← Library‹ 妖星人R 名探偵と怪人二十面相

まだふりつづいていたカニ円盤えんばんが、つぎつぎと、少年しょうねんたちの頭あたまの上うえへおりてきました。いやらしいすじのある、あの白しろっぽい腹はらを見みせて……。

さいしょに、ねらわれたのは、井上いのうえ少年しょうねんです。円盤えんばんがグーッと頭あたまの上うえに、せまってきたので、びっくりして、にげだしましたが、円盤えんばんは、にげるほうへにげるほうへと、ついてくるのです。

そして、あの大木たいぼくのような二に本ほんのはさみが下したへのびて、井上いのうえ君くんの両方りょうほうの腕うでを、はさみこんでしまいました。そして、こんどは、ぎゃくに空そらへと、まいあがっていきます。井上いのうえ君くんはカニのはさみにはさまれたまま、高たかく高たかく、天てんにのぼっていくのです。

おなじことが十じゅう五ご人にんの少年しょうねんたちに、つぎつぎと、おこりました。ワシがあかんぼうをさらうように、カニ円盤えんばんがスーッとおりてきては、少年しょうねんをはさんで、空そらへのぼっていくのです。十じゅう五ごのカニ円盤えんばんが、ひとりずつ少年しょうねんをぶらさげて、とびあがっていくのです。

飛行ひこう機きやヘリコプターに乗のっているのとはちがいます。大おおきなカニのはさみにはさまれて、ぶらさがっているのですから、いつおとされるかわかりません。おとされたら、命いのちはないのです。

小林こばやし少年しょうねんは、カニ円盤えんばんにぶらさがったまま、考かんがえました。

「どうも、ふしぎだ。ほんとうかしら。夢ゆめをみているんじゃないかしら。」

そうです。おそろしい夢ゆめに、うなされているような気持きもちです。頭あたまがボンヤリしています。すべてが、かすみをとおして見みるようなかんじです。

小林こばやし君くんは、気力きりょくをふるいおこして、頭あたまをはっきりさせようとしました。夢ゆめをさまそうとしました。しかし、どうしてもかすみがとれません。自分じぶんの心こころが、なにか、おそろしい力ちからで、思おもわぬ方角ほうがくへむけられているような気きがします。

ふと気きがつくと、あたりはまっくらになっていました。日ひがくれるにしては、まだ早はやいし、こんなに急きゅうに暗くらくなるはずがありません。

暗くらくても、自分じぶんの上うえや下したに、ひとりずつ少年しょうねんをぶらさげた、十じゅう五ごのカニ円盤えんばんが、飛とんでいるのはよく見みえます。おちついた少年しょうねんは、宙ちゅうにぶらさげられても、じっとしていますが、おくびょうな少年しょうねんは、泣なきさけびながら、もがいています。もがけば、かえってあぶないのですが、そんなことを考かんがえるよゆうもないのでしょう。いちばん大おおきな声こえで、泣なきさけんでいるのは、野呂のろ一平いっぺい君くんのノロちゃんでした。

下したを見みると、まっくらで、おくそこがしれず、どのくらい高たかくとんでいるのか、見当けんとうもつきません。ふつうなら、どんな夜中よなかでも、町まちの火ひが見みえるはずですが、一ひとつの火ひも見みえません。それほど高たかくのぼってしまったのでしょうか。

「ワハハハハ……。」

あの、ききおぼえのある二十にじゅう面相めんそうの声こえが、どこからか、ひびいてきました。

「ワハハハハ……、どうだ、こわいか。さすがの少年しょうねん探偵たんてい団だんも、こうなったら、いくじがないね。きみたちが、さんざんおれのじゃまをしたおれいだ。わかったか。いまに、もっとおそろしいことがおこるぞ。」

そして、たちまち、そのおそろしいことがおこったのです。

小林こばやし君くんの、両方りょうほうの腕うでをはさんでいた、カニのはさみが、パッとひらき、小林こばやし君くんのからだは、まっくらな空中くうちゅうを、サーッと下したへおちてきました。

おくそこのしれない深ふかさです。はじめは、まっすぐにおちていましたが、いつのまにか、おもい頭あたまのほうが下したになり、まっさかさまについ落おとしていくのです。

そんななかでも、あたりの空中くうちゅうを見みまわすと、十じゅう五ご人にんの少年しょうねんたちが、ぜんぶおちてくるのがわかりました。みんな、まっさかさまです。風かぜをきって、おちてゆきます。ノロちゃんの泣なきさけぶ声こえが、空中くうちゅうに尾おをひいて、下したへ下したへと、おちていくのです。

おちる速度そくどは、みるみる速はやくなっていきます。ヒューッ、ヒューッと、風かぜを切きる音おとが、耳みみをかすめます。しかし、いつまでおちても、下したへ着つかないのです。地面じめんにぶっつかったら、死しんでしまうにきまっていますが、そのときが、いつまでたっても、こないのです。速度そくどはいよいよ速はやくなりました。もう人間にんげんの力ちからでは、たえられないほどの速はやさです。さすがの小林こばやし君くんも、とうとう気きをうしなってしまいました。ほかの少年しょうねんたちは、もっと早はやく気きをうしなっていました。十じゅう五ご少年しょうねんは、失神しっしんしたまま、まっくらな空間くうかんを、いつまでも、下したへ下したへとおちていくのでした。

それからどのくらいたったかわかりません。小林こばやし君くんは、ふっと目めをひらきました。

もう風かぜを切きる音おとはきこえません。シーンとしずまりかえっています。ここは原はらっぱでなくて、広ひろい部屋へやの中なかのようです。うすぐらい電灯でんとうの光ひかりで、そばにおおぜいの少年しょうねんたちが、ゴロゴロころがっているのが見みえます。みんな、まだ気きをうしなったままなのでしょう。

部屋へやの中なかに一いちヵ所かしょ、スポットライトをあてたように、まぶしいほどあかるいところがありました。

「あっ、明智あけち先生せんせいっ。」

そうです。そこに名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうが立たっていたのです。それにむかいあって立たっているのは、メフィスト姿すがたの怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうでした。ああ、巨人きょじんと怪人かいじんは、五十ごじゅうセンチの近ちかさで、顔かおと顔かおとむきあわせて、じっとにらみあっていたのです。

二十にじゅう面相めんそうの四角しかくいめがねのおくの目めは、とびだすほど見みひらかれています。そして、かれのひたいからは、タラタラと、汗あせが流ながれているのです。

明智あけち探偵たんていの目めも、おそろしい光ひかりをはなって、二十にじゅう面相めんそうをにらみつけていました。探偵たんていの顔かおには、汗あせはながれていません。

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