← Library‹ 赤いカブトムシ 4

おばけやしきのちかしつにしのびこんだ小林こばやし・木村きむらくんのまえに、黒くろいマントをきた、せいようあくまのようなおそろしい人ひとがあらわれました。

「わしは、いつか、きみたちしょうねんたんていだんと、ちえくらべをしたまほうはかせだよ。じつは、もう一いちど、きみたちのちえをためすために、ここへおびきよせたのだ。

このまえは『おうごんのとら』だったが、こんどは、この赤あかいカブトムシだ。これはルビーでできている。二ふたつの目めは、ダイヤモンドだ。わしのだいじなたからものだよ。これをきみたちにわたすから、このまえのようにちえをしぼって、うまくかくしてごらん。わしは、五いつ日かのあいだにそれをさがしだして、ぬすんでみせるよ。ぬすまれたら、このちえくらべは、きみたちのまけなのだ。」

それをきくと、「ああ、あのときのまほうはかせだったのか。」

と、やっとあんしんしましたが、でも、まだわからないことがあります。

「きのう、このせいようかんの外そとがわを、はしごもないのに、するするとのぼっていったのはおじさんだったの。それから、まどからのぞいていた女おんなの子こは、どうしたのです。おじさんがいじめていたのでしょう。」

「うふふふ……。あれは、きみたちを、ここへおびきよせる手てなのだよ。木村きむらくんのいもうとのミドリちゃんたちが見みているのを知しっていて、ふしぎなことをやってみせたのだ。あのときは、このうちのやねから、ほそい、じょうぶな糸いとのなわばしごがさげてあって、それをつたってのぼったのさ。夕ゆうがただから、とおくからは、その糸いとが見みえなかったのだよ。

あのときの女おんなの子こは、にんぎょうだよ。ほら、これをごらん。」

まほうはかせは、マントの下したにかくしていた、大おおきなにんぎょうを出だしてみせました。

「でも、きのうの女おんなの子こは、かなしそうなさけび声ごえをたてていたというじゃありませんか。」

小林こばやしくんがききかえすと、はかせはにやにやわらって、よこをむきました。

「きゃあ。たすけてえ。」

女おんなの子このおそろしいさけび声ごえがきこえました。ふたりはびっくりして、にんぎょうのかおを見みましたが、べつに、口くちがうごいているわけでもありません。「ははは……。ふくわじゅつだよ。わしが、口くちをうごかさないで、女おんなの子この声こえをまねたのだ。きのうのさけび声ごえは、これだったのだよ。」

このたねあかしをきいて、ふたりは、すっかりあんしんしました。そして、まほうはかせからルビーのカブトムシをうけとると、おばけやしきを出でて、小林こばやしくんのうちにかえり、おとうさんやおかあさんやミドリちゃんに、そのことを話はなしました。それから、ふたりで、明智あけちたんていじむしょへいそぎました。そして、明智あけち先生せんせいにも、まほうはかせのことをほうこくするのでした。

それからしばらくすると、小林こばやしくんがでんわでよびよせた、十じゅう人にんのしょうねんたんていだんいんが、明智あけちたんていじむしょへあつまってきましたが、その中なかにひとりだけ、女おんなの子こがまじっていました。中学ちゅうがく一いち年ねんの宮田みやたユウ子こちゃんという、ついこのごろなかま入いりをした、たったひとりのしょうじょだんいんです。年ねんのわりにからだが大おおきく、いかにもかわいい女おんなの子こでした。

「あたし、いいこと思おもいついたわ。そのカブトムシ、あたしのうちへかくすといいわ。」

みんなでそうだんをしているうちに、ユウ子こちゃんが、そんなことをいいだしました。そして、小林こばやしだんちょうの耳みみに口くちをよせて、なにか、ひそひそとささやくのでした。

つぎつぎとささやきかわして、ユウ子こちゃんの考かんがえがわかると、みんなは手てをたたいて、「それがいい、それがいい。」とさんせいしました。

ユウ子こちゃんは、ルビーのカブトムシをポケットに入いれ、その上うえを手てでしっかりおさえて、しょうねんたちにおくられてうちへかえりました。ユウ子こちゃんのうちは、せっこうのおきものを作つくるのがしょうばいで、うらに、小ちいさなこうばがあるのです。

ユウ子こちゃんは、そのこうばの中なかへはいっていきました。こうばには、しょうねんのくびや、ビーナス(めがみ)や、花はなかごをさげた女おんなの子こなどのせっこうのおきものが、たくさんならんでいます。

すっかりできあがったものもあり、まだできあがらないで、これからつぎあわせるのもあります。ユウ子こちゃんは、このせっこうの中なかへ、カブトムシをかくそうというのでしょうか。

そんなことで、うまくまほうはかせの目めをくらますことができるのでしょうか。なにか、もっとふかい考かんがえがあるのかもしれません。

ユウ子こちゃんが、せっこうのおきもののまん中なかにしゃがんでいますと、ガラスまどの外そとに、おそろしいかおがあらわれました。かおじゅうひげにうずまったきたない男おとこが、そっと、中なかをのぞいているのです。

このひげの男おとこは、いったいなにものなのでしょう。そして、しょうねんたちが手てをたたいてよろこんだユウ子こちゃんのちえというのは、どんなことだったのでしょう。

やがて、じつにきみょうなことがおこるのです。この、かおじゅうひげにうずまった、えたいの知しれない男おとこが、とほうもないことをやりはじめるのです。

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