← Library‹ 電人M 会議場の異変

小林こばやし君くんは、噴火ふんか口くちのような穴あなぼこの、いちばん深ふかくて大おおきいのを、捜さがしまわりました。

「ああ、これがいい。一いちメートルも深ふかさがある。ここなら大丈夫だいじょうぶだろう。」

そんなひとりごとを言いって、小林こばやし君くんは、その大おおきな穴あなの中なかへ、はいりました。

そして、ポケットから、ハンド・ドリルを取とりだすと、いきなり、穴あなの底そこを掘ほりはじめました。

たいして大おおきな音おとをたてるわけではありませんから、見物けんぶつたちが、あやしんで、集あつまってくる心配しんぱいはありません。

ドリルで、丸まるく、たくさん穴あなをあけて、そこのコンクリートをかきとって、野球やきゅうのボールが、すっぽりはいるほどの、くぼみをつくりました。

そして、宇宙うちゅう服ふくの下したの自分じぶんの服ふくのポケットから、銀色ぎんいろの玉たまを取とりだして、そのくぼみの中なかにいれ、上うえから、くだけたコンクリートをかぶせて、わからないようにしてしまいました。

この銀色ぎんいろの玉たまは、遠藤えんどう博士はかせから、渡わたされた、水爆すいばくや原爆げんばくよりも恐おそろしい力ちからをもつ、あの大だい発明はつめいの武器ぶきなのです。

その仕事しごとを終おわると、小林こばやし君くんは、そのまま明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょへ帰かえってきました。

いっぽう、遠藤えんどう博士はかせの家いえでは、その同おなじ日ひに、こんなことが起おこっていました。

二十にじゅう面相めんそうの電人Mから、遠藤えんどう博士はかせに電話でんわがかかってきたのです。

「きょう返事へんじをするという約束やくそくだから、電話でんわをかけたのです。決心けっしんはつきましたかね。」

二十にじゅう面相めんそうが、ていねいな口くちをききました。

「決心けっしんした。しかし、治郎じろうとひきかえだよ。間違まちがいないだろうね。」

「大丈夫だいじょうぶです。ぼくは約束やくそくにそむいたことはありません。あなたが、秘密ひみつをうちあけて、お帰かえりになるときには、治郎じろう君くんといっしょです。治郎じろう君くんは元気げんきですよ。」

「それさえ、間違まちがいなければ、わたしのほうは、あすの晩ばんがいい。」

「何時なんどきです。」

「九きゅう時じとしよう。あすの土曜どよう日ひの午後ごご九きゅう時じ。場所ばしょは、きみにまかせる。」

「むろんですよ。場所ばしょをあなたのほうできめたら、警官けいかん隊たいが待まち伏ぶせしているにきまってますからね。」

「だから、きみの好すきなところへ行いくよ。」

「では、八はち時じ半はんに、おたくへ、自動じどう車しゃをむかえにやりましょう。あなたのお知合しりあいからということにして、その車くるまには、ぼくの部下ぶかが乗のっていて、あなたに目めかくしをし、さるぐつわをはめます。乱暴らんぼうはしませんから、それだけはお許ゆるしください。目めかくしは、ぼくのすみかをわからせないためです。」

「わかった、わかった。」

博士はかせは、そういって、ニヤリと笑わらいました。二十にじゅう面相めんそうのすみかなんて、ポケット小僧こぞうの働はたらきで、こっちには、とっくにわかっているのにと思おもうと、おかしくてしかたがないのです。

そうして、電話でんわがきれました。遠藤えんどう博士はかせは、むろん、二十にじゅう面相めんそうの自動じどう車しゃに乗のるつもりなんか、すこしもありません。土曜どよう日ひと約束やくそくしましたが、その前まえの金曜きんよう日ひの晩ばんに、あの銀色ぎんいろの玉たまが、ものをいうのです。そして、二十にじゅう面相めんそうたちはつかまってしまうのです。

さて、お話はなしはとんで、その金曜きんよう日ひの夜よるの十じゅう時じのできごとに、うつります。

月がつ世界せかいの見世物みせものの、プラネタリウムの大おお丸屋根まるやねの下もとで、空そらに輝かがやく人工じんこうの星ほしをながめながら、いつかの金曜きんよう日ひの夜よると同おなじ、二十にじゅう面相めんそうと部下ぶかたちの大だい会議かいぎが開ひらかれていました。

頭あたまのいくつもある大だい入道にゅうどうのような、プラネタリウムの機械きかいのそばに、怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうが、りっぱな服ふくをきて、立たっていました。暗くらいので、よく見みえませんが、首くびや胸むねに金きんモールの飾かざりのついた、将軍しょうぐんのような服ふくです。これが二十にじゅう面相めんそう怪盗かいとう団だん長ちょうの制服せいふくなのです。

部下ぶかは百ひゃく人にんちかくも、集あつまっています。この間あいだの会議かいぎの倍ばいの人数にんずうです。今夜こんやは、とくべつに、全部ぜんぶの部下ぶかを集あつめたのでしょう。

前まえの方ほうのベンチには、黒くろシャツ、黒くろふくめんの部下ぶかたち、そのうしろには、火星かせい人にんに化ばけた、タコ入道にゅうどうみたいなやつが二十にじゅう人にんぐらい、そして、いちばんうしろがわのベンチには、電人Mの衣装いしょうをつけた部下ぶかが、やはり二十にじゅう人にんぐらい、ずうっとならんで、腰こしかけています。

その異様いようなありさまを、プラネタリウムの星明ほしあかりが、かすかに、照てらしだしているのです。

「諸君しょくん!」

二十にじゅう面相めんそうが、金きんモールの飾かざりを、チカチカ、光ひからせながら、演説えんぜつをはじめました。

「今夜こんやは、大だい吉報きっぽうがあるので、みんなに、残のこらず集あつまってもらった。大だい吉報きっぽうとはなにか。諸君しょくん、遠藤えんどう博士はかせの大だい発明はつめいが、いよいよ手てにはいることになったのだ。われわれは、全ぜん世界せかいを相手あいてにしても、負まけないような偉大いだいな力ちからを、持もつことになるのだ。

遠藤えんどう博士はかせはとうとう、かぶとをぬいだ。あすの晩ばん、あの大だい秘密ひみつを、おれに打うち明あけてくれることになったのだ。諸君しょくん、喜よろこんでくれたまえ。われわれは、もう、この世よに恐おそれるものは、何なんもなくなったのだぞ。」

それを聞きくと、部下ぶかたちは、みな立たち上あがりました。そして、ワーッというどよめきが起おこり、バンザイの声こえが、プラネタリウムの丸屋根まるやねいっぱいに、ひびきわたりました。

それから、部下ぶかのなかの、おもだったものが、つぎつぎと立たって、お祝いわいのことばをのべるのでした。

三さん人にんめの部下ぶかが、立たちあがって、わめくような声こえで、なにかしゃべっているときに、ふしぎなことが起おこりました。

その部下ぶかのことばが、とつぜん、へんになったのです。酒さけにでもよったように、ろれつがまわらなくなり、なにを言いっているのか、まるで、わけがわからないのです。

「いがいろうで、ばらいえん。ぐるるるろん。いや、はなれそんなんで……。」

そして、その声こえがだんだん、低ひくくなり、ねごとみたいになり、からだ全体ぜんたいから、力ちからがぬけてしまったように、くなくなと、そこへ、倒たおれてしまったのです。

みんなが、びっくりして、かけよったでしょうか。いや、だれもかけよりません。そのときには二十にじゅう面相めんそうをはじめ、全部ぜんぶの部下ぶかが、倒たおれてしまっていたからです。みんな、椅子いすからずり落おちて、思おもい思おもいの、へんなかっこうで、まるで死しんだように、横よこたわっていました。

べつに大おおきな音おともしませんでしたが、あの銀ぎんの玉たまが爆発ばくはつしたのでしょう。そして、その力ちからが、厚あついコンクリートをつきぬけて、作用さようしてきたのでしょう。

広ひろいプラネタリウムの部屋へやは、墓場はかばのように、しずまりかえってしまいました。動うごくものは、何なんもありません。ただ、天井てんじょうの人工じんこうの星ほしだけが、キラキラひかっているばかりです。

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