← Library‹ 大金塊 賊の置き手紙

上目黒かみめぐろにつきますと、一同いちどうは賊ぞくのすみかの百ひゃくメートルほどてまえで自動じどう車しゃをおり、くらい町まちを、はなればなれになって、れいの洋館ようかんへと近ちかづいていきました。

あらかじめ、自動じどう車しゃの中なかでうちあわせをして、中村なかむら捜査そうさ係かかり長ちょうと明智あけち探偵たんていとは表ひょう玄関げんかんから、小林こばやし少年しょうねんは五ご名めいの刑事けいじの案内あんないをして、地下ちか室しつから賊ぞくのすみかにふみこむことになり、のこりの二に名めいの刑事けいじは、洋館ようかんの表門おもてもんと裏門うらもんに見みはり番ばんをつとめる手てはずになっていました。

小林こばやし君くんは刑事けいじたちのさきに立たって、用心ようじんしながら、れいの階段かいだんから地下ちか室しつへおりていきましたが、入いり口ぐちの大戸おおどはあけっぱなしになっていて、どこへいったのか、番人ばんにんの姿すがたも見みえません。

「へんだな。」と思おもいながら、だんだん奥おくへはいっていき、五ご人にんの部下ぶかの寝室しんしつの前まえまでたどりつきました。すると、その部屋へやのドアもあけっぱなしになっていて、ベッドはみなからっぽなのです。なんだか引ひっ越こしでもしたあとのように、がらんとした感かんじです。

「だれもいないようですね。」

刑事けいじのひとりが、小林こばやし君くんをせめるようにささやきました。

「ええ、逃にげてしまったのかもしれません。でも、ともかく首領しゅりょうの部屋へやまでいってみましょう。首領しゅりょうは外出がいしゅつしていたのだから、ひょっとしたら、まだ帰かえっていないかもしれません。そうすれば、待まちかまえていて、とらえることができるのですから。」

小林こばやし君くんは、刑事けいじたちをなだめるようにささやきかえして、いよいよれいの秘密ひみつの通路つうろのある部屋へやへはいっていきました。

まっくらなぬけ穴あなの鉄てつごうしを、小林こばやし君くんを先頭せんとうに、五ご人にんの刑事けいじがそろそろよじのぼって、やがて、れいのマンホールのような穴あなから、地上ちじょうの建物たてものにぬけだしました。

いよいよ首領しゅりょうの寝室しんしつです。さかいの厚あついカーテンを細目さいもくにあけて、そっとのぞいて見みますと、アッ、いる! いる! あの美うつくしい女じょ首領しゅりょうは、なにも知しらないで、ベッドの上うえにねむっているではありませんか。

すると、ちょうどそのとき、むこうがわのドアが静しずかにあいて、だれかが首領しゅりょうの寝室しんしつへしのびこんでくるのが見みえました。

「おやっ!」と思おもって見みつめていますと、ドアがすっかりあいて、そこにあらわれたのは、ほかでもない、明智あけち探偵たんていと中村なかむら係かかり長ちょうの姿すがたでした。

ふたりは部屋へやにはいると、すぐベッドの女おんなの人ひとを見みつけて、ハッとしたように立たちどまりましたが、とっさに「これが女じょ首領しゅりょうだな。」とさとったようすで、おたがいに目めであいずをして、つかつかとベッドのほうへ進すすみよりました。

それとみた小林こばやし君くんは、もうかくれているときでないと思おもいましたので、やにわにカーテンを開ひらいて、部屋へやの中なかにとびこんでいきました。

つまり、むこうの入いり口ぐちからはいった中村なかむら係かかり長ちょうと明智あけち探偵たんてい、こちらのカーテンからとびだしていった小林こばやし君くんと五ご人にんの刑事けいじとが、両方りょうほうからベッドに近ちかづいていったのです。

さすがの女賊にょぞくも、もう運うんのつきです。両方りょうほうの出口でぐちをふさがれてしまったうえに、こちらは総勢そうぜい八はち人にん、相手あいてはかよわい女おんなひとりなのですから、どうしたってのがれることはできません。

係長かかりちょうが目めくばせしますと、ひとりの刑事けいじが、いきおいこんでベッドにつき進すすんでいきました。女おんなはまだ身動みうごきもしません。起おきているのかねむっているのか、目めをふさいだままです。

刑事けいじはいきなり女賊にょぞくにくみついていきました。そして、ねまき姿すがたの女おんなをだきあげたかと思おもうと、

「おや。」

といって、いきなりそれを床ゆかの上うえへほうりだしてしまいました。

女賊にょぞくはカタンというみょうな音おとをたてて、そこに横よこたわったまま、まるで死人しにんのように身動みうごきもしません。

「人形にんぎょうです。これはろう人形にんぎょうです。」

人々ひとびとは刑事けいじの声こえに、おどろいて、女おんなの形かたちをしたものに近ちかづいて、その顔かおをのぞきこみました。

それは生いきた人間にんげんではなくて、女じょ首領しゅりょうのねまきを着きせられたろう人形にんぎょうでした。そのさいくがあまりよくできているので、だれも人形にんぎょうとは気きづかなかったのです。

やっぱり、賊ぞくは小林こばやし君くんの手紙てがみによって、何なんもかもさとってしまったのです。そして、明智あけち探偵たんていがここへくることを察さっして、こんな人形にんぎょうを身みがわりに寝ねかせておき、名めい探偵たんていをアッといわせるつもりだったのです。なんというすばやい、悪わるがしこいやつでしょう。

「おや、人形にんぎょうが、なんだか紙かみきれをにぎっていますよ。」

刑事けいじが人形にんぎょうの手てにはさんであった、一いち枚まいの紙かみを取とって、明智あけち探偵たんていに手渡てわたしました。それは女じょ首領しゅりょうから明智あけちにあてた手紙てがみだったのです。小林こばやし君くんがしたように、女賊にょぞくもまけないで、置おき手紙てがみをのこしていったのです。

それは、つぎのようなうすきみの悪わるい手紙てがみでした。

明智あけちさん

こんどはわたしのまけです。あなたはいい少年しょうねん助手じょしゅをお持もちですね。わたしは一時いちじこの家いえをすてて立たちのきますが、けっして、宮瀬みやせ家かの金塊きんかいをあきらめるわけではありません。かならず手てに入いれてお目めにかけます。わたしには最後さいごの手段しゅだんがのこっているのです。それがどんな手段しゅだんだか、ひとつ、あなたの知恵ちえであててごらんなさいませんか。

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