← Library‹ 電人M 小黒人

ちょうどそのころ、桜井さくらいさんのガレージのとびらを開ひらいて、ふたりの少年しょうねんが、中なかにしのびこんでいました。

二十にじゅう面相めんそうが、黒くろい怪鳥かいちょうに抱いだかれて、空そらたかく、とびさってから、一いち時間じかんほどしたころです。少年しょうねんのひとりは小林こばやし君くんでした。もうひとりは、頭あたまから足あしの先さきまで、まっ黒くろな、ごく小ちいさい子こどもです。

その子こどもは黒くろいシャツに、黒くろいズボン、黒くろい運動うんどう靴くつという、黒くろずくめの服装ふくそうで、頭あたまからスッポリと黒くろいふくめんをかぶっています。目めのところだけ、くりぬいてあって、クリクリした、かしこそうな目めがのぞいているのです。

もう、おわかりでしょう。この小ちいさい黒くろんぼは、これから冒険ぼうけんにでかけようとするポケット小僧こぞうなのです。

ふたりはガレージにはいると、ピタリと、とびらをしめてから、小林こばやし君くんはガレージのすみにうずくまって、床ゆかの鉄板てっぱんに打うってあるびょうを動うごかしました。

すると、鉄板てっぱんの床ゆか全体ぜんたいが、桜井さくらいさんの自動じどう車しゃを乗のせたまま、電気でんき仕掛しかけで、スーッとさがっていくのです。そして、ガレージの下したの、秘密ひみつの部屋へやの床ゆかまでおりますと、黒くろんぼ少年しょうねんは、いさましく、鉄板てっぱんの外そとに、とびだしました。

「ポケット君くん、しっかりやってくれよ。こんどは、いままでにない大仕事おおしごとだからね。」

「うん、大丈夫だいじょうぶだよ。きっと、治郎じろうさんを、捜さがしだしてみせるよ。」

「それじゃ、ぬかりなくね。」

「うん、わかったよ。小林こばやしさんは、もう上あがってもいいよ。」

小林こばやし少年しょうねんは、ポケット小僧こぞうに別わかれをつげて、さっきの鉄板てっぱんのびょうを、ぎゃくに動うごかしました。すると、鉄板てっぱんの床ゆかが、エレベーターのように、上あがっていくのです。

鉄板てっぱんが上あがると、下したの部屋へやには電灯でんとうがないので、まっくらになりました。黒くろんぼのポケット小僧こぞうは、懐中かいちゅう電灯でんとうをつけて、上うえのガレージよりも、広ひろくなっているがわの、コンクリートのかべを照てらしました。

そして、しばらくの間あいだ、なにかを捜さがしていましたが、

「あっ、あれだ。」

と、言いいながら、こんどは、ポケットから、小ちいさな銀色ぎんいろの棒ぼうを取とりだしました。

それをにぎって、サッと、ふりますと、小ちいさな棒ぼうが、一いちメートル五十ごじゅうセンチほどの長ながい棒ぼうになりました。

それは手品てじな師しのつかう魔法まほうの杖つえで、写真しゃしん機きの足あしのように、銀ぎんのつつが、いくつも重かさなり合あっていて、ちぢめれば二十にじゅうセンチほどになり、のばせば一いちメートル五十ごじゅうセンチにもなるのです。

これは少年しょうねん探偵たんてい団だんの七ななつ道具どうぐとは別べつに、小林こばやし少年しょうねんだけが持もっている、便利べんりな道具どうぐなのですが、ポケット君くんは、こんどの冒険ぼうけんのために、それを借かりてきたのです。

その長ながい棒ぼうで、コンクリートのかべの自分じぶんの背せの二に倍ばいもあるような、高たかいところを、グッと押おしました。

そこに、かべと同おなじコンクリートの、かくしボタンがあって、それが、秘密ひみつの戸とを開ひらく、電気でんき仕掛しかけのスイッチになっているのです。

グッと押おしたかと思おもうと、そのスイッチの下したのコンクリートのかべに、四角しかくな割われ目めができて、それが、だんだん大おおきくなっていきます。厚あつさ二十にじゅうセンチもあるコンクリートのかべが、金庫きんこのとびらのように、向むこうへグーッと、開ひらいていくのです。その奥おくは、まっ暗くら闇やみの、トンネルでした。

明智あけち探偵たんていが、中村なかむら警部けいぶに、「こっちにも、奥おくの手てがある。」と言いったのは、ここのことでした。このトンネルが、二十にじゅう面相めんそうのかくれがに、つづいているのにちがいありません。

明智あけち探偵たんていは、さきほど、ガレージの床下ゆかしたにかくれたとき、この秘密ひみつ戸とを見みつけたのですが、わざとだれにも言いわないでおいて、すばしっこいポケット小僧こぞうに、その探検たんけんをさせることにしたのです。

ポケット小僧こぞうは、トンネルの中なかにはいりました。裏うらがわのスイッチを捜さがすのに、しばらく手てまどりましたが、やがて、それを見みつけると、また魔法まほうの杖つえで押おして、厚あついかくし戸とを、もとのとおりにしめました。

用心ようじんのために、懐中かいちゅう電灯でんとうを消けしたので、あたりは、しんの闇やみです。その闇やみの中なかを、小ちいさな黒くろんぼが歩あるいて行いくのですから、たとえ、二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかとすれちがっても、めったに気きづかれることはないでしょう。

右手みぎてでトンネルのかべにさわりながら、奥おくへ、奥おくへと進すすんで行いきました。恐おそろしく、長ながいトンネルです。右みぎに曲まがり、左ひだりに曲まがり、ときには階段かいだんをおりたり、上あがったりして、どこまでもつづいているのです。

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