← Library‹ 超人ニコラ 日本中の宝石

それからしばらくすると、玉村たまむらさんと、あき子こ夫人ふじんと、光子みつこさんと、銀ぎん一いち君くんの四よん人にんは、玉村たまむらさんの書斎しょさいにあつまっていました。

その部屋へやの一方いっぽうの壁かべに、大おおきな金庫きんこがはめこんであります。にせの玉村たまむらさんは、ダイヤルの暗号あんごうを、ちゃんと知しっていて、それをまわして、金庫きんこをひらきました。

金庫きんこの中なかには、たくさんのひきだしがついていて、それに宝石ほうせきがいっぱいはいっているのです。

銀座ぎんざの店みせにおいてあるのは、ありふれた宝石ほうせきばかりで、ほんとうにたいせつな宝石ほうせきは、みんなこの金庫きんこにしまってあるのです。店みせにある宝石ほうせきでも、ひとつ百ひゃく万まん円えん以上いじょうのものは、まい日にちかばんにいれてもちかえり、この金庫きんこにしまっておくことになっていました。

「このひきだしには、何百なんびゃくという宝石ほうせきがはいっている。十じゅう億おく円えんをこすわしの財産ざいさんだ。どこへもっていこうと、わしの自由じゆうな財産ざいさんだ。わかったかね。

この宝石ほうせきのために、われわれは、こうしてはたらいているのだ。いや、ここにある宝石ほうせきだけではない。宝石ほうせき王おう玉村たまむら銀之助ぎんのすけの信用しんようを利用りようして、日本にっぽん全国ぜんこくのめぼしい宝石ほうせきを、すっかりあつめてしまおうというのが、ニコラ博士はかせの計画けいかくだ。」

「どうして、あつめるのでしょうか。」

にせのあき子こ夫人ふじんが、ききかえしました。

「それには、こういう方法ほうほうがある。まず、わしが主催しゅさい者しゃになって、全国ぜんこくの宝石ほうせき商しょうや、有名ゆうめいな宝石ほうせきをもっているお金持かねもちによびかけて、宝石ほうせき展覧てんらん会かいをひらくのだ。そして、日本にっぽんのめぼしい宝石ほうせきを、一いちヵ所かしょにあつめてしまうのだ。

展覧てんらん会かいをひらいているあいだに、出品しゅっぴんされたぜんぶの宝石ほうせきのにせものをつくるのだ。人間にんげんのにせものさえこしらえるニコラ博士はかせのことだ、宝石ほうせきのにせものぐらい、朝あさめし前まえだよ。そのにせものと、ほんものと、すりかえてしまう。わしは展覧てんらん会かいの主催しゅさい者しゃだから、すりかえるのは、わけもないことだからね。」

「ふーん、うまい考かんがえですね。そうして展覧てんらん会かいの宝石ほうせきをすりかえたあとは、わたしたちは、この世よから消きえうせてしまうのでしょうね。」

「そうだよ。そこで、われわれにせものの役目やくめは、おわるのだ。」

にせの玉村たまむらさんは、金庫きんこのとびらをしめると、ベルをおして、女中じょちゅうさんをよび、ばんごはんの用意よういをするように、いいつけました。玉村たまむら家かにはコックのおばさんがいて、毎日まいにちおいしいごちそうをつくっているのです。

しばらくすると、四よん人にんは食堂しょくどうのテーブルにむかって、食事しょくじをしていました。おいしい洋食ようしょくのおさらが、つぎつぎとはこばれます。

玉村たまむら家かの書生しょせいさんも、女中じょちゅうさんも、コックのおばさんも、玉村たまむらさんたち四よん人にんが、ぜんぶにせものとは、すこしも気きがつきません。いつものご主人しゅじんたちと信しんじきって、いいつけに、そむかないようにしていました。

「もうこれで、すっかり安心あんしんですね。そのせいか、こんやのごちそうは、たいへん、おいしゅうございますわ。」

あき子こ夫人ふじんが、フォークで肉にくを口くちにはこびながら、たのしそうにいいました。

「うん、そうだね。わしも、このブドウ酒しゅが、いつもよりもうまいようだ。それにしても宝石ほうせき展覧てんらん会かいを、はやくひらきたいものだね。」

「ぼくたちも、その展覧てんらん会かいが、はやく見みたいよ。ねえ、ねえさん。」

「ええ、日本にっぽん中ちゅうの有名ゆうめいな宝石ほうせきが、ぜんぶあつまったら、どんなにきれいでしょうね。」

そのとき、女中じょちゅうさんがはいってきて、明智あけち探偵たんていの助手じょしゅの小林こばやし少年しょうねんが、たずねてきたことを知しらせました。

「ああ、それはちょうどいい。ここにおとおししなさい。」

小林こばやし少年しょうねんのにこにこ顔かおがあらわれ、テーブルにすわりますと、そこに新あたらしい料理りょうりのさらがはこばれ、小林こばやし君くんも食事しょくじのなかまにくわわりました。

「玉村たまむらさん、銀ぎん一いち君くんの友ともだちの松井まつい君くんが、へんなことをいってきたので、ぼくも一いち度どは光子みつこさんや銀ぎん一いち君くんをうたがいましたが、みんな松井まつい君くんのひとりがてんだとわかりました。同おなじ顔かおの人間にんげんが、この世よにふたりいるなんて考かんがえられないことですからね。」

「そうですよ、小林こばやしさん。そんなばかなこと、あるはずがないやね。おかげで、わしもすっかり安心あんしんしましたよ。」

玉村たまむらさんはそういって、さっきの宝石ほうせき展覧てんらん会かいの話はなしをしました。

「そりゃすばらしいですね。日本にっぽん中ちゅうの名なだかい宝石ほうせきを、ぜんぶあつめる展覧てんらん会かいなんて、これまで一いち度どもなかったでしょう。ぼくも見みにいきますよ。どんなに美うつくしいことでしょうね。」

もちろん、この小林こばやし少年しょうねんもにせものです。五ご人にんのにせものが、同おなじテーブルをかこんで、さもほんものらしく、たのしげに語かたりあっているのです。

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