← Library‹ 赤いカブトムシ 3

小林こばやしくんと、だんいんの木村きむらくんが、おばけやしきのせいようかんのちかしつで、にんげんほどもある、大おおきなまっかなカブトムシに出であいました。

ふたりは、ちかしつのすみで、そのおそろしいかいぶつを見みつめていました。かいぶつをてらしている二ふたつのかいちゅうでんとうのわが、ぶるぶるふるえています。

キーッ、キーッと、なんともいえないするどい音おとがしました。大おおきなカブトムシのなき声ごえです。そのたびに、あのとんがった口くちが、ぱくぱくひらくのです。

大おおきなカブトムシは、長ながい六ろく本ほんの足あしを、きみわるく、がくん、がくんとうごかしながら、ちかしつの中なかをぐるぐると歩あるきまわりました。

しばらく歩あるきまわったあとで、いよいよこちらに近ちかづいてきました。カブトムシのせなかは、まっかにてらてらと光ひかっています。ときどき、大おおきなはねをひらいて、ぶるんとはばたきのようなことをします。そのたびにおそろしい風かぜがおこるのです。もう、二にメートルほどに近ちかづいてきました。とび出だした大おおきな目めが、ぎょろりと、ふたりをにらんでいます。

いまにもとびかかってくるかと、ふたりは思おもわずみがまえました。カブトムシは、あと足あしをまげ、中なかの足あしとおしりでちょうしをとって、ぐうっとたち上あがり、まえ足あしをもがもがやっています。きみわるいおなかが、すぐ目めのまえに見みえました。あのまえ足あしでつかみかかってくるにちがいないと、いよいよみをかたくしていますと……。

ああ、そのとき、じつにおどろくべきことがおこりました。カブトムシのおなかの中なかに、ぽかんと、四よんかくいあながあいたのです。四よんかくいふたのようなものが、下したの方ほうへひらいて、そのふたが、すべりだいのように、ゆかにとどいたのです。すると、おなかの中なかから、なにかもごもごと、うごめき出だしてきたではありませんか。

おなかの四よんかくいあなからはい出だしてきたのは、長ながさ五十ごじゅうセンチぐらいの、まっかなカブトムシでした。大おおカブトムシのはらから、中なかカブトムシが出でてきたのです。まさか、子こどもを生うんだわけではないでしょう。大おおカブトムシは、プラスチックかなにかでできている作つくりものかもしれません。そのはらから出でてきた中なかカブトムシも、五十ごじゅうセンチもあるのですから、きっと作つくりものなのでしょう。

中なかカブトムシは、ゆかにたれたふたのすべりだいをはいおりて、そのへんをぐるぐると歩あるきまわりました。

大おおカブトムシのほうは、そのまま、ごろんとあおむけにひっくりかえって、まるでしがいのようにじっとしています。

大おおきなセミのぬけがらみたいです。

中なかカブトムシは、ちかしつをぐるぐるまわったあとで、ふたりのまえへ来くると、ぐうっとたち上あがりました。大おおカブトムシとおなじことをするのです。また、おなかに、ぽかんとあながあきました。そして、そこから、こんどは十じゅう五ごセンチぐらいの、かわいいカブトムシがはい出だしてきました。

かわいいといっても、十じゅう五ごセンチですから、ほんとうのカブトムシのなんばいもある、からだじゅうまっかなおばけカブトムシです。中なかカブトムシのほうは、また、セミのぬけがらのように、ごろんところがっています。

十じゅう五ごセンチの小こカブトムシは、ちょこちょことそのへんをはいまわっていましたが、やがて、ふたりのまえに来くると、またしてもあと足あしでひょいとたち上あがりました。

そして、おなじことをくりかえしたのです。十じゅう五ごセンチのカブトムシのおなかに、四よんセンチほどの四よんかくいあながあいて、そこから、こんどは、ほんものとおなじくらいの大おおきさのまっかなカブトムシが、ゆかの上うえにすべり出だしました。

ところが、この小ちいさいカブトムシは、十じゅう五ごセンチのカブトムシがぬけがらになってころがってしまっても、すこしもうごかないのです。

ゆかにおちたまま、じっとしています。これは、しんでいるのでしょうか。

それにしても、なんてかわいらしく、うつくしいカブトムシなのでしょう。いままでの大おおカブトムシとちがって、これは、まっかな色いろがルビーのようで、からだの中なかまですきとおっています。かわいらしい二ふたつの目めは、まるでダイヤのようにかがやいています。

「あっ。」

木村きむらくんが、びっくりするような声こえをたてました。そのとき、むこうのほらあなの中なかから、なにか黒くろいものがはい出だしてきたからです。

それは、あなから出でると、すっくとたち上あがりました。にんげんです。黒くろいマントをきた、せいようあくまのような、おそろしい人ひとです。

「わははは……。小林こばやしくん、ひさしぶりだなあ。わしをわすれたかね。ほら、いつか『おうごんのとら』のとりっこで、ちえくらべをしたまほうはかせだよ。」

小林こばやしくんは、思おもわずまえにすすみ出でました。

「あっ、それじゃ、あのときの……。」

「わははは……。こんどもきみたちは、まんまとわしのけいりゃくにかかったね。」

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