← Library‹ 電人M 黒んぼ会議

また、うす暗ぐらい廊下ろうかです。二十にじゅう面相めんそうは、そこを右みぎに曲まがり、左ひだりに曲まがり、歩あるいて行いきます。このへんは、コンクリートの床ゆかで、リノリウムの自動じどう廊下ろうかではありません。

廊下ろうかは、狭せまいトンネルのようになり、そのつきあたりに、上うえにのぼるコンクリートの階段かいだんが見みえてきました。

二十にじゅう面相めんそうは、それをのぼって行いきます。ポケット小僧こぞうの小ちいさな黒くろんぼのような姿すがたも、そのすぐあとから、ついて行いきます。

階段かいだんをのぼりきると、コンクリートのかべで、ふさがれていましたが、二十にじゅう面相めんそうは、どこかのボタンを押おして、それを開ひらきました。コンクリートの重おもいふたが、スーッと、上うえの方ほうへ、開ひらいていくのです。

そこを出でると、空そらいっぱいに、星ほしが輝かがやいていました。

「おやっ、もう地下ちかから、外そとに出でたんだな。」

ポケット小僧こぞうは、やれうれしやと思おもいました。外そとに出でてしまえば、事務じむ所しょへ帰かえるのは、わけはないからです。

そこは、公園こうえんなどにある野外やがい音楽おんがく堂どうのようなところでした。星ほしの光ひかりで、ぐるっと、まるくとりまいたベンチの列れつが、かすかに見みえています。

それらのベンチは、うしろの方ほうほど高たかくなっていて、ちょうど学校がっこうの理科りか実験じっけん室しつを、何なん倍ばいにも広ひろくしたようなかんじです。それらのベンチには、あちこちに、黒くろいお化ばけみたいなものが、腰こしかけていました。そのお化ばけは、みんなで五十ごじゅう人にんぐらいのようでした。

二十にじゅう面相めんそうの電人Mは、ベンチでかこまれた、まんなかのあき地ちに置おいてある椅子いすに、こしかけました。

その椅子いすの横よこに、まっ黒くろな大だい入道にゅうどうのようなものが、ニューッと立たっています。丸まるい顔かおが、いくつもある、でっかい化ばけ物ものです。

しばらくすると、ベンチのどこからか、

「みんな、そろいました。」

という声こえがきこえました。

それを聞きくと、まんなかの二十にじゅう面相めんそうは、すっくと、椅子いすから立たちあがりました。黒くろい大だい入道にゅうどうと電人Mとが、不ふ気味きみな姿すがたを、ならべたのです。しかしその大おおきさは、まるでちがいます。顔かおのいくつもある大だい入道にゅうどうのほうは、電人Mの十じゅう倍ばいもある巨人きょじんです。

「諸君しょくん!」

電人Mが、恐おそろしい声こえで、どなりました。どこかに、ラウド・スピーカーをつけているのかもしれません。

「これから、一いち週間しゅうかんにいちどの金曜きんよう日ひの会議かいぎを開ひらく。いつも言いっていることだが、ここにあらためて、われわれの団体だんたいの目的もくてきをのべる。

われわれは世界せかいの美術びじゅつ品ひんを集あつめることを目的もくてきとする。買かいいれるのではなく、盗ぬすみとるのだ。そして二十にじゅう面相めんそう大だい美術びじゅつ館かんを造つくるのが、おれの一生いっしょうの目的もくてきだ。

金銭きんせんを盗ぬすむこともあるが、それが目的もくてきではない。おれと諸君しょくんの暮くらしをたてるためだ。諸君しょくんには十分じゅうぶんの金かねをあたえている。諸君しょくんはひとりひとりが、相当そうとうの金持かねもちだ。

われわれは、どんなことがあっても、人ひとを殺ころさない。人ひとを傷きずつけない。おれは血ちをみることが、大嫌だいきらいだ。このおきては、堅かたく守まもってもらいたい。

いまおれは、遠藤えんどう博士はかせの大だい発明はつめいを、おれのものにしようと考かんがえている。そのためには、博士はかせの助手じょしゅに住すみこんだりして、ずいぶん、骨ほねをおったが、どうしても秘密ひみつがわからない。そこで、やむをえず、博士はかせの子こどもの治郎じろう君くんをかどわかして、われわれのすみかにかくした。大切たいせつにあつかうつもりだ。ただ、博士はかせが秘密ひみつを打うち明あけるまでは、ぜったいに返かえさないというだけだ。

遠藤えんどう博士はかせの発明はつめいは、やがて、おれのものになる。そうなれば、おれは天下てんか無敵むてきだ。世界せかいを敵てきに回まわしても、こわくないぞ。おれの知恵ちえと、おれの二十にじゅうのちがった顔かおと、博士はかせの恐おそろしい発明はつめいと、これだけそろえば、おれは、思おもう存分ぞんぶんのことができる。だから諸君しょくんはこのうえとも、治郎じろう君くんを逃にがさないように、よく注意ちゅういするのだ。あの子こが、大だい発明はつめいを手てに入いれるかぎだからな。

おれはいまは二十にじゅう面相めんそうではなくて、電人Mだ。おれがどんなに大おお仕掛しかけな地下ちかの電気でんきの国くにを造つくったかは、諸君しょくんがよく知しっている。諸君しょくんが、それぞれの持もち場ばを、ひきうけてくれたおかげだ。

ああ、電気でんきの国くに! おれたちは、地球ちきゅうだけではない。宇宙うちゅうを相手あいてにしているのだ。宇宙うちゅう人にんを造つくりだしているのだ。その秘密ひみつも、諸君しょくんはよく知しっている。

これで、おれの話はなしは終おわる。諸君しょくんのうちに、なにか意見いけんがあったら、遠慮えんりょなく、ここで言いってもらいたい。」

「異議いぎなし!」「異議いぎなし!」

ベンチの方ほうぼうから、声こえが起おこりました。

ベンチにかけていた黒くろいお化ばけはみんな人間にんげんだったのです。二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかだったのです。黒くろシャツに黒くろふくめんをつけて、目めのところだけをくりぬいたありさまは、ポケット小僧こぞうと、そっくりです。

かれらは、そのとき、そろって立たちあがりました。

「電人Mばんざーい。」

「電気でんきの国くにばんざーい。」

みんなの声こえが、星空ほしぞらの下したにとどろきわたりました。

ポケット小僧こぞうは、ますます驚おどろきました。二十にじゅう面相めんそうの電人Mは五十ごじゅう人にんの部下ぶかをもっているのです。そして、毎日まいにち、毎日まいにち、日本にっぽんじゅうの美術びじゅつ品ひんを、いや、世界せかいの美術びじゅつ品ひんを、集あつめているのです。

遠藤えんどう博士はかせの発明はつめいを盗ぬすむのも、電人Mに化ばけたのも、みんなその目的もくてきを達たっするためらしいのです。なんという大おおがかりな盗賊とうぞく団だんでしょう。

「だが、こっちには明智あけち先生せんせいがいる。小林こばやし団長だんちょうがいる。なあに、いまに、あっといわせてやるぞ。」

ポケット小僧こぞうは、明智あけち事務じむ所しょに帰かえるために、みんなのそばから、離はなれていきました。

しかし、このひろっぱの回まわりには、高たかいコンクリートの塀へいが、めぐらされていて、どこにも出口でぐちのないことがわかりました。これは、どこかの屋敷やしきの中なかでしょうか。それとも……? ああ、ここは一体いったい、どこなのでしょう。

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