← Library‹ 赤いカブトムシ 6

ユウ子こちゃんは、まほうはかせにうまくだまされて、赤あかいカブトムシのかくしばしょを見みつけられてしまいました。

そこは、さびしい原はらっぱですし、あい手てはおとなのまほうはかせ。こちらは、小ちいさい子こどもですから、どうすることもできません。とうとう、ルビーのカブトムシを、とりあげられてしまいました。

「さあ、こんどは、きみたちがさがす番ばんだよ。わしが、このカブトムシを、ふしぎなばしょへかくすからね。うまく見みつけ出だしてごらん。

は、は、は、は……。かわいそうに、なきべそをかいているね。よしよし、それじゃ、かくしばしょのひみつを、きっと、きみにおしえてあげるよ。まっているがいい。」

まほうはかせは、そういって、どこかへたちさってしまいました。

それから三み日かめの、おひるすぎのことです。ユウ子こちゃんが、うちのにわであそんでいますと、赤あかいゴムふうせんが、空そらからふわふわとおちてきました。

どこかの子こどもが、ふうせんの糸いとをはなして、空そらへとび上あがったのが、力ちからが弱よわくなっておちてきたのでしょう。

ユウ子こちゃんがそう思おもって、赤あかいふうせんをじっと見みていますと、やがてそれは、すぐ目めの前まえのじめんにおちました。

ふうせんには糸いとがついていて、その糸いとのはしに、白しろいものがくくりつけてあります。ユウ子こちゃんは、なんだろうと思おもって、それをひろってしらべてみました。

それは、紙かみをこまかくおりたたんだものでした。ていねいにのばしてみると、その紙かみには、こんなへんなことが書かいてあります。

五ご月がつ二十にじゅう五ご日にち午後ごご三さん時じ二十にじゅう分ふん、一いち本ほんスギのてっぺんからはいれ。おそろしい番人ばんにんに注意ちゅういせよ。

まほうはかせ

「あらっ、まほうはかせからの手紙てがみだわ。」

ユウ子こちゃんは、むねがどきどきしてきました。

まほうはかせは、このあいだのやくそくをまもって、ユウ子こちゃんに、カブトムシのかくしばしょをおしえてくれたのかもしれません。

ユウ子こちゃんは、すぐにその紙かみをもって、電車でんしゃに乗のって麹町こうじまちの明智あけちたんていじむしょをたずね、小林こばやししょうねんにそうだんしました。

「五ご月がつ二十にじゅう五ご日にちといえば、あさってだね。あさって、一いち本ほんスギのところへ行いけばいいんだね。一いち本ほんスギって、なんだか聞きいたことがあるよ。あっ、そうだ。木村きむら敏夫としおくんの家いえのそばの、まほうはかせのばけものやしきのむこうに、たしか、一いち本ほんスギっていうのがあった。木村きむらくんに、でんわで聞きいてみよう。」

でんわをかけますと、やっぱりそこに、一いち本ほんスギという、高たかいスギの木きがあることがわかりました。

そして、五ご月がつ二十にじゅう五ご日にち午後ごご三さん時じに、小林こばやしくんたち五ご人にんのだんいんが、一いち本ほんスギのある原はらっぱへやって来きました。

五ご人にんというのは、小林こばやしだんちょうとユウ子こちゃんと、木村きむら敏夫としおくんと、それから、だんいんの中なかでいちばん力ちからの強つよい井上一郎いのうえいちろうくんと、野呂一平のろいっぺいくんでした。一平いっぺいくんは、ノロちゃんというあだ名なで、おくびょうものだけれども、すばしこくて、よく気きのつく子こでした。

「一いち本ほんスギのてっぺんからはいれって、どういういみだろう。」

小林こばやしくんがくびをかしげていますと、ノロちゃんが、とんきょうな声こえで、

「きっと、てっぺんにあながあいているんだよ。そこからはいるんだよ。ぼく、のぼってみようか。」

といって、こしにまきつけていた長ながいなわをほどき始はじめました。

ノロちゃんは、木きのぼりのめいじんで、きょうは、スギの木きにのぼらなければならないだろうと思おもって、そのよういをしてきたのです。

ノロちゃんは、なげなわもじょうずでした。その長ながいなわを、くるくるとまわして、ぱっとスギの木きの高たかいえだになげかけました。そして、一方いっぽうのはしを、自分じぶんのからだにしばりつけ、一方いっぽうのはしを、みんなにひっぱってもらうのです。

つなひきみたいに、みんながなわをひっぱると、ノロちゃんはそれを力ちからにして、ふといスギのみきを、するするとのぼっていきました。

そして、下したのえだまでのぼりつけば、あとは、えだからえだへとつたっていけばいいのです。

ノロちゃんは、とうとう、スギの木きのてっぺんまでたどりつきました。

そして、しばらくそのへんをさがしていましたが、

「なんにもないよう。あななんて、どこにもあいていないよう。」

とさけぶ声こえが、はるかにきこえました。これは、どうしたわけでしょう。

「てっぺんからはいれ。」といったって、あながなければ、はいれないではありませんか。

ノロちゃんは、五ご分ふんほども木きのてっぺんで、じっとしていましたが、やがて、なにを思おもったのか、とんきょうな声こえで、

「わかったよう。あれだよう、あれをごらん。」

とさけんで、原はらっぱの一方いっぽうをゆびさしてみせるのでした。そこには、たいようの光ひかりをうけて、一いち本ほんスギのかげが、長々ながながとよこたわっていました。

みなさん、ノロちゃんは、いったいなにに気きづいたのでしょうか。

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