← Library‹ 妖星人R 名探偵登場

小林こばやし、井上いのうえの二に少年しょうねんが、ひとりの紳士しんしをたすけて、カニ怪人かいじんのすみかを、ぬけだした、ちょうどそのころ、岩谷いわたに美術びじゅつ館かんの館長かんちょう室しつには、館長かんちょうの古山ふるやま博士はかせと、警視けいし庁ちょうの中村なかむら警部けいぶと、私立しりつ探偵たんていの明智あけち小五郎こごろうの三さん人にんが、テーブルをはさんで、はなしあっていました。

美術びじゅつ館かんの陳列ちんれつ品ひんが一夜いちやのうちに、ねこそぎぬすまれるという、とほうもない事件じけんがおこり、いくらしらべても、そのやりかたがわかりませんので、古山ふるやま博士はかせが、明智あけち探偵たんていの知恵ちえをかりてはどうかといいだし、中村なかむら警部けいぶが、友ともだちの明智あけち探偵たんていをつれてやってきたのです。

古山ふるやま博士はかせは、いままでのことを、くわしく、明智あけち探偵たんていにはなしました。

まずさいしょ、古山ふるやま博士はかせの自宅じたくへ、カニ怪人かいじんがあらわれ、書庫しょこの中なかの推古すいこ仏ふつをぬすんで、そのまま消きえうせてしまったこと。

それから、美術びじゅつ館かんの庭にわや地下ちか室しつのコンクリートの床ゆかから、カニ怪人かいじんがわきだすようにあらわれたり、消きえたりしたこと。そして、一夜いちやのうちに、美術びじゅつ品ひんがねこそぎぬすみさられたことなどを、じゅんじょをおって、はなしました。

その話はなしが、おわったころ、ドアがひらいて、ひとりの警官けいかんがはいってきました。そして明智あけち探偵たんていのそばによって、なにかささやきました。美術びじゅつ館かんのまわりには、まだ、数すう人にんの警官けいかんが見みはりをつづけているのですが、この警官けいかんはその中なかのひとりでした。

「ちょっと、失礼しつれいします。」

明智あけち探偵たんていは、そういって、警官けいかんといっしょに、部屋へやを出でていきました。

どこへいったのでしょう。ひどく、てまどるようです。やがて十じゅう分ふんもたったころ、やっと明智あけち探偵たんていが、かえってきました。

明智あけちはみょうな顔かおをしていました。なんだか、くるしそうです。なにかをじっと、がまんしてるようです。

しかし、もうがまんができなくなりました。名めい探偵たんていは、おかしくてたまらないというように、いきなり、わらいだしたではありませんか。

「ハハハハ……、いや、しつれい。あまりおかしいものだから、つい、わらってしまいました。古山ふるやま博士はかせ、それから中村なかむら君くん、大笑おおわらいだよ。日本にっぽんじゅうの、いや、世界せかいじゅうの大笑おおわらいだよ。」

古山ふるやま博士はかせと中村なかむら警部けいぶは、あっけにとられて、明智あけち探偵たんていの顔かおを見みつめました。なにがおかしいのか、すこしもわからないからです。

「新聞しんぶんがだまされたのです。いや、われわれみんなが、だまされたのです。あいつは世界せかい一いちの奇術きじゅつ師しです。ふしぎなすい星せいがあらわれたのは事実じじつです。しかし、そこにカニのような怪物かいぶつがすんでいるなんて、うそっぱちですよ。千葉ちば県けんの海うみの中なかからあらわれたやつ、それから東京とうきょうをさわがせたやつは、すい星せい人にんではなくて、地球ちきゅうの人間にんげんにすぎません。

あのすい星せいがあらわれたのを、さいわいに、すい星せい人にんにばけて、世界せかいをあっといわせようと、たくらんだのです。じつに、とほうもない考かんがえです。

新聞しんぶんが、そのたくらみに、ひっかかりました。そして、世界せかいじゅうの、うわさの種しゅになったのです。この大だい奇術きじゅつを考かんがえだしたやつは、さぞ、とくいがっていることでしょう。世界せかいをだましたのですからね。大笑おおわらいですよ。世界せかいじゅうの大笑おおわらいですよ。」

明智あけち探偵たんていは、そういって、また、わらいだすのでした。

しかし、博士はかせと警部けいぶには、なにがなんだかわかりません。

「しかし美術びじゅつ館かんの陳列ちんれつ品ひんを、ねこそぎぬすみだすなんて、人間にんげんわざでは、とてもできないことだし、そのほか、説明せつめいのつかないふしぎなことが、たびたびおこっている。」

中村なかむら警部けいぶが、明智あけちの顔かおを、にらみつけるようにしていうのでした。

「順序じゅんじょをおって、はなしましょう。もう、ぼくには、すべての秘密ひみつがわかっているのだ。まず、さいしょのふしぎは、古山ふるやま博士はかせの書庫しょこから、カニ怪人かいじんが消きえうせたことですね。」

明智あけちがそこまでいったとき、いきなりドアがあいて、三さん人にんの警官けいかんがはいってきました。そして、明智あけち探偵たんていの目めのさしずにしたがって、入口いりぐちのドアと、二ふたつの窓まどの前まえに、ひとりずつ立たち番ばんをはじめました。だれも、この部屋へやから、にげだせなくなったのです。

それにしても、これは、いったい、どうしたわけでしょう。この部屋へやには、古山ふるやま博士はかせと、中村なかむら警部けいぶと、明智あけち探偵たんていの三さん人にんだけで、にげださなければならないような人ひとは、だれもいないではありませんか。

「カニ怪人かいじんが、書庫しょこから消きえたわけを、おはなしします。」

明智あけちがつづけました。

「カニ怪人かいじんは、うすいプラスチックでできた、よろいのようなものをきていて、中なかには人間にんげんがはいっていたのです。ですから、てばやく、そのよろいを、ぬいでしまえば、人間にんげんにもどるわけで、そこに、あいつの手品てじなの種たねがあったのです。

カニのよろいは、たためば、ちいさくなるようにできていました。書庫しょこには木きの箱はこがたくさんおいてあります。あいつは、大おおいそぎで、その木箱きばこのひとつに、ぬすんだ推古すいこ仏ふつと、おりたたんだカニのよろいとを、かくしたのです。

あとで、みんなが、書庫しょこの中なかを、くまなく、さがしました。カニ怪人かいじんが、かくれていないかと、さがしたのです。本ほんだなの本ほんのうしろまで、さがしました。しかし、カニ怪人かいじんがはいれそうもない、小ちいさな木箱きばこなどは、しらべなかったのです。あいつの、おもうつぼにはまったのです。では、カニのよろいをぬいだ犯人はんにんは、どこにいたのか。それは、みんなが書庫しょこの内うちがわの、観音かんのんびらきのとびらを、おしあけてはいっていったとき、とびらのうしろにかくれていて、みんなが書庫しょこのおくをさがしているときに、あとからきたような顔かおをして、姿すがたをあらわしたのです。

あのとき、さいごに、書庫しょこへはいってきたのは、だれでしたか。」

「それは、わたしでした。わたしは、あのとき、母屋おもやにいたので、庭にわにいた刑事けいじさんたちより、ちょっと、おくれたのですよ。」

「ところが、あのとき、あなたが、母屋おもやにいたかどうか、だれも見みていたものはありません。カニのよろいをきて、庭にわの土つちをほって、半分はんぶんほどからだをうずめ、そこから、はいだしたように見みせかけて、書庫しょこにはいり、てばやく、カニのよろいをぬいで、かくしてしまえば、それでよかったのです。」

「ハハハハ……、これはおかしい。きみはなにをいいだすのです。あのぬすまれた推古すいこ仏ふつは、わたしの美術びじゅつ館かんのものですよ。自分じぶんのものを、自分じぶんでぬすむなんて、そんなばかなことが、ハハハ……。」

古山ふるやま博士はかせが、あきれたように、わらいだしました。

「そうです。だれでも、そうおもいます。自分じぶんで自分じぶんのものをぬすむやつはありません。しかし、あいつは、そこにつけこんで、魔法まほうをつかってみせたのです。妖星ようせい人にんRというふしぎな生いきものが、地球ちきゅうへやってきたとおもわせようとしたのです。

ところで、第だい二にのふしぎな事件じけんは、あなたがたも、ぼくも見みていません。これを見みたのは、井上いのうえ君くんという少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんです。その井上いのうえ君くんをここに呼よびましょう。」

それをきくと、古山ふるやま博士はかせが、ギョッとしたように、いすから立たちあがりました。

「博士はかせ、おちついてください。まだ、ぼくははなしはじめたばかりです。これから本題ほんだいにはいるのです。いすにかけてください。」

古山ふるやま博士はかせは、青あおざめた顔かおで、部屋へやの中なかを見みまわしました。入口いりぐちにも、二ふたつの窓まどにも、つよそうな警官けいかんが立たちはだかっています。とてもにげだすことはできません。

明智あけち探偵たんていがドアの前まえに立たっている警官けいかんに、あいずをすると、警官けいかんはドアをひらいて、廊下ろうかにまっていた、ふたりの少年しょうねんを、中なかにいれました。小林こばやし君くんと井上いのうえ君くんです。怪人かいじんのすみかをぬけだしたときのカニのよろいはぬいで、ふだんの服ふくをきていました。

古山ふるやま博士はかせは、少年しょうねんたちの姿すがたを見みると、

「あっ、しまった。」というような表情ひょうじょうでキョロキョロと、あたりを見みまわすのでした。

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