコプターだよ。」

「えっ、ヘリコプターだって?」

「ぼくの油断ゆだんだった。あいつは、前まえから、ヘリコプターの仕掛しかけで、空そらをとぶ道具どうぐを、持もっていたのだ。そのプロペラの下したに、あんな鳥とりのからだと羽はねを、とりつけたんだよ。中なかにはあいつの部下ぶかがはいっていて、両手りょうてを鳥とりの足あしのように見みせかけ、その手てであいつを抱だきあげたんだ。

もう一ひとつ、忘わすれていたことがある。二十にじゅう面相めんそうは手錠てじょうぬけの名人めいじんだ。ほら、そこに手錠てじょうが落おちている。」

明智あけち探偵たんていの指ゆびさす地面じめんに、銀色ぎんいろの手錠てじょうが、開ひらいたまま、落おちていました。

「鳥とりが舞まいおりたときに、手錠てじょうをはずしたんだ。そして、自由じゆうになった手てで、鳥とりの腹はらについている輪わになったベルトに、手てと足あしを入いれて、落おちないように、からだをささえたんだよ。

空そらから、すけだちが、とんでこようとは、ぼくも気きがつかなかった。二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかが、どこかにかくれて、遠藤えんどうさんの家いえを出でるのを、見みていたにちがいない。そして、あとをつけて、電話でんわで連絡れんらくして、あの鳥とりのヘリコプターを、とばさせたのだ。あいつの奥おくの手ては、いつでも、とんでもない方角ほうがくから、やってくる。」

「で、ぼくらは、また、あいつに、してやられたというわけだね。」

中村なかむら警部けいぶが、にが笑わらいをしました。

「いや、ぼくらが負まけたわけじゃないよ。」

「えっ、それはどういう意味いみだね。」

「あいつに、奥おくの手てがあれば、ぼくの方ほうにも、奥おくの手てがあるということさ。」

「えっ、このうえに、まだ奥おくの手てがあるのか。それは、いったい……。」

「まあ、ぼくにまかせておきたまえ。ぼくはきっと、あいつのすみかを、つきとめてみせる。そこへ行いく道みちがわかったのだよ。それには、少年しょうねん探偵たんてい団だんの、からだの小ちいさい子こどもがいい。小林こばやし君くん、ポケット小僧こぞうがいいよ。あの子こなら、きっとやれる。」

「ええ、ポケット君くんなら、大丈夫だいじょうぶです。かばんの中なかにかくれて、奇き面めん城じょうにのりこんだくらいですからね。」

小林こばやし少年しょうねんが、ニコニコして、答こたえました。(そのことは、この全集ぜんしゅうの第だい三十さんじゅう九きゅう巻かん『奇き面めん城じょうの秘密ひみつ』にかいてあります。)

二十にじゅう面相めんそうのすみかへ行いく道みちというのは、どんな道みちなのでしょう。そして、ポケット小僧こぞうは、どんな働はたらきをすることになるのでしょう。

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