← Library‹ 赤いカブトムシ 11

ちか室しつのてんじょうが大おおきく開ひらいて、おとなの三さんばいもあるせいどうのまじんが、ふわふわとちゅうにうき、そのまま空そらの方ほうへまい上あがっていきました。

まじんの足あしにしがみついていた井上いのうえ一郎いちろうくんも、いっしょに、空そらへまい上あがっていくのです。

「おうい、井上いのうえ君くん、手てをはなせよ。そして、下したへとびおりるんだっ。」

下したから、小林こばやしくんが、大声おおごえでさけびました。

まじんの足あしは、ちか室しつのゆかから、もう三さんメートルもうき上あがっていましたが、井上いのうえくんは思おもい切きって手てをはなし、ぱっととびおりました。

そして、コンクリートのゆかにしりもちをついて、かおをしかめています。

「あいつ、赤あかいカブトムシを口くちに入いれたまま、とんでいってしまったよ。早はやく追おっかけなけりゃあ。」

「よしっ。なわばしごだっ。」

小林こばやしくんはそうさけぶと、おなかのシャツの下したにまきつけていた、じょうぶなきぬひものなわばしごをするするとほどいて、その一方いっぽうのはしについている鉄てつのかぎを、開ひらいたてんじょうへ投なげ上あげました。

なん度どもしくじったあとで、やっとそのかぎが、てんじょうのあなのふちにひっかかったのです。

しょうねんたんていだんのなわばしごは、一いち本ほんのきぬひもです。それに三十さんじゅうセンチごとに大おおきなむすび玉たまがついていて、そこへ足あしのゆびをかけてのぼるのです。

「じゃあ、ぼくがさきにのぼるから、みんな、あとから来くるんだよ。」

小林こばやしくんはそういって、きぬひものなわばしごをぐんぐんのぼっていくのでした。

そのあとから、みんなのぼりました。ユウ子こちゃんは女おんなの子こですから、井上いのうえくんたちが上うえから手てをのばして、引ひき上あげてあげました。

あなの外そとへ出でると、そこは、草くさぼうぼうの原はらっぱでした。さいしょにのぼった小林こばやしくんが、むこうへ走はしっていくすがたが小ちいさく見みえます。いったい、どこへ行いこうとするのでしょう。

空そらを見上みあげると、せいどうのまじんは、ふうせんのように、高たかく高たかくとんでいきます。

「わあ、よくとぶねえ。もう、あんなに小ちいさくなっちゃった。」

ノロちゃんがさけびました。

あとでわかったのですが、せいどうのまじんはあついビニールでできていて、中なかにかるいガスを入いれたものでした。つまり、ふうせんだったのです。

ちか室しつのゆかに小ちいさなあながあいていて、その下したに、また、小こべやがあったのです。そこにまほうはかせがかくれていて、あなからビニールのまじんをゆかの上うえにおし出だしながら、ポンプでガスをふきこんだのです。

ガスがはいるにしたがって、ビニールのまじんはふくれあがり、しまいには、おとなの三さんばいもあるきょじんになってしまったのでした。

せいどうのまじんがものをいったのは、ゆかのあなの下したから、まほうはかせが、声こえをかえてしゃべっていたのです。

まじんが口くちを開ひらいたのは、あごに細ほそい糸いとがついていて、それを下したからひっぱると口くちがあき、糸いとをはなすと、口くちがしまるようになっていたのです。赤あかいカブトムシは、したにくくりつけてあったのでしょう。

まじんが出でる前まえにあらわれた、たまごのおばけみたいなものも、やっぱりビニールでできていて、一いち度どガスを入いれてふくらまし、みんながにげ出だしている間あいだに、きゅうにそのガスをぬいたので、ビニールはぺちゃんこになり、ゆかのあなの下したへかくれてしまったのです。

ちか室しつが暗くらいので、小林こばやしくんたちは、その小ちいさなあなのしかけがよく見みえなかったのでした。

空そらのせいどうのまじんは、だんだんすがたを小ちいさくしながら、東ひがしの方ほうへとんでいきます。東ひがしの方ほうへ風かぜがふいているのでしょう。まじんは、赤あかいカブトムシを口くちに入いれたまま、その風かぜに送おくられて、どことも知しれずとびさっていきます。

「あっ、もう、見みえなくなってしまった。」

木村きむらくんがさけびました。

そのとき、原はらっぱのむこうから、小林こばやしくんがかけもどってくるのが見みえました。

「小林こばやしさあん、どこへ行いってたの。あいつは、赤あかいカブトムシを口くちに入いれたまま空そらへのぼって、もう、見みえなくなってしまったよ。」

井上いのうえくんがよびかけますと、みんなのそばへかけよってきた小林こばやしくんが、いきをはずませて答こたえました。

「明智あけち先生せんせいに、でんわをかけたんだよ。

明智あけち先生せんせいに、せいどうのまじんのことを知しらせたらね、先生せんせいは、すぐに新聞しんぶん社しゃへでんわしてから、自動じどう車しゃで、あるところへとんでいってくださったんだよ。そして、いまにむこうの空そらから、みかたがとんでくるんだよ。」

小林こばやしくんが、東京とうきょうの町まちの方ほうの空そらをゆびさしました。いったい、空そらからなにがやって来くるのでしょうか。

三十さんじゅう分ふんあまりも待まったでしょうか。もう夕ゆうぐれ近ちかいむこうの空そらに、ぽつんと、黒くろいてんのようなものがあらわれました。

「あっ、来きた、来きた。あれだよ。」

小林こばやしくんがうれしそうにいいました。

てんのようなものは、だんだん大おおきくなって、こちらへ近ちかづいてきます。それは、一いち台だいのヘリコプターでした。みなさん、しょうねんたんていだんのみかたというのは、このヘリコプターだったのです。

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