← Library‹ 電人M 赤と青

お話はなしはもとにもどって、こちらは二十にじゅう面相めんそうにかどわかされた、遠藤えんどう治郎じろう少年しょうねんです。

麻酔ますい薬やくをかがされた治郎じろう君くんは、知しらぬまに、自動じどう車しゃからおろされ、長ながい道みちを、どこともしれず、運はこばれて行いきました。

どれだけ眠ねむったのか、ふと目めがさめると、ベッドの上うえに、横よこたわっていました。窓まどの一ひとつもないみょうな部屋へやです。

治郎じろう君くんが目めをさますのを、待まちかまえていたように、ひとりの荒あらくれ男おとこが、パンと牛乳ぎゅうにゅうをのせたぼんを持もって、はいってきました。

「さあ、これをたべな。ひもじい思おもいは、させないよ。だいじなお客きゃくさんだからね。そのうちにおもしろいものを見みせてやるよ。まあ、ゆっくり休やすんでいるがいい。」

窓まどがないので、昼ひるか夜よるかわかりませんが、あとで、考かんがえてみると、それは電人Mにかどわかされたあくる日ひの、お昼ひるごろでした。

治郎じろう君くんは、おなかがすいていたので、パンと牛乳ぎゅうにゅうをすっかりたいらげました。

そして、ベッドに腰こしかけて、どうすれば、逃にげだせるだろうかと、考かんがえているうちに、時間じかんがたって、また食事しょくじが運はこばれてきました。パンとビフテキのごちそうです。治郎じろう君くんは、これもきれいにたべてしまいました。

しばらくすると、さっきの男おとこが、手てに黒くろいきれをもって、はいってきました。

「さあ、いよいよ、おもしろいものを見みせてやるよ。そこへいくまで、これで、目めかくしをするんだ。」

と、言いいながら、黒くろいきれで、治郎じろう君くんに目めかくしをしました。

そして、男おとこに手てをひかれて、廊下ろうかのようなところを、グルグル回まわって、みょうな部屋へやに連つれこまれ、

「ここで待まっているんだ。」

と、目めかくしをはずして、冷つめたいコンクリートの床ゆかの上うえに、突つき倒たおされました。

目めかくしがなくなっても、目めの前まえはまっくらでした。しんの闇やみです。むろん家いえの中なかでしょうが、どうしてこんなに暗くらいのか、わかりません。ここも、きっと、窓まどがないのでしょう。ひょっとしたら、地下ちか室しつかもしれません。

突つき倒たおされたまま、横よこになって、じっとしていましたが、いつまでたっても、目めの前まえはまっくらです。

そのとき、とつぜん、パッとあたりがまっ赤かになりました。血ちのような、きみのわるい色いろです。自分じぶんのからだを見みると、血ちまみれになったように赤あかいのです。

電灯でんとうは見みえません。方ほうぼうに、赤あかいかくし電球でんきゅうがついているのでしょう。

すると、あっと思おもう間まに、また、まっくらになってしまいました。

一いち分ふんほどすると、こんどは、まっさおな光ひかりです。あたり一面いちめん、海うみの底そこのような青あおい色いろに包つつまれました。それが、ずうっと向むこうまで、つづいています。なんという広ひろさでしょう。こんな広ひろい部屋へやって、あるものでしょうか。

その青あおい色いろも、パッと消きえて、また、もとの暗闇くらやみです。

こんどは、なかなか、明あかるくなりません。闇やみが、何百なんびゃくメートルも向むこうまで、つづいているような、恐おそろしい暗くらさです。

十じゅう分ふんほど、じっと、闇やみの中なかに、横よこになっていました。逃にげ出だそうにも、逃にげ道みちがわからないのです。

すると、闇やみの中なかに、ポツンと二ふたつの青あおいものが、あらわれました。目めのようです。動物どうぶつの目めでしょうか。

その近ちかくの闇やみの中なかに、また、二ふたつの青あおい光ひかりが、あらわれました。

おやっと、思おもう間まに、その青あおいものの数かずが、どんどんふえていきます。やがて、数かぞえきれないほど、たくさんになりました。何百なんびゃくぴきというホタルが、木この葉はの上うえをはいまわっているようです。その青あおい光ひかりは、みんなノロノロと動うごいているのです。

そのうちの、いくつかが、だんだん、こちらへ、近ちかづいてきました。えたいのしれない動物どうぶつが、えものをめがけて、しのびよってくる感かんじです。

治郎じろう君くんは、恐おそろしくなって、逃にげようとしました。そして、両手りょうてをついて、起おき上あがったとき、へんなものが手てにさわりました。なんだか、グニャグニャした、ゴムのようなものです。それが、手先てさきから、だんだん、肩かたの方ほうへのぼってくるのです。

ギョッとして、ふりはらおうとしましたが、そいつは、ねばっこく、まといついて離はなれません。肩かたから、首くびの方ほうへ、そして、首くびにグルッと巻まきついてしまったではありませんか。

治郎じろう君くんは、あまりのきみわるさに、キャーッとさけびました。

すると、そのとき、治郎じろう君くんのさけび声ごえが、合図あいずででもあったように、あたりがパッと赤あかくなったのです。あの血ちの色いろの赤あかさです。その赤あかい光ひかりの中なかに、なんともいえない恐おそろしいものが、グニャグニャと、うごめいていました。

人間にんげんの大人おとなぐらいの大おおきさのタコのようなやつです。人間にんげんの二に倍ばいもあるような、大おおきな、まるい頭あたま、かみの毛けもなんにもなく、全体ぜんたいがつるつるしていて、そこに二ふたつのまんまるな目めが光ひかっています。鼻はならしいものはなくて、とんがった口くちが、とびだしています。足あしは六ろく本ほんです。それがグニャグニャと、もつれあって、一いち本ほんの足あしが、治郎じろう君くんの首くびに、巻まきついているのでした。

タコならば、足あしに吸盤きゅうばんがついているはずですが、こいつの足あしはのっぺらぼうで、なにもついていません。

タコではないのです。タコによく似にたお化ばけです。そいつの恐おそろしい頭あたまが、いまにも治郎じろう君くんの顔かおに、くっつきそうになっています。

「キャーッ。」

治郎じろう君くんは、また、悲鳴ひめいをあげて、逃にげ出だそうと、もがきました。

すると、目めの前まえをふさいでいた、大おおきな頭あたまが、横よこに動うごいたので、そのうしろが見みえたのです。

そこを、一目ひとめみると、治郎じろう君くんは心臓しんぞうがのどのへんまで、とび上あがってくるような気きがしました。

そこには、血ちのような光ひかりに照てらされて、何百なんびゃくというタコ入道にゅうどうが、ウヨウヨしているではありませんか。みんな六ろく本ほんの足あしで立たち上あがって、大おおきな頭あたまを、もてあますように、ヨロヨロと、うごめいているのです。

パッと赤あかい光ひかりが消きえると、暗闇くらやみの中なかに、何百なんびゃくものホタルが、静しずかに動うごいているように見みえましたが、すぐに、青あおい光ひかりがつきました。こんどは海うみの底そこで、もつれあうタコ入道にゅうどうです。

そのとき、治郎じろう君くんは、ハッと思おもい出だしました。こいつらはタコ入道にゅうどうではありません。電人Mといっしょに、東京とうきょうじゅうをさわがせた、あの、火星かせい人にんです。治郎じろう君くんの家いえの階段かいだんを、電人Mの肩かたにまといついて、おりてきた、あの怪物かいぶつです。

しかし、どうして、ここに、こんなにたくさんの怪物かいぶつが、住すんでいるのでしょう。いったい、ここはどこなのでしょう。治郎じろう君くんは、いつのまにか、宇宙うちゅうの旅たびをして、遠とおい星ほしの世界せかいへきていたのでしょうか。

そのうちに、ギャー、ギャーという、ものすごい音おとが、重かさなりあって、聞きこえてきました。タコの化ばけものが、ないているのです。

火星かせい人にんのなき声ごえです。

青あおい光ひかりがパッと消きえて、赤あかい光ひかりに変かわりました。その変かわり方かたが、だんだん早はやくなり、青あお、赤あか、青あお、赤あかと、めまぐるしくいれかわり、その中なかを、タコのお化ばけの大群たいぐんが、ジリジリと、こちらに、おしよせてきました。

治郎じろう君くんのまわりは、でっかい顔かおと、ギョロッとした目玉めだまと、グニャグニャともつれた足あしとで、いっぱいになり、それが、治郎じろう君くんをおしつぶさんばかりに、のしかかってくるのでした。

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