お話かわって、こちらはほんものの明智探偵です。小林君がニコラ博士にとらえられてから一週間ほどのち、明智探偵は北海道の事件をしゅびよく解決して、その日の午後、羽田空港につきました。
電報がうってあったので、小林君が自動車でむかえにきていました。そして、小林君と、もうひとり、三十歳ぐらいの見知らぬ男が、探偵のそばへよってきました。
「先生、おかえりなさい。事件がうまくかたづいたそうで、おめでとうございます。」
小林君があいさつをしますと、明智もニコニコして、
「うん、ありがとう。……で、その人は?」
と、見知らぬ男を目でさししめして、たずねました。
「こんどたのんだ先生のボディーガードです。くわしいことは、あとでおはなしします。先生、こちらにも、ふしぎな事件がおこっているのです。先生のおかえりをまちかねていました。」
「そうだってね。おもしろい事件らしいじゃないか。」
「ええ、これまで一度も手がけたことのない、ふしぎな事件です。事務所へかえってから、ご報告します。」
そして、三人はまたせてあった自動車にのりこみました。小林君が右がわに、見知らぬ男が左がわに、明智探偵を中にはさんで、こしかけたのです。
運転手も見かけたことのない男です。明智はちょっと、へんに思いましたが、車は事務所専用の「アケチ一号」ですし、小林君がついているので、べつに、ふかくもうたがいませんでした。
車は京浜国道を三十分もはしったかとおもうと、さびしい横町へまがりました。
「道がちがうじゃないか。」
明智探偵が、そういって、思わず腰をうかそうとしました。ハッと危険をかんじたからです。でも、小林君がいるのに、こんなみょうなことがおこるのはなぜだろうと、ふしぎに思いました。
ところが、明智が腰をうかしたときには、右手は小林君に、左手は見知らぬ男に、かたくにぎられて、うごきがとれなくなっていました。
「ぼくをどうしようというのだ。小林君、きみまでが……。」
とさけんで、小林少年の顔をにらみつけますと、おどろいたことには、その小林君が、ふてぶてしくわらいながら、こんなことをいうではありませんか。
「ウフフフフ、よくにているだろう。だが、おれは小林じゃないのさ。小林とそっくりの別の人間なのさ。ほんとうのことをいうとね、おれたちはみんな、超人ニコラ博士の手下なのさ。おっと、明智先生が、いくらつよくってもだめだよ。こちらには、これがあるんだからね。」
と、いったかと思うと、小林君によくにた少年と、見知らぬ男とが、左右からピストルをつきつけ、運転手も車をとめて、うしろをふりむくと、右手をグッとこちらに出して、やっぱりピストルを、さしむけるのでした。
こうして明智探偵は、目かくしをされ、さるぐつわをはめられ、両手をうしろにしばられて、もう、身動きもできなくなってしまいました。
それから、また四―五十分もはしって、車がついたのはニコラ博士の怪洋館でした。
明智探偵は三人につれられて、地下室から、第二の秘密室へ、そして鉄ごうしの牢屋の中へ、ほうりこまれてしまいました。