← Library‹ 妖星人R 怪電話

日本にっぽんじゅうが、いや、世界せかいじゅうが、笑わらいにつつまれるときがきました。

妖星ようせい人にんRのカニ怪人かいじんが、日本にっぽんにあらわれたことは、世界せかいじゅうの新聞しんぶんにのせられたのです。そのカニ怪人かいじんが、じつはにせもので、怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうという宝石ほうせきどろぼうが、ばけていたのだとわかったときには、世界せかいじゅうがあっとおどろき、あまりのことに、笑わらいだしてしまったのです。

中村なかむら警部けいぶは、二十にじゅう面相めんそうを警視けいし庁ちょうへつれていくのに、普通ふつうの自動じどう車しゃでは、安心あんしんができないと思おもったので、電話でんわで、げんじゅうな犯人はんにん護送ごそう車しゃをよび、二十にじゅう面相めんそうに手錠てじょうをはめ、ふたりの警官けいかんをつきそわせて、その護送ごそう自動じどう車しゃにのせることにしました。

護送ごそう車しゃが出発しゅっぱつすると、明智あけち探偵たんていと、中村なかむら警部けいぶと、のこったひとりの警官けいかんとは、美術びじゅつ館かんの中なかを、あるきまわって、二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかが、どこかにかくれていないかと、しらべましたが、なにも発見はっけんすることはできませんでした。

館内かんないをしらべおわったとき、明智あけち探偵たんていは、ある部屋へやの窓まどの外そとをのぞいていましたが、なにをみつけたのか、あっと声せいをたてました。

「明智あけち君くん、どうしたんだ。」

中村なかむら警部けいぶが、おどろいてたずねます。

「あれをみたまえ。あそこに物置ものおき小屋こやがある。そのやねの下したに、電線でんせんがひっぱってあるじゃないか。あれは電灯でんとう線せんではない。電話でんわ線せんのようだ。物置ものおき小屋こやに電話でんわ線せんがひいてあるのはおかしいね。」

こちらの部屋へやの電灯でんとうが、ガラス窓まどをとおして、むこうの物置ものおき小屋こやをボンヤリてらしています。そのやねの下したに、かすかに電線でんせんが見みえているのです。

「いってみよう。」

明智あけちはいいすてて、部屋へやをとびだしていきました。中村なかむら警部けいぶと警官けいかんも、そのあとにつづきます。

庭にわへ出でて、物置ものおき小屋こやへいくと、明智あけちはいきなり、その小屋こやの戸とをひらきました。

「やっぱりそうだ。ここに電話でんわ器きがある。」

明智あけちが、さけびました。

物置ものおきのすみに、電話でんわ器きがおいてあるのです。

「きみ、小使こづかいをよんできてくれませんか。」

明智あけちのことばに、中村なかむら警部けいぶのあとからついてきた警官けいかんが、むこうへかけだしていきましたが、やがて、美術びじゅつ館かんの小使こづかいさんをつれて、もどってきました。

「ここに、前まえから電話でんわがひいてあったのかね。」

明智あけちにたずねられて、小使こづかいさんは、びっくりして、小屋こやの中なかをのぞきこみました。

「おやっ、いつのまに、こんな電話でんわが……。いいえ、いま見みるのがはじめてです。こんな物置ものおき小屋こやに電話でんわをひくはずがありませんよ。」

「やっぱりそうだ。これは二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかがひいたのだよ。」

明智あけち探偵たんていが、中村なかむら警部けいぶに説明せつめいしました。

「二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかは、ここにかくれて、美術びじゅつ館かんからの電話でんわを、ぬすみぎきしていたんだよ。用心ようじんぶかい二十にじゅう面相めんそうは、自分じぶんに危険きけんがせまったときには、なにか、うまい方法ほうほうで、たすかるくふうをしておいたのにちがいない。」

明智あけちはそこで、ふっとだまりこんでしまいました。なにか考かんがえています。やがて、明智あけちの目めがキラっとひかりました。

「あっ、そうだ。あれがあやしい。中村なかむら君くん、いま二十にじゅう面相めんそうをのせていった護送ごそう車しゃは、ほんとうに警視けいし庁ちょうからきたのかね。」

「なんだって? きみは、あれがにせものだったというのか。」

「うん、そうなんだ。もう一いち度ど警視けいし庁ちょうへ電話でんわをかけて、たしかめてくれたまえ。」

それをきくと、中村なかむら警部けいぶはあわてて、美術びじゅつ館かんのほうへかけだしていきました。

あとにのこった明智あけちは、物置ものおき小屋こやの受話じゅわ器きを耳みみにあてました。警官けいかんと小使こづかいさんは、そのそばに立たって、明智あけちの顔かおを見みつめています。

「あっ、中村なかむら君くんの声こえがきこえる。警視けいし庁ちょうが出でたよ。……やっぱりそうだ。警視けいし庁ちょうでは、護送ごそう車しゃを送おくったおぼえがないといっている。さっき中村なかむら君くんが警視けいし庁ちょうへ電話でんわをかけたとき、この電話でんわで、ぬすみぎきしていたやつが、電話でんわ線せんのスイッチをきって、警視けいし庁ちょうのかわりに、自分じぶんがこたえたんだ。ためしに、やってみようか。」

明智あけちはそういって、電話でんわ器きの横よこにあるスイッチをきりかえました。

「もしもし、ぼくだよ。明智あけちだよ。」

「あっ、物置ものおき小屋こやからだね。すると……。」

中村なかむら警部けいぶのびっくりした声こえです。

「そうなんだ、ここにかくれていた二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかのやつが、警視けいし庁ちょうだといって、きみと話はなしをしたんだ。そして、護送ごそう車しゃを送おくることをひきうけて、電話でんわをきったのだから、警視けいし庁ちょうはなにもしらない。あの護送ごそう車しゃは警視けいし庁ちょうからきたのじゃない。」

「じゃあ、どこからきたのだ。」

「二十にじゅう面相めんそうのどこかのかくれがからきたのさ。二十にじゅう面相めんそうは、まんいちの場合ばあいにそなえて、にせの護送ごそう車しゃをつくっておいたのだ。そして、それにのりこんで、にげだしたというわけだよ。」

「しかし、部下ぶかがふたり、のりこんでいる。」

「あのふたりは、ひどいめにあっているかもしれないよ。

すぐ、手配てはいするように、もう一いち度ど警視けいし庁ちょうへ電話でんわしたまえ。どの方角ほうがくへにげたかわからないが、とくちょうのある護送ごそう車しゃだから、うまくつかまるかもしれない。」

「よし、それじゃ、スイッチをきってくれたまえ。」

そして、警視けいし庁ちょうに電話でんわがかけられ、東京とうきょうのぜんぶの警察けいさつに、にせ護送ごそう車しゃのことが、つたえられたのでした。

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%