← Library‹ 妖星人R 壁から手が

手錠てじょうをはめられた二十にじゅう面相めんそうは、ふたりの警官けいかんにまもられて、護送ごそう自動じどう車しゃにのりこみました。四角しかくな箱型はこがたで、出入でいり口くちのドアはうしろについています。あかりとりの小窓こまどばかりで、外そとをながめるような窓まどはありません。

片かたがわが、たてにながいいすになっています。ふつうの護送ごそう車しゃは、両りょうがわにいすがあるのに、これは片かたがわにしかありません。

ふたりの警官けいかんは見みなれない護送ごそう車しゃだとおもいましたが、運転うんてん席せきにはふたりの制服せいふく警官けいかんがのっていて警視けいし庁ちょうの車くるまにちがいないので、べつにあやしみもしません。二十にじゅう面相めんそうをまんなかにはさんで、そこに腰こしをおろしました。

護送ごそう車しゃが出発しゅっぱつして、五ご分ふんも走はしったとおもうころ、おそろしいことがおこりました。

ふたりの警官けいかんが、腰こしかけているうしろの、窓まどのない鉄板てっぱんの壁かべから、ヌーッと四よん本ほんの手てが、あらわれたではありませんか。

鉄板てっぱんの人間にんげんの首くびの高たかさぐらいのところに、よこにずっと、すきまができていて、ちょうつがいで、ふたがさがっているのです。そのふたを、なかのほうへ、もちあげて、ひらいたすきまから、四よん本ほんの手てが、ふたりの警官けいかんの首くびのあたりへのびてきたのです。

この護送ごそう車しゃは、片かたがわの壁かべが、人間にんげんがかくれるほど、あつくできていたのです。そこにふたりの人間にんげんがかくれていて、すきまから、両手りょうてを出だしたのです。

二十にじゅう面相めんそうをまもっている、ふたりの警官けいかんの首くびの両りょうがわから、二に本ほんの手てがあらわれ、一方いっぽうの手てには、ハンカチのような白しろい布ぬのがにぎられていました。

あっとおもうまに、その白しろい布ぬのが、ふたりの警官けいかんの口くちに、おしつけられ、両手りょうてでグッと、おさえられました。

警官けいかんはおどろいて、その手てをはねのけようとしましたが、おそろしい力ちからでしめつけているので、どうすることもできません。口くちにあてられた白しろい布ぬのからは、なんともいえない、いやなにおいが、のどのおくへ、はいっていきます。そして、しばらくすると、スーッと気きがとおくなっていきました。その布ぬのには麻酔ますい剤ざいが、しみこませてあったのです。

まもなく、ふたりの警官けいかんは、グッタリとなって、いすの上うえに、のびてしまいました。

「よし、もうだいじょうぶだ。このふたりをねかしたまま、車くるまをどこかさびしいところにすてるんだ。そして、にげだすのだ。明智あけちのやつ、いまごろは、あのかくし電話でんわに気きがついたかもしれない。そして東京とうきょうじゅうの警察けいさつに、手配てはいをしたのかもしれない。いつまでもこの車くるまにのっていては、あぶないのだ。」

二十にじゅう面相めんそうは、いすのうしろの壁かべの中なかにかくれている部下ぶかに、はなしかけながら、カチンと、手錠てじょうをはずしてしまいました。かれは手錠てじょうぬけの名人めいじんなのです。

それから、いすの前まえにしゃがんで、クッションの下したの、かくし戸とをひらき、大おおきなひきだしを、ひっぱりだしました。

その中なかに変装へんそうの道具どうぐがはいっているのです。二十にじゅう面相めんそうは、そこからかがみを出だして、自分じぶんの顔かおをうつしながら、変装へんそうをはじめました。そして、六ろく―七なな分ふんのあいだに、ちがった服ふくをきた、ちがった顔かおの、まったくべつの人間にんげんになってしまいました。

いままでは古山ふるやま博士はかせにばけていたのですが、こんどは六十ろくじゅうぐらいの老人ろうじんにかわったのです。

そのとき、車くるまはさびしい原はらっぱに、とまっていました。

「さあ、みんなおりるんだ。この車くるまはすてておけばいい。そのうち、だれかがみつけて、このおまわりさんたちを、たすけてくれるだろう。」

老人ろうじんにばけた二十にじゅう面相めんそうは、うしろのドアをひらいて、外そとにとびおりました。運転うんてん台だいのふたりの部下ぶかが、とびだしてきました。このふたりとも、いつのまにか、警官けいかんの制服せいふくをぬいで、ジャンパー姿すがたに、かわっていました。

そのあとから、秘密ひみつのかくれ場所ばしょをぬけだした、ふたりの部下ぶかがおりてきました。このふたりもジャンパーをきています。そして二十にじゅう面相めんそうと四よん人にんの部下ぶかは、暗くらい原はらっぱをよこぎり、どこともしれず、たちさってしまいました。

明智あけち探偵たんていはみごとに二十にじゅう面相めんそうの秘密ひみつをあばきました。そして、かれをとらえたのですが、二十にじゅう面相めんそうは、いつものように、さいごのおくの手てを用意よういしていました。にせ護送ごそう車しゃのおくの手てです。

明智あけちは、かくし電話でんわの発見はっけんから、にせ護送ごそう車しゃにもすぐ気きがつき、いそいで手配てはいをしたのですが、とうとうまにあいませんでした。二十にじゅう面相めんそうはにせ護送ごそう車しゃを、おしげもなくすてて、にげだしてしまったからです。

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