← Library‹ 電人M 屋上の怪人

タコ入道にゅうどうのような火星かせい人にんと、電気でんきロボットが東京とうきょうにあらわれたことは、新聞しんぶんの大おおきな記事きじによって、日本にっぽんじゅうに、知しれわたりました。

中村なかむら、有田ありた、長島ながしまの三さん少年しょうねんを驚おどろかしたのちにも、この二ふたつの恐おそろしい怪物かいぶつは、東京とうきょうの方ほうぼうにあらわれました。そして、その怪物かいぶつがきえうせたあとには、いつでも、「月がつ世界せかい旅行りょこうをしましょう」とか、「月がつ世界せかいへおいでなさい」とかいう、みょうなことを書かいた紙かみきれが落おちているのでした。

あるときは、銀座ぎんざのビルの電光でんこうニュースに、とつぜん「月がつ世界せかいへいきましょう」という文句もんくが流ながれて、大おおぜいの人ひとびとを、びっくりさせたこともあります。

また、あるときは、銀座ぎんざ通とおりの広告こうこく塔とうのラウド・スピーカーから、やっぱり、「月がつ世界せかいへおいでなさい」という声こえが、くりかえしてさけばれ、人ひとびとをふしぎがらせたこともあります。

何者なにものかが、東京とうきょうじゅうの人ひとを、月がつ世界せかいへさそっているようです。いったい、だれが、なんのために、そんなことをやっているのでしょう。

さて、そんなさわぎの起おこっている、ある日ひのこと、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの小林こばやし少年しょうねんのところへ、へんな電話でんわがかかってきました。

「きみは小林こばやし君くんだね。ぼくはデンジンMというもんだ。」

「え、どなたですか。」

「デンジンM。」

「デンジンって?」

「電気でんきの電と、人物じんぶつの人ひとだ。電気でんきの人間にんげんという意味いみだ。電人Mというのが、ぼくの名なだ。」

小林こばやし君くんはだれかが、からかっているのかと思おもいました。

「その電でん人にんMが、ぼくになんの用ようがあるのですか。」

「きみに会あいたいのだ。」

「どんな、ご用ようですか。」

「電話でんわでは言いえない。会あってから話はなす。きょう午後ごご四し時じきっかりに、日本橋にほんばしのMビルの屋上おくじょうへきてもらいたい。ぼくは屋上おくじょうで待まっているからね。」

Mビルというのは、一いち階かいに銀行ぎんこうがあって、二に階かいから六ろく階かいまで、いろいろな会社かいしゃの事務じむ所しょがある、大おおきなビルでした。小林こばやし君くんは、そのビルをよく知しっていました。

「そこで、きみにおもしろいものを見みせてあげる。これは電人Mの挑戦ちょうせんだよ。もし、きみがMビルへこなければ、きみは、ぼくに負まけたことになるのだ。」

挑戦ちょうせんと言いわれては、相手あいてが何者なにものであろうとも、あとへひくことはできません。小林こばやし君くんは四よん時じにMビルの屋上おくじょうへいくことを約束やくそくして、電話でんわを切きりました。

それから、明智あけち先生せんせいと相談そうだんして、ともかくMビルへ行いってみることにしました。いつもなら電車でんしゃに乗のるのですが、きょうは自家じか用よう車しゃを、自分じぶんで運転うんてんしていくのです。

「仮面かめんの恐怖きょうふ王おう」の事件じけんで、小林こばやし君くんとポケット小僧こぞうは、山やまの中なかにうずまっていた、ばくだいな小判こばんを発見はっけんして、そのお礼れいとして、少年しょうねん探偵たんてい団だんへ五百ごひゃく万まん円えんの寄付きふがありましたので、そのお金かねで、探偵たんてい事務じむ所しょに無電むでんの設備せつびをして、十じゅう個この携帯けいたい無線むせん電話でんわをそなえつけました。その小ちいさな箱はこを持もっていれば、どこからでも、探偵たんてい事務じむ所しょと話はなしができるのです。

それから、一いち台だいの自動じどう車しゃを買かい入いれました。「アケチ一いち号ごう」という名前なまえです。それは探偵たんてい用ようの自動じどう車しゃで、腰掛こしかけの下したに人間にんげんがかくれることもできますし、また、そこには、いろいろな変装へんそうの道具どうぐもいれてあるのです。携帯けいたい無線むせん電話でんわの箱はこも、おいてあります。自動じどう車しゃにとりつけないで、いつでも持もちだせるようになっているのです。

小林こばやし君くんは、まえから自動じどう車しゃの運転うんてんができたのですが、このアケチ一いち号ごうを買かってから、その車くるまでじゅうぶん、練習れんしゅうしましたから、すこしもあぶなげがありません。小林こばやし君くんはアケチ一いち号ごうを運転うんてんして、日本橋にほんばしのMビルの前まえに車くるまをとめておいて、エレベーターで屋上おくじょうにのぼりました。まだ四よん時じには二に―三さん分ふんあります。

広ひろい屋上おくじょうには、人ひとかげもありません。昼ひるごはんのあとは、会社かいしゃの人ひとでにぎわうのですが、いまはもう夕方ゆうがたに近ちかいので、だれも屋上おくじょうにあがっている人ひとはないのです。屋上おくじょうには、両方りょうほうのはしに、出入口でいりぐちがついています。小ちいさな小屋こやのようなもので、そこにエレベーターと階段かいだんがあるのです。

腕うで時計とけいが、ちょうど、四よん時じをさしたとき、そのいっぽうの出入でいり口くちのドアが開ひらいて、変へんなものが出でてきました。

大おおきなロボットです。からだは鉄てつでできているようです。頭あたまは、すきとおったプラスチックで、その中なかに機械きかいがいっぱいならんでいます。二ふたつの赤あかい光ひかりが、チカッ、チカッと、ついたり消きえたりしていて、それが赤あかい目めのように見みえるのです。

「あっ、あいつが、電人Mだなっ。」

小林こばやし君くんは、とっさに、そう考かんがえました。そして、じっと、待まっていますと、ロボットは、機械きかいのような歩あるき方かたで、こちらへ進すすんできました。

「おお、小林こばやし君くん、よくきたね。いまに、おもしろいことが、はじまるから、見みていたまえ。」

ロボットが、へんなしわがれ声こえで、言いいました。

小林こばやし君くんは、こいつが新聞しんぶんに出でていたあのロボットだなと、思おもいました。風船ふうせんのように、空そらへとんでいった、あのロボットと同おなじやつだろうと、考かんがえたのです。

ロボットは、屋上おくじょうの手てすりのところへいって、はるか下したの道路どうろを見みおろしました。

そこには、都電とでんが通かよっています。たくさんの自動じどう車しゃが、走はしっています。それがマッチの箱はこのように小ちいさく見みえるのです。人道じんどうには、豆粒まめつぶのような人ひとが、ゾロゾロと歩あるいています。

ロボットは、右手みぎてに、厚あつぼったい紙かみのたばを持もっていましたが、その右手みぎてを、たかくあげたかとおもうと、紙かみたばを、パッと、下したの道路どうろにむかって、投なげおろしました。

紙かみが一いち枚まい一いち枚まいはなれて、ひろがって、まるで雪ゆきのように、チラチラと降ふっていきます。美うつくしいながめです。下したの道路どうろを歩あるいていた人ひとたちが、それに気きづいて、空そらを見みあげています。両手りょうてをひろげて、待まちかまえている人ひともあります。

白しろい紙かみきれは、人ひとびとの頭あたまの上うえをかすめて、地面じめんに落おちました。みんなが、争あらそってそれを拾ひろっています。その紙かみきれには、

月がつ世界せかいへおいでなさい

と、印刷いんさつしてあったのです。

この紙かみを投なげたのは、だれだろうと、みんながMビルの屋上おくじょうを見みあげました。

ロボットは平気へいきで、手てすりによりかかって、下したをのぞいています。

地面じめんからワーッという声こえが、聞きこえてきました。みんなが、恐おそろしいロボットを見みて、さけんでいるのです。

やがて、向むこうから、ふたりの警官けいかんが、かけつけてきました。そして、Mビルの入口いりぐちから、中なかへはいってくるのが見みえました。それでも、ロボットは、もとの姿勢しせいのまま、動うごくようすはありません。

いまに、あの警官けいかんが屋上おくじょうにあがってきたら、どうするだろうと、かえって小林こばやし君くんのほうがしんぱいになるほどでした。

それから、いきづまるような数すう分間ふんかんがすぎました。

すると、はたしてむこうの出入でいり口くちから、ふたりの警官けいかんと、おおぜいの背広せびろの人ひとたちがかけだしてきました。

「あっ、あそこにいる。」

だれかが、大おおきな声こえでさけびました。

そのときロボットは、やっとてすりをはなれて、人ひとびとのほうを見みました。

「小林こばやし君くん、いいかい。これから、おもしろいことがおこるんだ。きみのちえをはたらかせるときだよ。」

そういったかとおもうと、ロボットは、やにわにむきをかえて、べつの出入でいり口くちのほうへかけだしたのです。機械きかいのようなへんなはしりかたですが、その早はやいこと。

小林こばやし君くんもあとをおって、かけだしました。小林こばやし君くんはむろん、警官けいかんのみかたです。

警官けいかんたちは、ロボットがにげだすのを見みて、いっそう足あしを早はやめたので、だんだんへだたりがちぢまってきます。

ロボットは階段かいだんをかけおりて、六ろく階かいにおり、そこの廊下ろうかをはしっていって、ひとつの部屋へやにとびこむと、中なかからかぎをかけてしまいました。小林こばやし少年しょうねんはドアのまえに立たったまま、みんなのくるのをまっているほかはないのでした。

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