← Library‹ おれは二十面相だ 電話の秘密

明智あけちが受話じゅわ器きをおいて、そのことを伝つたえると、所長しょちょうの松波まつなみ博士はかせと、小林こばやし少年しょうねんは、顔かおを見合みあわせて驚おどろきました。

「しかし、わたしは、さっき、あちらの部屋へやの電話でんわで、たしかに一いち一いち〇れい番ばんへかけたのですが、そうすると、ほんとうのパトカーは、まだやって来こないのでしょうか。」

松波まつなみ博士はかせが、ふしんそうに、つぶやきました。

「そんなはずはありません。さっきから、ずいぶん時間じかんがたってます。パトカーがそんなにおくれるはずはありません。これにはなにかわけがあるのです。」

明智あけちはそう言いって、前まえにある電話でんわのダイヤルを回まわして、受話じゅわ器きを耳みみにあてていましたが、

「おかしい、電話でんわが故障こしょうのようです。調しらべてみましょう。」

といって、エジプト室しつからかけ出だすと、むこうの博士はかせの研究けんきゅう室しつにはいって、そこの電話でんわをかけてみましたが、これもだめなことがわかりました。

明智あけちはそれから、電話でんわ線せんを調しらべたり、窓まどを開ひらいて、暗くらい庭にわをのぞいたりしていましたが、なにを思おもったのか、いきなり、部屋へやを飛とび出だして、階段かいだんをかけおり、庭にわへ出でていくのです。

庭にわのすみに小ちいさい物置ものおき小屋こやがあります。明智あけちは用意よういしていた懐中かいちゅう電灯でんとうをつけて、その小屋こやの戸とを開ひらき、中なかをのぞきこみました。

「あっ、ここです。ここに電話でんわ器きがあります。」

と叫さけびました。

「二十にじゅう面相めんそうは、あの二ふたつの電話でんわの線せんを切きって、別べつの線せんでこの電話でんわにつないでおいたのです。そして、ここに部下ぶかを待またせておいて、一いち一いち〇れい番ばんの警官けいかんのような声こえで、答こたえたのです。ですから、ほんとうの一いち一いち〇れい番ばんへは、電話でんわはかからなかったのですよ。」

これで、ほんもののパトカーが、来こないわけがわかりました。

「いつのまに、こんな準備じゅんびをしたのか、おそろしいやつです。」

松波まつなみ博士はかせは、あきれかえって、つぶやくのでした。

小林こばやし少年しょうねんは明智あけち探偵たんていのさしずで、門もんの外そとへかけ出だしていって、赤あか電話でんわで、警視けいし庁ちょうにこのことを知しらせました。

博士はかせと明智あけち探偵たんていは、もとのエジプト室しつにもどって、話はなし合あっていました。

「それにしても、エジプトの巻まき物ものが助たすかったのは、ありがたいです。犯人はんにんには逃にげられたけれども、巻まき物ものの箱はこはちゃんとここにありますからね。

まったく明智あけちさんのおかげです。」

松波まつなみ博士はかせは、テーブルの上うえの銀ぎんの箱はこをひらき、中なかに巻まき物ものがはいっているのを確たしかめながら、お礼れいを言いうのでした。

「しかし、まだ油断ゆだんはできません。こんどは、どんな手てで盗ぬすみ出だしにくるかもしれません。できるなら、このエジプト室しつには、銀ぎんの箱はこだけをおいて、中なかの巻まき物ものはべつの箱はこに入いれて、どこか、ほかの場所ばしょへかくしたほうがいいのですがね。」

明智あけちが言いいますと、博士はかせもうなずいて、

「わたしも、それを考かんがえていたところです。わたしは世田谷せたがや区くの静しずかな町まちに、自分じぶんのすまいを新築しんちくして、それができあがったばかりなのです。この巻まき物ものを、なんでもない木きの箱はこに入いれて、毎日まいにちそのすまいのほうへ、持もって帰かえることにしようと思おもいます。」

「そうなさったほうがいいでしょう。なるべく目めだたない、つまらない木きの箱はこに入いれてね。」

それからしばらくすると、警視けいし庁ちょうの中村なかむら警部けいぶが、三さん人にんの部下ぶかを引ひきつれてかけつけてきましたが、これという、新あたらしい発見はっけんがあったわけでもありませんから、そのことははぶきます。

さて、木箱きばこに入いれた巻まき物ものの運命うんめいはどうなるのでしょう。むろん、二十にじゅう面相めんそうは、それを盗ぬすみ出だすことをあきらめてはいません。やがて、また、二十にじゅう面相めんそうはふしぎな魔法まほうをつかい、なんとも、えたいのしれない、恐おそろしいことをはじめるのです。

それから三み日か目めの夜よる、松波まつなみ博士はかせの新あたらしい家いえの中なかで、ふしぎなできごとがおこったのですが、それを見みたのは、博士はかせ邸ていのとなりに住すんでいる西村にしむらさんという、会社かいしゃの重役じゅうやくの子こどもの正一しょういち君くんでした。

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